その他, クロスカントリー, バイアスロン — 2014/3/15 土曜日 at 21:52:09

久保恒造、最後のバイアスロン強国ロシアに挑んだパラリンピック‏

by

最後の力を振り絞ってゴールに向かう久保。「力を出し切り、メダルを獲った気持ち」と喜んだ(撮影/吉村もと)

4年間、表彰台に上ることだけを考えて過ごしてきた。集大成と決めたパラリンピックの舞台。バイアスロンを締めくくる15キロに出場した久保恒造(日立ソリューションズ)は、最後の力を振り絞りフィニッシュラインを駆け抜けた。

競技初日、7.5キロで銅メダルを獲得。その後、頂点を目指した12.5キロではアイスバーンのコースに対応できず、スタート直後にバランスを崩したが、脅威の追い上げで6位に。そして、「最後のバイアスロン」という、この日の結果は6位だった。

バイアスロン3試合で命中率100パーセントだった射撃

「今の力を100パーセント出せた。これまでで一番手応えのあったレースかもしれません。途中、コーチに『8番手!』とか言われても、絶対そんなハズはないって思うほどでした。自身最後のレースなので、自分の力を発揮できて今はとてもすがすがしい気持ちです」

いつもどおりの滑り出し。30秒遅れでスタートした地元ロシアのロマン・ペトゥシコフが背後に迫ってくる。久保がずっと尊敬してきた選手だ。体幹をうまく使った力強い走りに、下りやコーナーで発揮されるスキーテクニック。ロシアの圧倒的な強さは、久保にとってまさに想定内だった。ワールドカップ(W杯)で表彰台争いをしてきたそのライバルたちに追い抜かれるが、前半は離され過ぎず、後半に粘り強く食らいついていく得意のパターンを描いて走った。射撃の命中率は100パーセント。「いつもなら勝てるパターン。でも、相手が強かった」。2012−13シーズンW杯年間王者として、2個目のメダルをかけて臨んだが、届かなかった。この結果を潔く認め、受け止めるしかない。それほど、ロシアが強かった。

得意の上りで力強い走りを見せた

強国ロシアの強さ、日本のこれから

国を挙げて強化を図り、年間通してバイアスロンの練習ができる環境だというロシア。連日、クロスカントリースキーとバイアスロンの表彰台を独占している。さらに「クボは強い選手だけど、私たちはチームで頑張っている」というロマンのコメントにあるように、ロシアは選手層が厚い。激しい代表争いが、選手たちが必然的に切磋琢磨しあう状況を生み出している。

久保自身は表彰台に届かなかった前回のバンクーバー大会から、「なんとかメダルを取りたい」と強化を図り、「どうしたらロシアを倒せるか」を試行錯誤してきた。ロシアという最強のライバルの存在があったから、7.5キロの銅メダルという結果に結実した。

とはいえ、久保は警鐘を鳴らす。「今回のソチで『自分もやってみたい』というロシア人選手が増えてくるはず。日本は自分の次のシットスキー男子選手がいない。日本も競技人口を増やし、体制を整えていかないと、日本は置いていかれ、さらに差が開いていく」

今後は車いすマラソンに専念

久保は今大会を最後に冬競技から退き、もともと取り組んでいた車いすマラソンに専念する。所属する日立ソリューションズは、2020年東京パラリンピック開催が決まった昨年9月に、車いす陸上競技部の設立を発表した。久保は今後、陸上競技部に所属し、夏のパラリンピック出場を目指す。

ソチ入りする前、日本代表の荒井秀樹監督(日立ソリューションズ スキー部監督)はこう話していた。

コースに一礼をし、会場を後にした

「久保の今後のことを考えて、夏場のトレーニングに車いすレーサーを取り入れたり、ソチで思う存分に戦えるように、会社として陸上部創設に動いたりしました。選手が不安なく競技できる環境をつくることで『俺がやってやるぞ』という気持ちになると思うからです」

バイアスロンの最後のレースをゴールした後、久保はコースに向かって一礼した。
「ありがとうございます、という感謝の気持ちでした」

 勝負の厳しさをあらためて知った、というパラリンピック。「ソチは、競技人生の通過点。メダルを取れたから、次の目標に進むことができる」。その大きな経験と収穫は久保の次の競技人生に必ずや生きるだろう。

(取材・文/瀬長あすか、撮影/吉村もと)