その他, ソチパラリンピック — 2014/3/15 土曜日 at 18:21:52

ソチから学ぶ“観客のスポーツマンシップ” Road to TOKYO 2020

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クロスカントリースキー&バイアスロン会場でロシアの国旗を持って応援する人々。熱い応援が選手たちを鼓舞する(撮影/吉村もと)

冬季の大会としては過去最多の45カ国、約550人が参加しているソチパラリンピック。大会の選手たちの活躍を発信するメディアが世界中から集まり、観戦チケットは4年前のバンクーバー大会の23万枚を大幅に超える、30万枚以上が売れている。5競技が行われている各会場はいずれも連日、満員の観客で埋まっている。

成長するパラリンピック。東京大会にも期待を寄せるスペンス氏

「ソチパラリンピックの運営は、(ここまで)非常に良いと思います。参加国、選手数、それに随伴するメディア、観戦者数と、たくさんの記録が更新されていることがそれを物語っています。私がソチ入りするまでは、素晴らしい大会だったロンドンの水準になるとは期待していませんでした。しかし、現在はその期待を上回るものとなっています」

IPC(国際パラリンピック委員会)メディア・コミュニケーション・ディレクターのクレイグ・スペンス氏は、ここまでの大会を振り返り、こう評価した。

スペンス氏が言うロンドンとは、2012年に開催されたロンドンパラリンピックのことだ。メディアによって世界に発信されたパラリンピックPRキャンペーンも功を奏し、市民の関心が非常に高まり、大いに盛り上がった。過去8回のパラリンピックを見てきた筆者も、この「史上最高」と言われる大会を現地で取材をした。どの大会も開催都市の特色が出ていて素晴らしいものだったが、観客と選手が融合するスポーツの一体感を、いつ、どこの会場に行っても味わえたのはロンドンが初めてだった。

どの会場もほぼ満席

ここソチでも、まさにロンドンのそれを思い起こすことができる。夏季と冬季で大会規模は違うが、どの会場も観客席はほぼ満席状態。地元の選手やチームには、会場がビリビリと響くほどの大声援が送られている。クロスカントリースキー&バイアスロン会場で連日表彰台を独占しているロシアチームのコーチの「ロシアの応援団が素晴らしい。選手は、苦しくても最後まで頑張る力をもらえる」というコメントからも、観客の声援が最高のパフォーマンスにつながっていることが分かる。

ソチ五輪では、ロシアの試合が終わると早々に席を立つマナーについて苦言を呈す報道もあったが、現在のところ、パラリンピックでそれを感じることはない。カーリング会場では、地元ロシアが勝利して会場を去った後も観客はそこにとどまり、隣のレーンの他国の試合を食い入るように見守っているし、アイススレッジホッケー会場では、平日の午前9時台から始まる他国同士の試合にも5,000人を超える人々が集まっている。選手もそれに応えようと、試合後に観客席に近寄り、両手を目いっぱい挙げて何度も感謝の気持ちを伝えたシーンが印象に残る。

どの試合も試合を楽しむ観客の姿が。アイススレッジホッケー会場にて

ロンドンは、テニスのウィンブルドンやサッカーのプレミアリーグなど歴史も人気もある世界的スポーツが盛んで、市民は普段から「スポーツの楽しみ方」を知っている。またイギリスは、障害者スポーツ発祥の地ということもあり、パラリンピックが成功したという背景もある。一方のロシアでは障害を持つ人の活躍の場が少ないと耳にしていたし、またサッカーやアイスホッケーなど人気競技のスポーツファンも、ホームチームのみを熱狂的に応援するイメージがあったため、市民にとってなじみが薄い障害者スポーツへの関心は想像以上に低いのではないかと思っていた。その考えが杞憂に終わった今、あらためて「スポーツが持つ力」を実感している。

ロンドン、そしてソチで感じた「観客のスポーツマンシップ」は、東京の成功に欠かせないものとなるだろう。スペンス氏も「多くの選手がフルタイムで活動するアスリートになり、健常のアスリートと同等のトレーニングを積むことができるようになった。東京が開催される6年後にはさらに競技力が向上しているでしょう。2020年の東京パラリンピックはこれまで以上の最高の大会になるのでは」と期待を寄せた。

日本でも見られる 障害者アスリートのパフォーマンス

パラリンピックが閉幕すると、報道の数も減り、一般的に障害者スポーツを目にする機会は激減する。しかし、障害者アスリートのハイレベルなパフォーマンスを見るチャンスはまだたくさんある。

例えば、激しい攻防が魅力の車椅子バスケットボールの日本選手権は東京体育館(5月17、18日)で開催される。また、アイマスクをした状態でプレーするブラインドサッカーの世界選手権B1大会は国立代々木競技場(11月)で行われ、日本代表も出場する。他にも全国各地でさまざまな大会が行われる。

まずはこうした大会に足を運び、障害者スポーツの魅力に触れてみてほしい。それを第一歩にし、障害者スポーツを身近な存在にしていくことが、東京パラリンピックの成功につながるのではないだろうか。

(取材・文/荒木美晴・瀬長あすか、撮影/吉村もと)