ウィルチェアーラグビー — 2008/12/24 水曜日 at 14:37:49

日本選手権でBLITZが優勝、大会4連覇を達成

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優勝したBLITZの島川慎一
大会MVPに選ばれたBLITZの島川慎一/写真:吉村もと

ウィルチェアーラグビーの日本最高峰の大会「日本選手権大会」が12月19日から3日間の日程で、千葉市の千葉ポートアリーナで開催された。今年で10回目を迎える記念大会。北海道から沖縄まで全国の9チームが参加した。北京パラリンピックの代表選手も地元チームに分かれて出場し、クラブ日本一をかけた熱い戦いが繰り広げられた。

ウィルチェアーラグビーは、四肢麻痺者などを対象にした室内で行う4人制の車椅子ラグビー。選手は障害のレベルによって、持ち点が0.5点から3.5点まで7クラスに分類され、コート上の4人の合計が8.0点以下と決められている。前方へのパスや車椅子同士のタックルが認められているのが特徴で、激しい攻撃と鮮やかなチームプレーは見ている者を魅了する。

本大会は、国内ランキングによってシード順位とプール分けを行い、プールゲームとクロスオーバーゲームを実施。その結果を受けて行われた順位決定戦は、いずれも接戦となり、会場は大いに沸いた。決勝では、王者・BLITZ(東京)が横濱義塾(神奈川)を43-40で下し、優勝した。

白熱! 雌雄を決する決勝戦

「ミスをしたほうが負け」――。まさに頂点を決めるにふさわしい、緊張感漂う決勝戦だった。大会3連覇中の王者・BLITZの牙城を崩すべく立ち向かうのは、前回3位の横濱義塾。

「ガシャーン!」「ズドン!」。車椅子同士が激しくぶつかり合う様子は、思わず肩をすくめてしまうほどの迫力だ。ゲームが中断しても、そのたびに集中力を高め、攻撃のテンポを上げる両チーム。「絶対に勝つ」というあくなき勝利への執念が、前面にあらわれていた。

BLITZの攻守の中心は、海外にもその名が知られる島川慎一。2枚、3枚としつこく被せてくるディフェンスを巧みにかわす抜群のチェアーワーク、相手の裏をかく頭脳的プレーで得点を重ねた。一方の横濱義塾も、一歩も引かない気迫のこもったプレーでゲームを組み立てた。攻撃力のあるハイポインター・藤嶋真悟がキーマンとなり、ローポインターとの連携プレーで着実に得点し、BLITZを追い詰めた。

後半まで一進一退の攻防戦。しかし、終盤はコートを広く使ったサイド攻撃や多彩なライン攻撃を展開したBLITZがゲームを支配。最終ピリオドで広げた3点のリードを死守し、勝利をおさめた。

試合終了のブザーが鳴ったとき、島川は持っていたボールに顔をうずめていた。審判に促されてようやく上を向いたとき、目には涙が浮かんでいた。あえてその訳を聞くと、島川はこう答えた。

「みんなで勝ち取った勝利だから……」

BLITZ集合写真
大会4連覇を果たし、笑顔で写真におさまるBLITZ/写真:吉村もと

BLITZは、2005年に島川が中心となり作ったチーム。結成直後に米国の名門チームからオファーを受け移籍を決断した際も、単身で渡米した後も、「こっちは大丈夫だから、安心してがんばってこい」と、常にチームメートとスタッフが支えてくれた。本大会のチームテーマは「Never give up!!」。勝っていても負けていても、自分と仲間を信じて最後まで気を抜かない、という意味も含まれている。「アイツがいるからBLITZは強い、と言われたくなかった。今日は全員が全力で戦って、攻撃ラインが2本になる理想の形で勝てました」。4年間という月日をかけて築いた絆でつかんだ勝利を、素直によろこんだ。

BLITZは、大会4連覇という快挙を達成。島川は大会M.V.Pに選出された。大会M.S.Pには、横濱義塾の藤嶋が選ばれた。

実力拮抗の2チームが激突、接戦の3位決定戦

三位決定戦
HEAT・永易雄(白ユニフォーム・左側)の体格を活かしたキープ力は群を抜いていた/写真:吉村もと

3位決定戦は、クロスオーバーゲームの結果を受けて、同じプールで戦ったOkinawa Hurricanes(沖縄)とHEAT(大阪)が再び激突した。前回準優勝の実力を持つOkinawa Hurricanesは、オールラウンダー・仲里進を中心とした堅実な動きで中盤までリード。しかし、時間の経過とともに硬さのとれたHEATがじわじわと追いつき、後半に逆転するなど大接戦に。終盤にポイントゲッター・三阪洋行を柱とした多彩な攻撃パターンでゲームメークしたHEATがリードを守りきり、32-30で見事3位に輝いた。

西日本を本拠地として活動するチームは、Okinawa HurricanesとHEATを含めて3チームと少なく、練習試合もままならない状況だという。そんな環境のなかで、日本選手権の上位決定戦にふさわしいハイレベルな戦いをした両チーム。熱戦の余韻が残る会場では、他チームからも大きな拍手が送られた。

試合結果は以下の通り

優勝 BLITZ(東京)

2位 横濱義塾(神奈川)

3位 HEAT(大阪)

4位 Okinawa Hurricanes(沖縄)

5位 AXE(埼玉)

6位 Genesis(埼玉)

7位 SUPER SINIC(宮城)

8位 BULLDOGS(新潟)

9位 北海道Big Dipperes(北海道)

(記事:荒木美晴)