【最終予選】宿敵ドイツを破り、日本白星発進!

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次戦以降の命運を握る重要なドイツ戦で得点を決め、喜ぶ上原(左)と熊谷=エスルスンド・アリーナ(撮影/荒木美晴)
次戦以降の命運を握る重要なドイツ戦で得点を決め、喜ぶ上原(左)と熊谷=エスルスンド・アリーナ(撮影/荒木美晴)

パラアイスホッケーの平昌パラリンピック最終予選が9日、スウェーデンのエステルスンドで開幕した。スウェーデン、ドイツ、チェコ、日本、スロバキアが参加。総当たり戦を行い、上位3チームに平昌への出場切符が与えられる。

第2試合に登場した日本はドイツと対戦。第1ピリオドからコンスタントに点を重ねた日本が6-2で勝利。貴重な勝ち点3を手にした。

■日本 6-2 ドイツ

日本は第1セットのディフェンスに、三澤英司と上原大祐を起用。フォワードは高橋和廣をセンターに、熊谷昌治と堀江航がウイングという布陣を組んだ。

ゴールネットが揺れたのは、試合開始からわずか31秒。その第1セットが、攻撃の口火を切った。ドイツのアイシングから相手陣地でフェイスオフのチャンスを得た日本は、左コーナーで上原と高橋がパックを死守。熊谷昌治がゴール前に詰めてパスに合わせると、ゴール右上に鋭いシュートを決めた。

その後、三澤がフェンス際で相手の厳しいチェックを受けて、負傷退場を余儀なくされるアクシデントが起こってしまう。だが日本は集中力をキープ。本来は第2セットの須藤悟が三澤のカバーに入り、上原とともに豊富な運動量でドイツのラフなプレーをかわし続けた。

初戦でスタメンマスクを被ったのは、ベテランGK福島(中央)
初戦でスタメンマスクを被ったのは、ベテランGK福島(中央)

先制点からの流れに乗る日本は、7分53秒に安中幹雄(FW)が追加点。第2ピリオドにはドイツのオウンゴールで3-0とし、その後は1点を返されるが、12分56秒に上原がフェイスオフから出たパックに反応し、ワンタッチで合わせてゴール。その直後には熊谷が2点目を決め、5-1とリードを広げた。

最終ピリオド4分11秒には、この日第2セットのフォワードに起用された児玉直が、成長の証となる追加点を入れる。左コーナーの混戦からつないだパスを受けると、相手ディフェンスの動きを冷静に見極め、「手と刃の間にあったわずかな隙間」を縫う技ありのスライドシュートだった。「点に絡みたいという気持ちがすごくあった。強敵のドイツとの試合で自分が勝利に貢献出来て嬉しい」と児玉。その後、GK福島忍がキープしようとしたパックを後逸して相手に得点を献上する場面もあったが、福島はそれ以外のドイツの15本のシュートをさばききった。

試合後、観客席に挨拶する日本代表。負傷退場した三澤のユニフォームを手に、明日のスウェーデン戦での勝利を誓う
試合後、観客席に挨拶する日本代表。負傷退場した三澤のユニフォームを手に、明日のスウェーデン戦での勝利を誓う

これまで、初戦を落として波に乗り切れない試合が多かった日本。ましてやドイツは常に接戦を演じてきた相手だっただけに、課題だった先制点を早いタイミングで挙げ、試合のリズムを自ら作れたことは、呪縛が解けたに近い、大きな収穫になった。

大会直前に盟友・ノルウェーから5選手を招いて合宿を行い、ヨーロッパ特有の動きの確認や試合勘を養ったことも、結果を出せた要因のひとつだ。また、熊谷が「先制しても油断しないで、3点差4点差になっても絶対に気を抜かずにやっていこう、と声をかけていた」と話したように、最後まで途切れなかった全員の集中力と一体感が勝利に導いた。

試合を振り返り、キャプテンの須藤は「次につながる戦いになった」と、ホッとした表情を見せた。そして、中北浩仁監督は「ずっと目指していたプレーができた」と評価する。10日のスウェーデン戦については、「今日の2ピリは、ちぐはぐな動きが出てしまい、相手に裏を取られたりした。スウェーデンはそういうミスに付け込んでくると思うので、しっかりと修正したい」と話した。

■チェコ 5-0 スロバキア

パックを奪い合うチェコ(赤)とスロバキア
パックを奪い合うチェコ(赤)とスロバキア

第1試合のチェコ対スロバキアは、序盤からチェコが主導権を握る展開に。第1ピリオド8分19秒にSafranek が得点すると、続けてKubes が2得点。その後も終始、チェコのペースで試合は進み、5-0でチェコが勝利した。

チェコとスロバキアは、ヨーロッパの隣国であり、ライバル同士。今大会直前に開幕したチェコリーグに両チームとも参戦し、実戦を重ねてきた。今日の試合では大差がついたが、今後もしのぎを削り、レベルアップを図っていく環境があることを考えれば、スロバキアも日本にとって怖い存在になっていくだろう。

(取材・文・撮影/荒木美晴)