【DAY2】ジュニア勢が存在感、19歳クイ・ヨンカイが男子59㎏級を制す

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ジュニアの世界新記録樹立&一般でも優勝の快挙を達成した男子59㎏級のクイ・ヨンカイ(中国)=北九州芸術劇場(撮影/荒木美晴)

「北九州2018ワールドパラパワーリフティングアジア‐オセアニアオープン選手権大会」は9日、競技2日目を迎え、男子59㎏級と65㎏級、女子50㎏級と55㎏級が行われた。

男子59㎏級

会場を盛り上げたのは、19歳のクイ・ヨンカイ(中国)。第1試技で181㎏を持ち上げ、ジュニアの世界記録を更新。さらに、184㎏、188㎏と記録を伸ばし、この階級全体でも優勝を果たした。188㎏は今季世界ランク2位に相当する大記録。今後、彼が描く成長曲線が楽しみだ。

自己ベストを更新し、拳を握る戸田

日本勢では戸田雄也(個人)が自己ベストとなる126㎏を挙げて6位。パラリンピック標準記録を突破した。札幌市在住の戸田は、北海道を襲った地震の影響で練習拠点のジムが停電で使用できず、大会前の練習ができないまま現地入り。会場でわずかな最終調整をして臨んだが、高い修正能力を発揮した。次戦は10月のアジアパラ競技大会。「130㎏を狙いたい」と抱負を語った。岡田有史(電通国際情報サービス)は113㎏を挙げて自己ベストを更新した。

男子65㎏級

男子65㎏級で今大会初めての200㎏が誕生。リオパラリンピック男子72㎏級金メダリストで、この65㎏級では昨年の世界選手権で2位に入っているリウ・レイ(中国)が第2試技で201㎏に、さらに第3試技で202㎏に成功した。今季2位に相当する好記録で優勝し、2位には201㎏をマークした同じく中国のヤン・クアンヒが入り、中国の層の厚さを見せつけた。

3本すべての試技を成功させ、会場の歓声に応える佐野

3選手がエントリーした日本勢のトップは130㎏を挙げた佐野義貴(アクテリオンファーマシューティカルズジャパン)。今年6月、古傷の右肘を痛め、2カ月間はベンチプレスの練習ができなかったという佐野。8月に入り、ようやく60㎏から練習を再開し、ここまで戻してきた。復帰途中ということもあり、重量よりも胸の止めなど「正確性」を意識して今大会に臨み、その結果、3本連続で試技を成功させることができた。「自信になった」と佐野。ここまでの経験を力に、さらなるスケールアップを誓う。

また、日本代表の最年長、城隆志(オムロン太陽)も第3試技まですべてを成功させ、128㎏をマーク。篠田雅士(パワーハウス)は果敢に自己ベスト更新に挑戦したが認められず、記録なしだった。

ジュニアで65㎏と72㎏の2階級の世界記録保持者であるガスティン・ボニー・ブニャウ(マレーシア)は、第1試技からその記録を超える170㎏を成功させる。その後も記録を塗り替え、180㎏の世界新記録を樹立した。

女子50㎏級

製薬会社に勤めるキャリアウーマンでもある中嶋。「ジョンのサイコロジカルな考え方が自分に合っている」

中嶋明子(個人)は第1試技で52㎏の自己ベストを更新。続いて55㎏に挑戦したが、挙げ切れず失敗に終わった。初めての国際大会は微妙に感覚を曇らせ、「第2試技は寝る位置を下げすぎた。第3試技は早めにリストラップを巻いてしまい、手首がしびれてしまった」と、中嶋。ミスによって余分に体力を使うことにもなったが、これも「前向きな失敗。良い経験になった」と受け止める。もともとはパラカヌーの選手。現在は、麻痺の左右差の解消のために始めたパラパワーリフティングでパラリンピックを目指す。イギリス人で世界的指導者のジョン・エイモス氏の障がいの状態を理解したうえでの明確かつ的確な指導により、試技の正確性が増し、メンタリティも強くなった。今回失敗した55㎏は、練習では難なく成功しているといい、今大会の修正を重ねて、さらに上を目指していくつもりだ。

優勝したのは、リオパラリンピックの45㎏級で金メダルを獲得しているフ―・ダンダン(中国)。108㎏に成功したあと、アジア記録となる113㎏に挑戦。惜しくも失敗したが、その力強い試技に会場から大きな拍手が送られた。

女子55㎏級

女子55㎏級を制し、インタビューに答えるクジエバ・ルーザ

リオパラリンピック金メダリストのペレス・アマリアは、今大会は61㎏級にエントリー。女王がいないなか、昨年の世界選手権でも上位に入った中国とチリ、ウズベキスタンの選手がハイレベルなパフォーマンスを繰り広げ、会場の注目を集めた。熾烈なトップ争いを制したのは、クジエバ・ルーザ(ウズベキスタン)。中国とチリの選手が第3試技を失敗するなか、クジエバは3本とも成功させ、自己ベストタイとなる113㎏をマークした。

マクドナルド山本恵理(日本財団パラリンピックサポートセンター)は、右手首の腱鞘炎の影響で、痛み止めの注射を打ちながら出場。53㎏と54㎏に挑戦したがいずれも成功と認められず、失格に終わった。「きれいな挙げができなかったことが課題だけれど、まだ整理できない」と悔しさをにじませた。

(取材・文・撮影/荒木美晴)