夏季競技, 車椅子ソフトボール — 2013/7/10 水曜日 at 23:59:15

第1回車椅子ソフトボール選手権、NORTH LAND WARRIORSが初代王者に

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国内初の車椅子ソフトボール選手権に出場した選手、ゲスト講師たち=野幌総合運動公園(撮影/吉村もと)

「第1回全日本車椅子ソフトボール選手権大会」の決勝が7日、北海道江別市の野幌総合運動公園東駐車場で行われ、NORTH LAND WARRIORS(以下、北海道)Aチームが、TOKYO LEGEND FELLOWS(以下、東京)Aチームを8-3で下し、初代チャンピオンに輝いた。

北海道に勝利を呼びこむ連携プレー

チームを優勝に導いたエースの飛島(北海道)

三塁方向に転がった打球をピッチャーの飛島大輔が捕った。車椅子で崩れた体勢から一塁方向にターンをすると時間のロスが生まれる。飛島はすかさずショートの源貴晴にトスし、源からファーストの山田憲治につないだ。2点リードの3回。試合のペースを引き寄せる見事な連携プレーだった。

「あれを一番練習したので、やってきてよかった。彼には助けられたところがありました」と飛島が言えば、「自分の役割はバックアップすることだから」と源が言う。ケガをする前の高校時代から互いを知り、受傷後もバスケットボール、そして車椅子野球のチームメートとして同じ釜の飯を食ってきた仲間。そんな彼らだから、あうんの呼吸で連動した守備ができるのかもしれない。

源(北海道)は走攻守で活躍した

初代王座をかけて争った決勝戦

試合は序盤、千脇貢のヒットで東京が先制点を挙げるも、北海道は山田のタイムリーですぐに追いつく。北海道は3回にはセンター前ヒットで出塁した1番田中和馬を、バントで進めて、4番斎藤雄大がホームラン性のツーベースで返す“理想の攻撃”を見せた。その後も切れ目のない打線で追加点を挙げ、見事な勝利を飾った。東京もキャプテン堀江航が攻守に活躍したが、北海道の堅守の前に力及ばなかった。

試合後、北海道の大西昌美監督は「野球も車椅子ソフトボールも同じで、予測することが勝敗を決める。うちの守りは、ピッチャーが投げる前から守備位置を移動できていた」とチームを称えた。大西監督は選手らに胴上げされ涙を見せたが、満足はしない。一つひとつのプレーを振り返ると「まだまだだなって感じます」と付け加え、選手たちのさらなる奮起に期待を寄せた。

アメリカで長い歴史を持つ競技

競技用車椅子に乗り、一般のソフトボールよりやや大きくて柔らかい専用球を使用して行う10人制(外野が4人)の球技。今年4月に日本の協会が発足したばかりで、競技人口は約60人だ。国内には、今大会に出場した2チームと「Silver Wings Kitakyushu」(福岡)の3チームがある。
一方、40年近い歴史を持つアメリカには、野球のメジャーリーグの傘下にあるチームが多数ある。毎年全米選手権が開催されており、障害のレベルで3クラスに分けられた選手の持ち点の合計が21点以下、頸椎損傷など上肢にも障害のある選手をひとり含まなければならないルールがある。本大会は健常者も参加できる特別ルールで行われ、北海道と東京から各2チームが出場した。

好打を見せた先頭バッター堀江(東京)

車椅子野球へのステップとしてのソフトボール

国内のスポーツでも圧倒的な競技人口を誇る野球とソフトボールを誰もがプレーできるように——。2008年、北翔大野球部の大西昌美准教授の発案により、車椅子野球の歴史が始まった。大西監督は北海高校の監督時代に春夏あわせて6回の甲子園に出場した名将。その教え子である飛島に声をかけ、飛島とそのバスケ仲間らが集まった。
そんな野球のチームも、競技人口が増えず、試合が経験できない壁にぶつかる。昨年、大西監督らが視察する予定だった車椅子ソフトボール全米選手権に、日本代表が初めて参加することに。これを機に北海道のチームは、アメリカで競技として確立している車椅子ソフトボールの練習を始めた。アメリカ留学時に競技経験がある副理事長の堀江もその普及に奔走し、日本でもソフトボールが行われるようになったのである。

飛島は言う。「バスケでもソフトでも選手がいろいろプレーできるようになればいいと思うんです」

車椅子ソフトボールは車椅子操作がしやすいアスファルトのフィールドでプレーする。その専用グラウンドは江別市にある北翔大の敷地内に整備されつつあり、大西監督は「高校野球の甲子園のような聖地をつくりたい」と力を込める。

初の全国大会開催は、競技の普及と強化を目指す大きな一歩になったはずだ。

■飛島大輔キャプテン(北海道)のコメント
「優勝できてほっとしました。それぞれが自分の役割をわかっている。いいチームになりました」

■堀江航キャプテン(東京)のコメント
「北海道は守備も打撃もスピードもある。強い相手にいい試合ができて本当によかった」

優勝したNORTH LAND WARRIORS

■第一回 車椅子ソフトボール選手権大会
優勝 NORTH LAND WARRIORS(北海道)
準優勝 TOKYO LEGEND FELLOWS(東京)

◇最高殊勲選手(MVP) 飛島 大輔(北海道)

◇ベスト10
ピッチャー 堀江 航(東京)
キャッチャー 斉藤 雄大(北海道)
ファースト 向井宗敏(東京)
セカンド 松浦 秀則(北海道)
サード Juan Ortiz(北海道)
ショート 源 貴晴(北海道)
ライト Brian Chaves(東京)
ライトセンター 千脇 貢(東京)
レフトセンター 小林 智樹(北海道)
レフト 植木 隆人(東京)

胴上げされる大西監督(北海道)

◇ブライアン特別賞
相沢 秀典(北海道)
藤田 一樹(北海道)

◇ミズノ特別賞
曳田 和樹(北海道)
城野 修太(北海道)
岩城 七汐(北海道)

◇トライアロー特別賞
齋藤 美佳(東京)

(取材・文/瀬長あすか、写真/吉村もと)