車椅子バスケットボール — 2010/8/19 木曜日 at 11:12:32

目指すのは、いつでも、だれでも。〜車椅子バスケットボール「Jキャンプ」レポート

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 「Jキャーンプ!」のかけ声でキャンプがはじまる。そこには一体感があった/撮影:吉村もと

健常者も障害のあるプレーヤーも、男性も女性も同じコートを走る――。

選手たちは力をふりしぼり、競技用車いすというギアを漕ぐ。
ガツッ、ガツッ。車いす同士が接触する音が響き、そのたびに汗が飛び散る。
世界を知る選手やコーチに学ぶことができるこの機会を逃すまいと、必死に食らいついていく。その姿は、美しさを放っていた。

2001年に初めて開催された車椅子バスケットボールの「Jキャンプ」は、今年9年目を迎えた。日本代表経験がある選手らが、主に競技歴3年以内の“若手”を対象に、そのスキルやチームワークの重要性を教示する、真夏の特訓。8月6日〜8日、茨城県立医療大学で開かれたキャンプに、障害がない16人を含む41人の選手が集まった。

「今のプレー良かった! 継続するんだよ!」「もっと声出して!」
コートサイドから身を乗り出し、声を張り上げる講師たち。その表情は真剣そのものだ。

そんな講師たちを鑑とするように選手たちから声が出る。
このキャンプはとにかく活気に溢れているのだ。

段階を踏んで進むプログラムは、3日かけて行う。最終日は、ゲーム。参加者たちは、車椅子バスケをモチーフにした漫画『リアル』を冠にした、リアルトーナメントを戦う。2日間練習した個人スキルやピック&ロールなどの戦術をひたすら試す時間だ。
わずか3日前に、全国から集まった彼らは、互いのニックネームを呼び合い、ポジションを伝え合う。
参加者は、名前を口にしやすいように背もたれに名札を貼っていた。最終日ともなると、名札はすでにはがれている者も多い。もはや名札は必要ないようである。

全プログラムが終了した後、蒸し暑い体育館の出口で、心地よい風を感じていた選手たち。彼らは、それぞれの胸に達成感を感じていたに違いない。

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キャンプ中は笑顔が絶えなかった

Jキャンプには、障害の有無にかかわらずバスケが好きな人たちが集まる。

「知らない人たちとチームワークができていき、これだけの試合ができた」と笑顔の松尾崇弥選手(健常)は、吉備国際大のチームで車椅子バスケットをする大学生。昨年キャンプに参加した大学の先輩にすすめられ、岡山から参加した。目指すは大学選手権の優勝。「チームに持ち帰るものがたくさん得られたキャンプだった」と充実感いっぱいの表情を浮かべた。

車椅子バスケットボールの名門、千葉ホークスに所属する宇埜雄太選手(持ち点1)は、2度目の参加だ。ふだんプレーしているチームは日本代表を多く擁する強豪で、練習にすべて参加できるわけではないという。この3日間、みっちり練習したことで、チェアスキルを上げたほか「ディフェンスやピック&ロールなどを習得できた」。また、チームでプレーすることを通じて「挑戦することの大切さを学んだ」と話す。

キャンプには、全米の大学車椅子バスケットボールの強豪・イリノイ大から講師が来日。
講師のひとり、アメリカ代表Steve Serio選手(北京パラリンピック・アメリカ代表)は、「キャンプ中、みんな信じられないくらい上達したよ!」と参加者たちを称える。大学生ら健常者も受け入れるのがこのキャンプの特徴だが、「健常者がこんなに多く参加しているなんて、Jキャンプは画期的。それが車椅子バスケを広めることにもつながるよね。そして、このキャンプでは、チームワークを大切にしている。実際に参加者たちにチームワークが生まれていて、とてもすばらしかった」と語った。

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コーディネーターの及川晋平(シドニーパラリンピック日本代表)に学ぶ選手たち

聞くところによると、ドイツやカナダには、健常者であっても、重い障害があっても一緒に、気軽に、車椅子バスケを楽しめる環境があるそうだ。
そんな環境は、競技人口の裾野を広げ、結果的に競技の強化にも好影響をもたらすだろう。
Jキャンプ取材で見た、活気溢れる2面コートの体育館。ここは、まるで日本ではないようだった。

(取材・文/瀬長あすか、撮影/吉村もと)