ロンドン2012, 車椅子バスケットボール — 2012/9/1 土曜日 at 8:34:59

最高峰の舞台で「楽しむ」ことを学んだ男の挑戦=車椅子バスケ・香西宏昭

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チームの中心として活躍する日本代表香西=バスケットボールアリーナ(撮影/吉村もと)

「4年前の北京では、大観衆の前であがってしまった。あのときの二の舞いになるのは絶対にイヤだと思ってたくさん経験を積んできたから」

車椅子バスケットボール男子日本代表の初戦、カナダ戦が行われたバスケットボール・アリーナは、北京に劣らず大歓声に包まれていた。苦しいパラリンピック予選を勝ち抜き、再びたどり着いた大舞台。しかし、本人が「緊張は少し、していたかもしれないけど、みんなとてもいい感じだったと思う」と言うように、日本のキーマン、香西宏昭(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)は落ち着いてプレーしていた。

カナダ戦での香西

 香西は18歳のときに渡米し、名門・イリノイ大学バスケットボールチームの門戸をたたいた。自らのスキルアップのために高いレベルでもまれ、車椅子バスケ界の名コーチ、マイク・フログリーのもとで修行を積むべきだと感じていたからだ。

パークランド・カレッジ在学中は練習生としてイリノイ大学の練習に参加。語学に苦戦しながらも、「考えるバスケ」を習得していき、21歳で正式にイリノイ大学に編入。

現在はチームのキャプテンを務め、今年3月に開催された全米大学選手権に出場し、日本人選手として初めて、シーズンを通して活躍した選手に与えられるMVPに輝いた。

しかし、パラリンピック初出場だった北京大会まで「大学でのバスケと日本代表としての活動。どちらに比重を置いていいか、わからずにいた」と言い、日本で行われる強化合宿に参加できないことも多く、実際に日本代表に招集されない経験も味わった。それでも、成長を続けたことで注目を浴びるようになり、2011年から日本代表選手として定着。いまやエース藤本怜央(プライスウォーターハウスクーパース)とともに、スピーディーな日本の攻撃バスケの中心にいる。

バスケの楽しさを教えてくれたアメリカでの成長

ロンドンパラリンピック男子車椅子バスケは12カ国が出場。6チームずつ分けられたグールプリーグを6チーム総当たりで戦い、上位各4チームが決勝に進出する。「ベスト4進出」を目標に掲げる日本の初戦の相手は、北京パラリンピック銀メダルの強豪カナダ。日本は立ち上がりこそゾーンデフェンスが機能し、香西のシュートで先制するなど、強豪相手に競り合ったが、カナダの強いプレッシャーを前に歯が立たず、68−53で敗戦を喫した。

日本チームの中で香西は、藤本の16点に次ぐ9得点を記録。だが、前半からファウルが累積し、4つのファウルをもらって動きを封じられた。

「ファウル数は誤算だった。けれど、チーム全体の雰囲気は良かったし、決められなかったシュートについてもタッチは悪くなかったので気にしていない」と香西。

 織り込み済みの敗戦に、世界に出て行くことで培ってきた自信がぶれることはない。

「カナダは格上だけど、自分たちの位置を知る上で申し分のない相手だった。僕たちの目標はあくまでもベスト4。ミーティングで話し合った課題に全員で取り組むことができた。今後の試合も今日みたいにチーム全体が楽しめれば、おのずと勝利につながるはず」

 バスケを楽しむこと。香西が米国で学んだことのひとつである。思うように言葉も通じず、「なんだかうまくいかない」とふさぎ込んだ渡米1年目。周囲の外国人選手と比較することをやめ、少し前の自分のプレーと比較し、どれだけ成長しているのかをはかるようになってから、再びバスケが楽しくなったという。

 この日、カナダの得点のうち32点を稼いだ絶対的エースのパトリック・アンダーソンは香西を「世界のベストプレーヤーの1人」と認め、「彼はコートに入るとき、いつもすごい笑顔で楽しそうなんだよ」と賞賛している。