パラサイクリング, 夏季競技, 自転車 — 2013/7/31 水曜日 at 0:12:30

パラサイクリング選手権で好記録続出!

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4km個人パーシュートで日本新記録をたたき出した大城(後)と北津留=伊豆ベロドローム/撮影:吉村もと

7月27日、28日の2日間、屋内板張りの伊豆ベロドロームで「2013パラサイクリング選手権・トラック大会」が「第83回全日本自転車競技選手権大会トラック・レース」と共催で行われた。10人の障害者アスリートが出場したパラサイクリングは、6つの日本記録、7つの大会記録をマーク。一般の自転車ファンや健常者のエリート選手らにその存在感を示した。

日本記録を6つ、大会記録を7つ更新!

なかでも圧巻だったのが、男子タンデムの大城竜之・北津留翼組だ。S級競輪選手の北津留が持ち前のパワーで引っ張り、2つの日本新記録を樹立。大城は信じられないといった表情で、「練習ができておらず、不安もあったけれど、パイロットの北津留くんに合わせればいけるという気持ちで臨むことができた。それがよかったのかもしれません」とレースを振り返った。驚くことに、大会前日に初めてタンデムに乗ったという北津留。「僕はまだ初心者。大城さんが合わせてくれたので、感謝しながら走りました」と声を弾ませ、互いに健闘を称えあった。

目標を上回るタイムをマークし、笑顔で撮影に応じる鹿沼(左)と沼部

タンデムの女子も負けてはいない。昨年クロスカントリースキーから転向した鹿沼由理恵は、3種目で日本新記録をたたき出し、順調な成長ぶりを見せつけた。初出場した昨年度のトラック大会からパイロットの変更があったものの、1日目の3km個人パーシュートで、前回の4’06″214を大きく縮める3’53″744を記録。レース後、「後半バテてしまったが、最終で粘れたことが良かった」と話した。パイロットの沼部早紀子は「月1回、3~4日ふたりでトラック練習をしてきた。その成果が出せたかなと思います」とコメント。鹿沼・沼部組は、2日目の1kmタイムトライアルでも日本記録を塗り替えた。

8月に2013UCIパラロード世界選手権(カナダ)を控え、ロードを中心に練習を組むトップ選手が多い中で、トラックに情熱を注ぐのが2007UCIパラトラック世界選手権、北京パラリンピックの金メダリスト石井雅史だ。現在の石井の照準は、イタリアの世界大会。2009年の遠征中に落車して大ケガを負ったとき、イタリアの人たちが励ましてくれたからだ。「恩返しの意味でも、最近遠ざかっている表彰台に立ちたい」と話す。

ベテランの石井も好調だ

今大会、石井の収穫は4km個人パーシュートにあった。記録は5’03″484の大会新。「今まではペースに乱れがあったけれど、今日は残り2周まで一定のペースで刻むことができた。そこを監督の林次郎さんが評価してくれたので、どんどん伸ばしていこうという気持ちになります」と表情は明るい。「5分の壁がなかなか切れないけれど、今年中になんとか4分台を出したい」と決意を表した。

健常者の全日本と初共催

パラサイクリングは、今年度から全日本自転車競技選手権(日本自転車競技連盟主催)との共催になり、6月に秋田で開催されたロード大会からエリート選手と同じ会場で競技を行うようになった。元競輪選手の石井は「同時開催はいい刺激になります。トップ選手を間近に見ることでみんなにとっても勉強になるだろうし、国際大会(※パラサイクリングは、自転車競技の国際統一機関であるUCIの傘下にカテゴライズされている)でいきなりこういう雰囲気に混ざるより、国内で慣れてから臨んだほうがいい」とその意義を語る。

日本自転車競技連盟副会長の中野浩一氏も同時開催を喜ぶひとりだ。「パラは別だということではなく、協会もできるだけ一緒にやっていこうと動いてきた。これからどんどん選手が増えて、規模が大きくなって、同時開催ができなくなる。逆に、それくらいになってくれたらうれしいねぇ」。

大会記録を2つ塗り替えた藤田の走り

「トップ選手と一緒にやることを続けていかなければ。そのためにも、パラサイクリングの選手が高いレベルの大会で走ることに慣れていかなくてはいけない」と話すのは、ロンドンパラリンピックのメダリスト藤田征樹。

普段から健常者の学生のレースに積極的に出場していると言い、この日も1kmタイムトライアル、3km個人パーシュートで大会記録を更新するなど調子を上げている。

ロンドンパラリンピックから1年。6月のワールドカップで5位入賞を果たした藤田は、「パラの翌年の大会ではあるんですが、ワールドカップのメンバーを見ると、強豪国には新しい選手が増え、レベルも上がっている」と気を引き締める。藤田をはじめとする日本のパラサイクリストたちが、リオデジャネイロの表彰台を見据えて戦っていることは想像に難くない。彼らがどんな成長の過程を見せてくれるのか、実に楽しみだ。

■選手のコメントは以下の通り

藤田 征樹(クラス:C3)
「今のシーズンはロードメインでトレーニングをしている。ロードでは調子の良さが出ていて、先月の日本パラサイクリング選手権・ロード大会でも総合優勝できた。1ヵ月後に控えるロードの世界選手権を目標にしている中で、悪くない結果だったと思います」

大城 竜之(タンデム)
「自分としてはあまり練習できていない。でも、いい成績が出せて、さらにチャレンジする気持ちが高まった。年は重ねてきたけど、まだまだやれる。ベロドロームという素晴らしい施設があるので、活用していけたら」

鹿沼 由理恵(タンデム女子)
「(3km個人パーシュートについて)今は前半抑え気味で走って、後半粘るというスタイルなので、それを徐々に前半から上げられるようにしていき、いいタイムを出したい。世界大会でもいい走りができれば、最高です」

最年少19歳の石河。石井と同じC4クラスだ

石河 毅也(クラス:C4)
「トラック大会初出場で緊張はありましたが、これを基準に今後の練習に活かそうという気持ちで臨みました。ロードバイクは4年ほど前に購入し乗っているが、トラックは始めたばかり。練習した分、速くなると思うので記録を伸ばしたい」

(取材・文/瀬長あすか、撮影/吉村もと)