柔道 — 2012/5/31 木曜日 at 23:01:43

視覚障害者柔道、男子66kg級の広瀬らがロンドンパラリンピック出場へ

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多くの関係者が見守る選考試合で、息をのむ攻防を繰り広げた男子66kg級の藤本(左)と広瀬/撮影:吉村もと

5月27日、講道館で「ロンドンパラリンピック柔道競技日本代表候補選手選考大会」が開催された。ロンドンでもメダルが期待される男子66kg級は、北京後、男子60kg級から66kg級に階級を変えた広瀬誠が、北京パラリンピック66kg級日本代表の藤本聰を破り、日本代表候補に決定。また、男子100kg超級の正木健人、女子52kg級の半谷静香らが初めてのパラリンピック出場候補選手になった。候補選手は、JPCの承認を経て7月3日に正式に日本代表になる。

注目の男子66kg級、藤本の5大会出場ならず

選考大会とあって、一試合だけの勝負。ウォーミングアップから緊張感が漂っていた。北京パラリンピック日本代表の藤本は、一年に一度ライバル同士がぶつかり合う全日本選手権の試合前には見せなかった笑顔をつくり、対する広瀬は、「一週間前からどうかなりそうだった」と本人も認める通り緊張した面持ち。両者ともにこの試合にかける思いは強かった。

過去の対戦成績は1勝1敗だ。2010年の全日本選手権で藤本に一本を取られて破れた広瀬は、それから1年半、藤本に体勢を崩されても投げられないようにディフェンス力を強化。重心を低くするために下半身のウエイトトレーニングで筋力アップに励み、さらに筋肉の協調性を高める最新の器具を使ったトレーニングも取り入れた。

一方の藤本は、北京パラリンピック決勝で破れた悔しさを糧に、母校の徳島商高の柔道部コーチをしながら、ロンドンを見据えてトレーニングを重ねた。両手首を手術するなどもがき苦しんだが、決してあきらめずに調整し選考会に出場した。

どちらが勝っても日本代表としてふさわしい。ふたりの決戦を会場中が見守った。開始1分半、広瀬の巴投げが決まって、技あり。その後、藤本も背負い投げを仕掛けるが、藤本の強みを徹底的に研究した広瀬の前にポイントを取れずに終盤戦へ。残り5秒、攻め続けた広瀬の投げ技が決まり、合わせ技一本。勝利した広瀬は涙を見せた。

試合後、広瀬は「4年に1度の大会なので、結果を出して家族、職場、道場の方に報いたかった。目標としていた藤本さんに勝てたことは、柔道家として大きな成果。ロンドンまで、海外勢に対応できるよう練習を積み、まずは初戦を勝利できるように励みたい」と、安堵の表情を浮かべながら抱負を述べた。

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好試合となった男子60kg級の決勝

5大会連続のパラリンピック日本代表の座を逃した藤本は、「パラリンピックに行けない実感がまだない。選考会で負けたことは自分の人生にプラスになるはず。お互い高め合ってきた広瀬には、がんばってきてほしい」と話した。

その他の階級は、男子60kg級が田村修也に延長判定で勝利した平井孝明、81kg級がアテネパラリンピック銀メダリスト加藤裕司、100kg級は21歳の北薗新光に。2010年から2011年の間に開催された、IBSA公認の国際大会に出場し、国際クラス分けを受けている選手が他にいない73㎏級と100㎏超級の代表候補はそれぞれ不戦勝で高橋秀克、正木健人に決まった。

女子52㎏級は、半谷静香が代表候補に

女子の部は、52㎏級の半谷静香、57㎏級の米田真由美のふたりが勝利した。福島出身で東日本大震災の影響を受けた半谷は、格闘家・小川直也の小川道場所属。応援に駆けつけた道場の子どもたちから、大きな声援が送られていた。

北京パラリンピックでは、メダルひとつに終わった柔道競技。海外勢のパワー柔道の前に状況は厳しいというが、各選手の健闘に期待したい。

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田中に苦戦を強いられるも勝利した、女子52㎏級の半谷

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ロンドンパラリンピック日本代表候補に決まった選手たち

ロンドンパラリンピック日本代表候補選手

男子の部
60㎏級/平井 孝明
66㎏級/廣瀬 誠
73㎏級/高橋 秀克
81㎏級/加藤 裕司
100㎏級/北薗 新光
100㎏超級/正木 健人

女子の部
52㎏級/半谷 静香
57㎏級/米田 真由美

(取材・文/瀬長あすか、撮影/吉村もと)

【外部リンク】→web Sportiva/視覚障害者柔道】パラリンピック切符を掴んだ広瀬誠。 ライバルとともに歩んだ道