ロンドン2012, 柔道 — 2012/9/3 月曜日 at 0:36:27

正木健人、柔道4連覇という伝説への第一歩

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決勝戦を一本勝ちで決めた男子100キロ超級の正木健人(撮影/吉村もと)

「決勝で勝ったときに、ふっと張りつめていた糸が切れる感じがありました。試合に集中していたし、自分では感じていなかったつもりだけど、プレッシャーがあったんでしょうか。最後の試合、一本で勝つことができて本当によかったし、ほっとしました」

パラリンピック大会4日目(現地時間1日)が今大会の柔道最終日だった。「全試合一本勝ちで金メダル」を目標に掲げていた男子100キロ超級の正木健人(徳島県立盲学校)は、攻めの姿勢を貫き、金メダルを獲得した。

初戦でアテネ・北京大会金メダルのイルハム・ザキーエフ(アゼルバイジャン)を一本勝ちで破った

初戦の相手は、アテネ・北京大会の王者イルハム・ザキーエフ(アゼルバイジャン)。2011年4月にトルコで開催されたIBSA(国際視覚障害者スポーツ協会)世界大会の決勝で対戦し、そのときは正木が勝利しているが、正木にとって「一番強い相手」だ。
そのザキーエフとの対戦は、試合開始23秒、得意の払い腰を仕掛け、足車となり、あっさりと一本勝ち。連日観客席を埋める英国の観客から、称賛の拍手が送られた。

続く準決勝では優勢勝ち、「ぶん投げて終わろう」と臨んだ決勝では相手の体勢が崩れたところをすぐさま抑え込んで一本。育英高時代に習得した“攻め続ける柔道”をやり抜いた結果の勝利だった。

パラリンピックには初出場。だが、弱視ながらインターハイ男子個人100キロ超級、団体ともに3位の成績、名門・天理大柔道部に所属していた経歴から金メダルを期待される存在だった。

初出場で獲得した金メダルを手ににっこり

「日本からの期待も大きかったですし、自分でも大きいことを言っていたんで、『負けたらどうしよう』と弱気になることもあったんですけど、とにかく相手を倒すことだけ考えるようにしました」

 大学の先輩に教えてもらった“我道切拓”という言葉がある。「柔道は個人の勝負。決勝を前に恐くなることもあるかもしれない。でも、そんなときに人に助けてもらえるなんて思ったらいけない。わが道は自分で切り拓くべきなんだ」。大切な試合の前にそんなことを考えることがあるという。「今日はその言葉通りの柔道ができたかなと思います」と正木は語った。

メダルセレモニーでは表彰台の中央に立ち、君が代を聞きながら優勝の味をかみしめた。「やっぱり一番が最高です」と言う正木には、次なる目標がある。

笑顔でインタビューに応える正木

あん摩マッサージの資格取得のために通っている徳島県立盲学校の実習助手兼助教諭、藤本聰を越えるパラリンピック柔道4連覇だ。アトランタからアテネまでの3大会連続で金メダルを獲得した66キロ級の藤本は、北京では惜しくも銀メダルに終わり、4連覇を逃している。

「やるからには一番上を目指したい。視覚障害者柔道に名を刻む藤本先生のように、長く大舞台で輝ける選手になりたいです」

帰国したら藤本に「一個目の金メダルを取ってきました」と報告するつもりだ。

偉大な先輩の背中を追う金メダリスト・正木健人。その伝説の第一章が幕を開けた。