ウィルチェアーラグビー — 2010/9/25 土曜日 at 20:20:45

【2010世界選手権】日本、初の世界4強に!

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スピードに乗った速攻で攻撃のリズムを作った日本代表、島川慎一/撮影:吉村もと

スケート勢のメダルに日本がわいたバンクーバー・オリンピック。そのスピードスケート会場だったリッチモンド・オリンピック・オーバルで、9月21日からウィルチェアーラグビーの世界選手権が開催されている。夏季パラリンピック競技のウィルチェアーラグビーは、四肢まひ者らによる四人制ラグビー。車いす同士のタックルが認められている激しいスポーツである。

1976年にカナダで始まったウィルチェアーラグビーは、’95年に初めて世界選手権が開催され、2000年のシドニーパラリンピックからパラリンピックの正式種目になった。1996年11月にこの競技を始めた日本は、2002年の第3回世界選手権( 8位)、’04年のアテネパラリンピックにそれぞれ初出場。過去最高は’06年の第4回世界選手権(ニュージーランド)で収めた5位。今大会では「メダルゲームに絡む」をチーム目標として掲げている。

出場国は、各ゾーンを勝ち抜いた上位国など12ヵ国。アメリカ、カナダ、スウェーデン、ドイツ、イギリス、フィンランド(以上プールA)、オーストラリア、ベルギー、ニュージーランド、日本、ポーランド、アルゼンチン(以上プールB)が予選を戦い、各プールの上位2チームがクロスオーバーゲームに進出。現地時間26日に行われる決勝は、クロスオーバーゲームのそれぞれの勝者が世界一の座をかけて激突する。

日本、ニュージーランドに初白星!

世界ランキング7位の日本は、初戦で強豪オーストラリアに52-65で敗れたが、続くアルゼンチン戦を84-21で圧勝。3日目のベルギー戦を60-59で競り勝ち、波に乗る。

大会3日目となる24日は、まず同じアジア・オセアニアゾーンのニュージーランドと対戦。ニュージーランドは、前回準優勝国でアテネパラリンピック金メダルの強豪だが、今大会は中核を担ってきた選手を欠き、ここまで1勝3敗と調子が悪い。日本はそのニュージーランドにこれまでの国際大会で勝利を挙げたことがないものの、前日のベルギー戦を逆転で制した勢いがある。今こそ、長年の悔しさを晴らすときである。

試合開始直後、日本は仲里進のパスから池崎大輔がゴールして先制。取り返されれば、スピードのある佐藤佳人が、池崎が、ゴールラインを駆け抜けて得点する。ターンオーバーでリードを取った日本の見せ場は、第1ピリオド終了直前。時間を使い、キーエリアに滑り込む攻撃がインターバルの1秒前に鮮やかに決まると、日本ベンチは一気に盛り上がった。
第2ピリオドからは、経験のある島川慎一と三阪洋行がコートに入る。がっちりとプレスをしながら、スピードでかき回す。島川の速攻などで徐々に差を広げていった。日本は結局56-47でニュージーランドを初めて降し、プールゲームの成績を3勝1敗とした。

「ニュージーランドのメンバーは何度も対戦していてよく知っているし、チームミーティングで話し合ったシチュエーションも当たった。うまく抑えられて狙い通りの結果になった。昨日の一勝があって、みんなが一丸となっているし、チームはのっている」

そう話すキャプテン佐藤の表情は晴れ晴れとしていた。

これまで世界の上位にいた強豪を破った“結果”。それは、連戦の疲れが見え始めたチームに笑顔と自信をもたらした。

苦しい試合をものにし、ベスト4以上を決めた。

メダルゲーム進出のかかる重要な試合が続く。約6時間を空けて17時からポーランド戦が始まった。プールゲーム最終試合となるこの試合、日本は価値のある逆転劇を演じ、その成長ぶりを示したのである。

持ち点2.0の選手4人をスタメンとしたポーランドの戦法は、キーディフェンスで日本の攻撃を抑え、ゴールをされた後のカウンターで得点を稼ぐことだった。日本は、序盤からオフェンスのパスミスを誘発され、体格で劣るポーランドを相手に接戦する。第2ピリオド途中、ターンオーバーを取られてカウンターを決められると、インターバルの直前に、敵陣キーエリア付近でボールを奪取され、ついに27-28とリードを許してしまう。

続く第3ピリオド、逆転のチャンスをものにできず、選手たちが焦り始める。キーエリアでもたつき、2点、3点と離される。

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最終ピリオド、気力を振りしぼってチャレンジを続けた仲里進/撮影:吉村もと

このまま負けるのか……そんな重苦しい空気がチームを覆う。
「ベスト4という目標があったから負けられなかった」
そう話すのは、今大会長くコートにいる仲里。昨シーズン、アメリカでプレーして自らを磨いた経験が活きたのだろう。
「ミーティングで話した『相手も疲れてくる』という言葉を思い浮かべた。あきらめなかった」

そして、最終ピリオドの残り4分。時間制限によるルールでターンオーバーを奪うと、新人ながら車いすバスケットボール経験の長い池崎が落ち着いたボール運び。試合終了まで2分半、佐藤のゴールで逆転。日本が51-50で勝利し、過去最高の4位以上を決めた。

日本は国際試合で、試合終了前に追いつかれて試合をひっくり返されたり、僅差で敗れたりすることが多かった。しかし、土壇場で逆転し勝負強さを見せつけたこの試合で、その成長を証明した。

試合後、ポーランドのキャプテン、バストル・ジールスケ(#9)は、
「キーディフェンスを展開して、たまにプレスをする戦法で勝ちたかったけど……」
と肩を落とした。

バストル・ジールスケによれば、ポーランドと日本が対戦したのは、1998年以来だという。それはイギリスのストーク・マンデビルで行われた普及イベントでのこと。当時、両国ともにウィルチェアーラグビーの創始期だった。世界選手権に初出場したポーランドのキャプテンは「負けはしたけれど、スピードのある日本とのゲームは本当に楽しかったよ」と感慨深げに語っていた。

(取材・文/瀬長あすか、撮影/吉村もと)