Pick up Athletes, ウィルチェアーラグビー — 2011/8/22 月曜日 at 13:46:48

すべてはアメリカに勝つために。世界最高プレーヤーが目指す場所

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すべてはアメリカに勝つた めに。世界最高プレーヤーが目指す場所

2010年9月26日、ウィルチェアーラグビー世界選手権決勝、オーストラリア対アメ
リカ。ベンチに下ろされたライリー・バットは、ひと一倍大きな体をすぼませて、コー
ト上の一点を見つめていた。2006年の世界選手権以降、オーストラリアはアメリカに勝
ち星を挙げられず、連覇を許している。45-57で試合終了。「またアメリカに勝てなか
った」。優勝したアメリカが喜びを爆発させる。アメリカのディフェンスに動きを封じ
られたライリーは、フラストレーションを感じるばかりだった。それでも、パワフルな
プレーで圧倒的な存在感を放ち、大会MVPに輝いた。

「障害者が乗るものだとおもっていた」車いす競技との出合い

先天的な四肢欠損の障害がある。父親はトライアスロンをしていて、スポーツが身
近にあった。幼少時代は、スケートボードに乗って過ごし、8歳まで車いすに乗らなか
ったという。「だって、車いすなんて障害者が乗るものだとおもっていたから(笑)」
。車いすに乗るようになってからは、レーシングモーターバイクに夢中になった。そし
て、12歳のとき、ウィルチェアーラグビーに出合った。

車いすごとぶつかり合うコンタクトプレーとスピード感。スポーツ好きのライリー
少年にとって、ウィルチェアーラグビーほど魅力を感じるものはなかった。なによりも
“世界で戦える”という点がこの競技の魅力。13歳でオーストラリア代表チームに加入
すると、世界は着実に近くなっていった。

若冠15歳でアテネパラリンピックに初出場を果たした後、2007年にアジア・オセア
ニアゾーン選手権で金メダル、2008年に北京パラリンピックで銀メダルを獲得した。そ
の後は、国際大会の他、オーストラリア国内のリーグ戦やトップ選手が集まるアメリカ
のトーナメントで活躍。いまや世界一のプレーヤーと称されるアスリートだ。

北京パラリンピック決勝で敗れた悔しさを胸に

競技生活の転機となったのは、銀メダルに終わった北京パラリンピック。決勝でア
メリカに敗れた悔しさから、よりハードにトレーニングに励むようになった。とくに車
いすの推進力に直結する上半身の筋トレは、トレーナーが作成したメニューを週に6日
間、1回につき10セット行う。北京のころは、ぽっちゃりとしていた体も引き締まった

タレント揃いで、組織力も精神力も高いアメリカに、個人技では太刀打ちできない
ことは、先の世界選手権で痛感している。オーストラリアがアメリカに勝つために必要
なこと。それは「コーチング、布陣、戦略」だという。やらなければならないことは山
積している。2012年ロンドンパラリンピックまで、本場アメリカのシーズンには参加し
ない。自らがリーダーシップを執り、オーストラリア代表を強化するためだ。「今の目
標は、ロンドンでアメリカを倒して金メダルを獲ること。今までの悔しさを晴らしたい
からね」

ロンドンで表彰台の中央に上ったとき、ライリーは真のナンバーワン・プレーヤー
になる。

(取材・文:瀬長あすか、通訳:太田美樹子、写真:吉村もと<世界選手権@カナ
ダ>、瀬長あすか<インタビュー@オーストラリア>)


アスリート・プロフィール

Ryley Batt(ライリー・バット)

Ryley Batt(ライリー・バット)
持ち点3.5クラス。1989年5月22日生まれ。オーストラリア・ポートマックアイアリー(
ニュー・サウス・ウェールズ州)出身。12歳からウィルチェアーラグビーを始める。13
歳でオーストラリア代表となり、アテネパラリンピック、北京パラリンピックに出場。
2010ウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)のMVP。国内リーグ(NWRL)では、G
IO NSW Gladiators に所属、2011NWRLではMVPを獲得している。趣味はモーターバイク
と水上スキーなどのマリンスポーツ。