ウィルチェアーラグビー — 2008/12/29 月曜日 at 8:22:14

王者BLITZを倒すのは俺たちだ!〜横濱義塾の挑戦〜(上)

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BLITZ vs 横濱義塾=08年12月千葉ポートアリーナ/写真:吉村もと
攻守に渡ってチームを牽引する横濱義塾の藤嶋真悟。大会MSPに選ばれる活躍を見せた 日本選手権=08年12月千葉ポートアリーナ/写真:吉村もと

2008年12月21日。王者・BLITZとの決戦を目前に、ミーティングで藤嶋真悟は言った。

「とにかく気持ちだけは負けないように」

あえて細かい戦術の話はしなかった。前日のOkinawa Hurricanes戦で昨年の雪辱を晴らし、チーム作りへの手ごたえを感じていた。だが、ケガや病気などで選手を欠き、横濱義塾のチーム状況は決して万全ではなかった。そんな中迎えた、最も倒すことが難しい相手との戦い。舞台は、日本選手権のファイナルマッチ。勝った方が、日本一になる。

世界で活躍するハイポインター・藤嶋の加入が選手の意識を変えた

キャプテンとしてチームを率いる横濱義塾の上田能久(2.5クラス) 東日本リーグ=08年5月横浜ラポール/写真:吉村もと
キャプテンとしてチームを率いる横濱義塾の上田能久(2.5クラス) 東日本リーグ=08年5月横浜ラポール/写真:吉村もと

――世界で戦える競技を。ツインバスケのスター選手だった藤嶋が、ウィルチェアーラグビーに打ち込むようになったのは2006年秋。たちまち頭角を現した藤嶋はナショナルチームで活躍しつつ、国内では「新しいスタイルのチームを作れたら楽しいだろうな」と、横浜ラポール(神奈川県)を拠点に活動する横濱義塾でプレーするようになる。

横濱義塾には、ツインバスケでも活躍する佐々木、深澤、高橋らチェアースキルに長けている選手が多い。今シーズンからコーチ兼任でチームを率いる藤嶋は、そんな仲間たちの特徴をいかして「パスがさばける」全員ラグビーで勝利を目指す。

横濱義塾(旧・横浜ホワイトハーツ)は、約10年前に現在ヘッドコーチを務める石川らが立ち上げたチームだ。一昨年までの日本選手権は4位が最高。チームにはこれまでハイポインターがいなかった。だが、持ち点が3.0ある藤嶋の加入で、プレースタイルが大きく変わり、選手たちの競技意識が高まっていったという。

「チームが変化していき、足を引っぱりたくなかった」。’08年からヘッドコーチとなった石川は、昨シーズンでプレーヤーを退いた。

ハイポインターである藤嶋の加入で、ラインの組み合わせが変わり、出場機会を増した者もいる。0.5クラスの深澤は、東日本リーグで個人賞を獲るなど力を発揮した。

また、藤嶋に誘われて横濱義塾に加入した、上田の存在もチームの雰囲気を変えた。

競技歴2年のオールドルーキー上田は、他チームの練習に足を運んだり、自宅ではナショナルチームのDVDを見て欧米の名選手の動きを研究する熱心さ。そのひたむきに努力する後ろ姿でチームメイトを刺激している。

合言葉は”打倒・BLITZ”

横濱義塾ベンチ前=08年5月横浜ラポール/写真:吉村もと
笑顔を見せる横濱義塾の選手たち。「練習は厳しく、試合は楽しく」が藤嶋のモットーだ=08年5月横浜ラポール/写真:吉村もと

今年2月に行われた前回大会で、横濱義塾は国内で図抜けた力を持つBLITZと対戦。第1ピリオドで同点に追いつく接戦を見せた。終盤、点差が開いていき、43-53というスコアに終わったが、緊迫感あふれる試合展開で会場の視線を釘づけにした。

「日本選手権でBLITZ相手にいい戦いが出来たことで、選手たちにラグビーに対する熱意が生まれた」(石川)
このときの善戦が、選手たちを勝利にどん欲にさせた。

それ以来、選手たちは口を揃えて言う。
――「打倒BLITZ」。

そして迎えた日本選手権での再戦――。
横濱義塾のベンチ前。キャプテン上田のかけ声で、白い円陣の士気が高まる。その気迫は、隣のベンチ、強者BLITZの威圧感に少しも劣っていなかった。
両者が生み出す緊迫感が会場を覆い、アリーナは静まり返る。レフェリーの合図で試合が始まった――。

(記事:瀬長あすか)