Writer's eye, ウィルチェアーラグビー — 2012/5/18 金曜日 at 19:32:58

【Writer’s eye】アメリカで培った自信を胸に。ウィルチェアーラグビー仲里の進む道(後編)

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3シーズン目の全試合を終えて、レイクショア・デモリッションのチームメイトと写真に納まる仲里(左から2人目)=ケンタッキー・ナショナル・コンベンションセンター/撮影:瀬長あすか

パラリンピックで輝くための3年目

アメリカ参戦3年目の今シーズン。所属することになったのは、1シーズン目に所属したレイクショア・デモリッションだ。現役アメリカ代表選手がおらず、決して希望通りとは言えない再移籍。スター選手こそいないが、精確なパスを出さなければボールを運べない四肢欠損の選手と組むことができ、体幹を利用して車いすを漕ぐエースとならスピーディーなオフェンスが体得できる。アメリカの中でも優れたスポーツ施設といわれるレイクショア財団で寮生活をしながら、パーソナルトレーニングができる環境もプラスに捉えた。沖縄に帰りたいと思うことも何度もあったが、それでも、自らのためになる環境を信じて前に進んだ。

そして迎えたシーズンのクライマックス。レイクショア・デモリッションは、全米40余りのチームのなかでも地区予選を勝ち抜いた8チームだけが出場できる「USQRA National Championship DivisionⅠ」の参戦権を得て、トップの選手と対峙できる舞台にやってきた。チーム状況を見れば、今シーズンは「DivisionⅠ」に届かなかった8チームが出場する「DivisionⅡ」トーナメントだろうと思われていたが、地区リーグを制して、最高のステージに立てたことはまた、仲里の自信となった。

レイクショア・デモリッションのラインは、欠損のDevlin(クラス/3.0)、外国人枠の仲里(2.5)、高さのあるWillard(2.5)、経験豊富なEddie(0.5のオールドエイジ。オールドエイジは持ち点から-0.5で計算される)。Willardに代わってディフェンスが激しい欠損のBob(2.0)が入る戦い方もできる。

スピードのある選手がいるため、仲里はパス出しの役割を担うことが多い。だが、予選プールではまだ若いDevlinがミスを犯すなどターンオーバーになるピンチが続出。拮抗していたユタ・スコーピオンズ戦も、雑なボールリレーが響いて勝ち星を奪われた。そんなときに重要なのは、やはりコミュニケーション。「でも、『集中力を切らさないように!』とか、チームを鼓舞しなくてはいけないところで英語が出てこなくて……」。もどかしさが募ったが、チームをひとつでも上の順位にするために、仲里は心を決めた。最終日に7・8位決定戦で再び対戦することになったユタ・スコーピオンズ戦では、自らミーティングで「昨日は使わなかったキーディフェンスも戦術に加えよう」と修正を提案。チームは攻撃のリズムを崩されずに試合を運び、47対42で勝利した。最終的にチームは7位に終わったが、仲里は勝負にこだわる積極的な姿勢を最後まで貫き、2.5クラスの個人賞「All Tournament Teams」を獲得したのだった。

「自分のチームは、トップチームとは力の差があって勝つことは難しいかもしれない。でも、国内でもっともヒートアップするDivisionⅠで、トップ選手と対戦することは絶対に自分のためになっている。この経験は、パラリンピックでいい成績を残すことにもつながると思う」

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ポートランド・パウンダーズの外国人助っ人Lars Mertens(ベルギー)と競り合う仲里/撮影:瀬長あすか

アメリカで過ごした一瞬をも無駄にはしない。3年目のシーズン中、仲里の頭の中にはずっと日本代表チームのこと、そしてロンドンで狙うメダルがあったのだ。

「日本では公式戦がない時期も、仲里がアメリカでプレーして、調子を維持していることはジャパンにプラスになるし、いい刺激を与えてくれている」とは日本代表チームの岩渕典仁ヘッドコーチ。

日本の仲間たちが送り出してくれるから、アメリカで活動できる。「ここまで頑張って来られたのは、ウィルチェアーラグビーのチームメイト、理解してくれる会社の方、沖縄の両親、友人などたくさんの人のおかげ」。仲里の原動力は、支えてくれる人たち。「ロンドンパラリンピックでメダルを獲得して恩返ししたい」

一方でこうも言う。「このままのレベルで『世界に勝つ』なんて口にするのはおこがましい。もっと実践を積まなければ」。3年間世界を見続けて、戦ってきたからこそ危機感がある。運命のロンドンパラリンピックまであと100日余り。アメリカで培った自信、そして周りへの感謝を胸に、仲里進はメダルへの道を突き進む。

(了)

→「【Writer’s eye】アメリカで培った自信を胸に。ウィルチェアーラグビー仲里の進む道(前編)」へ

(取材・文/瀬長あすか)