ウィルチェアーラグビー — 2008/12/31 水曜日 at 23:00:16

王者BLITZを倒すのは俺たちだ!〜横濱義塾の挑戦〜(下)

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BLITZの守備陣に取り囲まれる横濱義塾のエース藤嶋/写真:吉村もと
BLITZの守備陣に取り囲まれる横濱義塾のエース藤嶋/写真:吉村もと

ウィルチェアーラグビー日本選手権の決勝は、国内ランキング3位の横濱義塾と4年連続日本一を狙うBLITZの対戦となった。

強豪BLITZを追いつめた前半戦――

先行したのは横濱義塾だった。
横濱義塾のミッドポインター佐々木がゴールへ走り込んで先制。
その後も、島川の投入で勢いづきたいBLITZにプレッシャーをかけ、王者を波に乗せない。
緊迫した雰囲気のなか、たびたび時計が止まる。選手たちは集中力を切らすどころか、気合いを増していく。
横濱義塾は、深澤のディフェンスが冴えわたり、高橋のファインプレーにベンチが沸く。藤嶋が密集を突破し、ゴールに素早く走り込んで攻撃のリズムをつくった。藤嶋に執拗なマークがつくと、佐々木が瞬時に反応し、ボールをゴールまで運んでいく。
そこには、猛攻を仕掛けるもどこかちぐはぐでミスが目立った、前年度の横濱義塾はいなかった。
――「初めてBLITZとガチンコで戦えたと思う」(藤嶋)。
横濱義塾は進化を遂げた。

決勝のBLITZ戦で闘志を見せる横濱義塾の佐々木=21日/写真:吉村もと
闘志溢れるプレーでゴールに走り込むミッドポインターの佐々木。「藤嶋を補佐しつつ、でも頼らない」スピードが光っていた/写真:吉村もと

一方のBLITZは、選手層が厚い。横濱義塾の勢いを尻目にメンバーチェンジを効果的に行い、第1ピリオド後半には冷静さを取り戻す。ベンチから修正の指示が出されたのをきっかけに、島川と田村の2枚の攻撃軸が機能し始めた。チーム一丸となったBLITZが、王者ここにありといわんばかりの猛々しいプレーで横濱義塾の前に立ちふさがる。
第2ピリオド終了時点で、スコアは<横濱義塾>23-24<BLITZ>。両者一歩も譲らない接戦となった。

しかし、後半戦に入ると、横濱義塾のゴール後の切り替えがもたつき始める。試合開始からコートに出続けていた選手たちの、体力の消耗は明らかだった。

BLITZのヘッドコーチ荻野は話す。
「横濱義塾に交代の層がないことはわかっていた。前半からリードされても焦りはなく、BLITZのベンチにはこれから行くぞという雰囲気があった」

王者は冷静だった。

修正できなかった課題

――半年前。横濱義塾は、国立リハビリテーションセンターで行われた東日本リーグで、BLITZに今シーズン1敗目を喫した。その試合後、横濱義塾の深澤はこう話していた。
「第2ピリオドまでは良かったんです。あとは体力をつけるか、交代の層を広げるかですが、なかなか険しい道ですね……」

今シーズン、横濱義塾には若山、川瀬、山口、鈴木という4人が新たに加入した。選手権への登録選手数は11人でウィルチェアーラグビーの国内チームの中で最多。だが、クラス分けの問題もあり、結局交代の幅を広げられないままBLITZとの再戦を迎えていた。
東日本リーグの課題は、修正されていなかった。

北海道Big Dippersと対戦する横濱義塾の深澤=19日/写真:吉村もと
敵陣での守備が光ったローポインターの深澤は、今大会のベストプレイヤー(0.5クラス)に輝いた

―――BLITZ対横濱義塾、後半戦。
第3ピリオド。横濱義塾が一点を追う展開が続く。
そんななか、選手たちのボルテージが、最高潮に達した瞬間があった。
BLITZのパスを高橋がカットし、横濱義塾がボール保持権を得ると、そのボールを藤嶋が前方へ運ぶ。そこに、BLITZの島川が追いつく。しかし、藤嶋はキーエリア付近でファールを誘い出す。雄叫びをあげる藤嶋。その後、横濱義塾が得点し、スコアは27-26に。
横濱義塾がスコアを返し、再び流れを引き戻した。
選手たちの咆哮がアリーナに響く。
「BLITZに勝てるのでは……」
ベンチの期待は高まった。

だが、ここまでだった。
BLITZは、横濱義塾の攻撃の起点である藤嶋を、徹底的に潰しにかかる。点差は1点、2点と再び開く。最終ピリオドでは、横濱義塾はターンオーバーを獲って食い下がり、タイムアウトを使って立て直そうとするものの、もはや反撃する力は残っていなかった。

43-40で試合終了。BLITZが横濱義塾を降し、結成以来負けなしの日本選手権4連覇を決めた。

試合後の挨拶を終えた、横濱義塾のメンバーそれぞれには笑顔があった。
充実感溢れる表情の選手たちは爽やかだった。
彼らの笑顔を見て、必死に涙をこらえるスタッフがいた。
健闘をたたえあう両者。王者の牙城は崩せなかったが、BLITZとほぼ互角の戦いができたことは大きな自信になったはずだ。
敗戦の悔しさを胸に横濱義塾は、また日本一を目指す。

(取材・文/瀬長あすか)