ウィルチェアーラグビー, ロンドン2012 — 2012/9/7 金曜日 at 4:38:56

ウィルチェアーラグビー池崎大輔、支えてくれた人たちへの感謝を胸に

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試合開始直前のセレモニーで、日の丸を見つめながら集中力を高めるエース池崎大輔(撮影/吉村もと)

8万人が席を埋めたオリンピックスタジアム。ウィルチェアーラグビーの池崎大輔(北海道ビッグディッパーズ)は、その観客に大きく手を振りながら、ゆっくりと車いすを漕いだ。

「スタジアムの雰囲気と、この舞台にたどり着くまでにあったいろんなことが交互に思い出されて……」

あふれる涙が今にもこぼれ落ちそうだった。「今でも頭に思い浮かべるだけでウルっとなる」と話す。ロンドンパラリンピック開会式の入場行進のことである。

約4年前に競技を始めた池崎にとって、このロンドン大会が初めてのパラリンピックとなる。5日(現地時間)に行われたグループリーグ初戦のフランス戦を前に、ホームの英国対米国の試合を観戦した。「すごい歓声でビビりました」(池崎)。実際、自身の試合が始まる前は、緊張を解きほぐそうとしたのか、何度も呼吸を整えている様子だった。

試合は、日本が格下のフランスを相手にティップオフを制して先攻した。だが、先制点となるゴールを決めた池崎に、世界トップレベルを誇る漕ぎ出しのキレは、まだない。その後も普段のプレーとは程遠く、「緊張なのか、場の空気にのまれたのか分からないが、イージーミスを犯してしまった」と試合を振り返った。

池崎は語る。
「ここでのミスが命取りだと分かっているし、1つひとつのプレーが一度しかない勝負だから。気持ちを落ち着かせるために、これまで支えてくれた人たちのことをいろいろ考えながらプレーしました」

重要な初戦を白星で飾った日本

池崎にとって最大のモチベーションは、「応援してくれている地元・北海道のみんなに恩返しをすること」だ。

日本代表の強化合宿や海外遠征費用が捻出できず、困窮していた時期に支えてくれたのは、北海道ビッグディッパーズのチームメイトだった。ラグビーに関する費用をサポートしてくれるだけでなく、時には練習のパートナーになってくれたり、練習場所の体育館への送り迎えをしてくれたりするという。

これからが勝負!メダルに向かって突き進む池崎

また、よりスピードアップするために、プロバスケットチームのトレーナーのサポートを受けて体幹を鍛えているほか、今大会使用しているスポーツ用マウスピースも無償で提供してもらったものだ。

「プレーをしながらも、北海道のみんなに背中を押されているんです」と話す池崎。多くのあたたかい応援が、池崎の原動力になっているのだろう。

試合は、一度もリードを与えなかった日本が65対56で勝利。「1人のミスもみんなでカバーすることができる」(池崎)という日本の組織力と、効果的なメンバーチェンジで相手に攻撃のリズムを与えないベンチワークが光り、重要な初戦を白星で飾った。

世界1位の米国戦、地元の大声援を見方につける英国戦と厳しい戦いが続く。池崎にはエースの自覚がある。
「フランス戦はメンバーチェンジなどでフレッシュして臨むことができた。でも、接戦が予想される今後は、そうは言っていられない。自分で修正していかなければ」

支えてくれた人たちへの感謝を胸に、日本代表のエース池崎はメダル獲得に向けて突き進む。