ウィルチェアーラグビー, 夏季競技 — 2012/12/18 火曜日 at 19:05:19

BLITZ、沖縄の3連覇を阻み3年ぶりに王座奪還

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他を圧倒する強さを見せつけ、日本一に返り咲いたBLITZの島川=千葉ポートアリーナ/撮影:吉村もと

ウィルチェアーラグビーの国内最高峰の大会である「第14回日本選手権大会・第3回国際交流大会」が、12月14日から3日間、千葉ポートアリーナで開催された。ロンドンパラリンピックで4位の成績を残した日本代表選手がそれぞれ所属チームに分かれて出場したほか、同大会で日本とメダルを争ったアメリカ代表のニック・スプリンガーが3連覇を狙うOkinawa Hurricanesの一員として参戦した。国内の7チームが出場。2つのプールに分かれた予選リーグと、各プール上位2チームでの決勝トーナメントが行われ、日本一をかけて争った。16日に行われた決勝には、そのOkinawa Hurricanesと王座奪還を狙うBLITZ(埼玉)が進出。65‐49で勝利したBLITZが混戦の様相を見せている国内大会で頂点に立った。

決勝にかける両者の思い

人一倍声を出し、チームの士気を高めたニック・スプリンガー

予選リーグで横濱義塾、北海道Big Dippersを圧倒し、クロスオーバーゲームでAXE(埼玉)に54‐45で勝利を収めたBLITZは「3年分の悔しさをぶつけよう」(キャプテンの島川慎一)と士気を高め、2010年に6連覇を阻止されたOkinawa Hurricanesとの決勝に挑んだ。

対するOkinawa Hurricanesは、日本代表の官野一彦らがいるBLAST(千葉)に戦術を読まれて苦しんだものの、順調に勝ち上がって決勝の舞台へ。チームの中核を担う仲里進は「相手の方が力は少し上だけど、粘り強く戦いたい」と決意を示した。チームに合流して約3週間のニックは「タフな競り合いになると思うけど、BLITZを倒したい。僕は3連覇のために呼ばれ、Okinawa Hurricanesはひとつのチームとしてやってきたのだから」と意気込みを語った。

ウィルチェアーラグビーは、車椅子バスケットと同様に持ち点制の競技だ。選手は障害のレベルにより0.5から3.5まで7段階に分けられる。障害が軽いほど点数が高く、コート上の4人の合計は8点を越えてはならないルールがある。

Okinawa Hurricanesは、初優勝した当時とは障害のレベルによって与えられる持ち点が変わっており、戦力ダウンが否めない。今大会は、体幹が強い切断のニックを起用し、コート上の4人の上限である8点に満たないラインを組んでいる。通常なら不利になるところだが、ニックは予選リーグや準決勝でも切断ゆえパスが通らないというウィークポイントを感じさせない連携を見せており、アグレッシブなディフェンスやかけ声で沖縄の勝利に大きく貢献していた。

闘志むき出しの決勝戦

決勝戦、BLITZは、経験値の高い島川と荻野晃一、パススキルが長けている田村学、そして期待の若手・渡邉直紀の布陣で試合に臨んだ。

「外国人のいるチームに負けたくはない」

BLITZの島川は闘志を前面に出した。

BLITZの作戦は、3.0クラスの島川が2.0クラスのニックに徹底的に張り付くことだった。

状態のいい島川がニックをマークすることは、コート全体のミスマッチを生む。体幹が効き、漕ぎ出しの速いニックに突破されれば、さらに不利な状況を作り出してしまうからだ。だが、勝利に向けてチーム一丸となったBLITZは、1.0クラスの荻野が自分より状態のいい相手選手をゴール前で止めるなど、闘志むきだしの全員プレーでひた走った。序盤からこの作戦が功を奏し、ニックをコーナーに封じ込むことに成功。Okinawa Hurricanesの攻撃のリズムを壊して、BLITZが試合をリードした。

島川は振り返る。

「これまでもマンツーマンでつくことはあったけれど、コート上の他の動きが気になってマークしている選手に出し抜かれることもあった。だけど、今日はチームメートを信頼できたから、自分の役割に集中できた」

さらに、ゴール後いかに素早く攻守の切り替えができるかが重要なだけに、BLITZのほうがインバウンダーをチェックするディフェンスの機能が上回っていたことも勝敗を分けるポイントとなった。

第2ピリオド、BLITZがゴールした後の切り返しの場面で、Okinawa Hurricanesのインバウンダー仲里から砂川へのパスコースを立て続けに塞ぎ、BLITZ が3連続得点。

タイムアウトを取らざるを得ない状況が続いたOkinawa Hurricanesは、徐々に生気を失っていった。

3年ぶりの日本一! 笑顔を見せるBLITZの選手とスタッフ

ときに圧倒的な完全勝利を目指す。これこそ過去に大会5連覇の歴史を作ったBLITZの姿だ。

BLITZは最後まで攻撃の手を緩めることなく走り続け、65‐49で勝利。喜びを爆発させるベンチとは対照的に、コートの選手からは安堵と疲労がにじみ出ていた。

試合後「これが何年も続くように、後進の指導にも力を入れてチームを強化していく」とさらなる飛躍を誓った島川。

昨年は大会初日に指を切断する大ケガを負い、チームも最下位に終わっただけに喜びもひとしおだろう。

プレイングマネージャーの荻野は、「パラリンピックが終わって(気持ちの切り替えが難しい時期)も、みんなこの日のために練習をしていた」と、チームメートを誇った。

AXEが「確実な3位」に

北海道Big Dippers戦で猛攻するAXEのハイポインター峰島

3位決定戦は、選手層を拡大中の北海道Big Dippersと、状況に応じてラインを切り替えられるほど選手層が厚いAXEが対戦。前回5位の北海道Big Dippersは、ポイントゲッター池崎大輔のプレータイムを伸ばして、中盤まで一進一退の攻防を繰り広げた。しかし、「今日はみんな走れていた」(プレイングマネージャーの福井正浩)というAXEの勢いは止まらない。攻撃の時間に、池崎の進路を徹底的につぶして得点を重ねたAXEが71‐55で勝利、2年連続で3位に輝いた。試合後、「前回よりも、確実な3位」と手ごたえを語ってくれたのはキャプテンの岸光太郎。今後、チームは練習試合などで実戦の機会を増やしてさらなる底上げを図るつもりだ。近い将来のファイナル進出を期待したい。

▼第14回ウィルチェアーラグビー日本選手権大会・第3回国際交流大会

●最終順位

大会を通して存在感を示した北海道Big Dippersの池崎

1位 BLITZ(埼玉)

2位 Okinawa Hurricanes (沖縄)

3位 AXE (埼玉)

4位 北海道 Big Dippers (北海道)

5位 HEAT(大阪)

6位 BLAST(千葉)

7位 横濱義塾(神奈川)

●個人賞

HEATはチーム力で5位と健闘した

<MVP>

3.0クラス 島川 慎一(BLITZ)

<MSP>

2.0クラス ニック・スプリンガー(Okinawa Hurricanes)

<Best Player>

0.5クラス 當間 貴志 (Okinawa Hurricanes)

1.0クラス 荻野 晃一 (BLITZ)

1.5クラス 河野 俊介 (BLAST)

2.0クラス 渡邉 直紀 (BLITZ)

2.0クラス 官野 一彦 (BLAST)

2.5クラス 仲里 進(Okinawa Hurricanes)

3.0クラス 池崎 大輔 (北海道Big Dippers)

3.5クラス 峰島 靖 (AXE)

(取材・文/瀬長あすか、撮影/吉村もと)