5戦全敗で最下位の日本に世界の壁、課題は山積み

by
第3ピリオド、パワープレーのチャンスで高橋和廣が意地の一発を決めた/=HARBORCENTER/撮影:吉村もと

アイススレッジホッケー世界選手権は2日、順位決定戦が行われた。5〜6位決定戦はイタリアがドイツを4-2で破った。7〜8位決定戦に出場した日本はチェコと対戦し、1-5で敗れた。日本は予選から5戦全敗。参加国中最下位の8位で今大会を終えた。

これまで勝ち星がない日本。チェコは予選で対戦し、1点差で敗れた相手だ。その借りを返すべく、「勝利」にこだわり、最終戦に臨んだ。だが、日本にとってあまりにも残酷な現実が待っていた。

ゴール前の守備が乱れたところをZdenek Krupickaに決められた

第1ピリオド5分7秒に先制点を入れられると、立て続けに3失点。いずれもディフェンスラインを簡単に崩され、ゴール前への攻撃を許してしまった。日本はゴールキーパーを永瀬充から望月和哉に変え、サードラインのメンバーも投入するが第2ピリオドも流れは変わらず。防戦一方で最終ピリオドを迎えた。

その後はチェコの度重なる反則もあって、徐々に攻撃の形をつくる日本。6分50秒にはパワープレーの場面で、ここまでチームを引っ張ってきた高橋和廣(FW)が、意地の一発を決めた。だが、日本の得点はこの1点のみ。最後まで攻めのシステムが機能しないまま、大会を去ることになった。

中北浩仁監督は、「史上最悪なAグループの戦いをしてしまった」と反省を口にし、「最大の敗因は、1年半あいた試合勘を埋められなかったこと。新たな日本のシステムを作り出せる体勢を整えていかなければならない。海外遠征も自国開催の大会もきちんとやって試合勘を増やし、這い上がっていくしかない」とコメントした。

明確になった大きすぎる世界との差

ここまで2得点と気を吐く熊谷はチェコの厳しいマークに苦戦

出場国のなかで、アメリカとカナダのホッケースキルと戦略は群を抜いている印象だ。だが、それ以外の国も、スピードこそさほど脅威ではないものの、きっちりとチームとして機能している。しかし残念ながら、日本だけがそのレベルに達していないことを認めざるを得ないだろう。

例えば、パスとレシーブの精度はどの国よりも低かった。前にパックをこぼしたり、パックを持ちすぎて相手に読まれてカットされたりと、自らリズムを壊し、相手に攻撃のチャンスを与えて失点につながる場面がすべての試合で見られた。また、ゴールへの執着心も他国のほうが勝っていたように思う。メンタル面も、技術面も、世界ははるか先を行っている。それを実感する結果だった。

アイスホッケー経験者でもある高橋は、こう話す。「世界は(技術も戦略も)アイスホッケーをやっている。パスの感覚やレシーブ、シュート、動き、すべてが“ホッケー感”の差だと思う」。そもそもアイスホッケーがマイナースポーツとして捉えられる日本と、競技が生活に根付いている北米やヨーロッパのチームとのホッケー感の差は埋まらない。「それでも、そのすき間を個人で埋めていくしかない。ビデオで見て学ぶだけでなく、それを余裕を持って試合にフィードバックするメンタルの強化も大きな課題です」

人材発掘と育成が急務

平均年齢38歳の日本代表。次世代の台頭が期待される

日本が抱えるこれら問題の根底にあるのは、慢性的かつ深刻な人材不足だ。国内の競技人口はわずか30人前後。チーム内で競争原理が働かず、勝っても負けても変化が生じにくい。必然的に若手選手の突き上げも少なく、結果として競技力が向上しない。

体力の消耗が激しいアイススレッジホッケーは、主に3セットが交代しながら氷に乗るが、日本の場合は多くの時間をベストメンバーの1セットでまわしているという状況だ。しかもそのメンバーは、30代後半から40代の選手たちだ。このままではBプールでの競争にも黄色信号が灯ってしまう。それはすなわち、日本におけるこの競技の消滅の可能性をも示唆している。

「それだけは避けたい」とキャプテンの須藤悟(DF)。「アイススレッジホッケーは迫力があって本当に面白い競技。今から始めれば代表を狙えるし、3年後のピョンチャンパラリンピックに十分間に合う。自分にもできるんじゃないかと思った人は、ぜひ一度練習に参加してほしい」と呼びかけた。

■2日の試合結果

イタリア対ドイツの試合はヒートアップし、乱闘になる場面も

<7-8位決定戦>

チェコ 4-0-1=5
日本 0-0-1=1
(日本得点:①高橋、 A熊谷)

<5-6位決定戦>

ドイツ 0-1-1=2
イタリア 2-2-0=4

(取材・文/荒木美晴、写真/吉村もと)

※本記事はグローバルWiFi®を使用して配信しています。