ブラインドサッカーのチーム日本一を決める「第8回日本視覚障害者サッカー選手権 B1大会」が7月4、5日にアミノバイタルフィールド(東京都調布市)で開催され、全国から集まった11チームが熱戦を繰り広げた。3グループに分かれて総当りのリーグ戦を行った後、各リーグの上位2チームが決勝で激突。5日に行われた決勝では、前回王者のAvanzare(茨城県)が3-0でラッキーストライカーズ福岡を降し、連覇を飾った。
「やったー!」
決勝戦終了のホイッスルが鳴り、Avanzareの選手たちが拳を突き上げた。
優勝を喜ぶ輪の中心には、チームのエースであり、選手たちを指導する立場でもある田村友一(26歳)がいた。
チームを連覇に導いた友一は、ブラインドサッカー日本代表として世界で戦った経験を持つ、日本随一のストライカーだ。今大会でも、持ち前の華麗なドリブルと強烈なシュートを披露。観客を魅了し、ファン投票で選出される大会MVPに輝いた。
もうワンマンとは言わせない
激しく競り合うラッキーストライカーズ福岡の三原とAvanzare田村修也=決勝戦
各大会でゴールを量産してきた友一は、常に脚光を浴びてきた。自他ともに認めるワンマンプレーヤー。
友一は話す。「(サッカーを始めた6年前と比べて)日本のレベルが格段に上がった。ワンマンチームでは勝てない」。チームには、ふたりの弟という「頼もしい仲間」もいる。連携プレーを重視し、”全員で日本一”という目標を定めた。
そして、前回の選手権でAvanzareは全国制覇を成し遂げた。その彼らが次なる目標として掲げたのは、“失点ゼロ”の完全優勝。今大会、Avanzareは見事にそれをやってのけた。
日本一の部員数と若さを武器に連覇を達成
筑波技術大学を拠点に活動するAvanzareは、約50人もが所属する、ブラインドサッカー界きっての大所帯チーム。週1回、4時間ほどのチーム練習には、約40人が参加している。1軍をAvanzare、2軍をVivanzare(ヴィバンツァーレ)とする2チーム構成。サポーターの数も多く、日本一の部員数を誇る選手層の厚さ、そして若さで他チームを圧倒する。「若い選手が多いので身体の強さでは負けません。キープ力とディフェンスは日本一だと思います」と語る友一には、チーム作りへの手ごたえがあった。
攻守の連携プレーで勝利した決勝戦
決勝は、宿敵・たまハッサーズを撃破して波に乗るAvanzareと、Cリーグを1位通過したラッキーストライカーズ福岡の対戦となった。
観客席から多くのサポーターが見守るなか、序盤からゲームを支配したのは王者Avanzareだった。中盤で田村3兄弟の次男・竹晃が、強いプレッシャーをかけて相手の行く手を阻むと、前線では日本代表で活躍する落合がドリブルからシュートに持ち込み、相手ゴールを脅かす。だが、連戦の疲労のため、ゴールを揺らすことはできず、前半をそのまま0-0で折り返す。
試合が動いたのは後半開始早々。友一のシュートだった。キレのあるドリブルで自らゴール前に運んだボールをゴールネットに突き刺した。その鮮やかなプレーに、観客から感嘆のため息がもれた。
一方の福岡は、ストライカー森の素早い連続攻撃で攻めたが、Avanzare のGK安部の好守もあって得点を奪えなかった。試合後、「Avanzareのあたりが強く、特に前半は自分のプレーをさせてもらえなかった」と森。悔しさをにじませながらも「後半はシュートを打てた」と充実の表情を見せた。
その後も、Avanzareが得点を追加し、試合は3-0で終了。Avanzareの優勝が決まった。
フィジカルを強化した組織作り
「価値のある、完全優勝。楽しくサッカーをする、自分たちのスタイルを示せたことが一番よかった」。
試合後のインタビューで、MVPを獲った友一は声を弾ませた。
視覚障害者柔道でパラリンピックを目指していた。だが、出場権を得られず、ブラインドサッカーをはじめた。日本代表となり、国際大会で日本人初ゴールも決めた。俗にいうサッカーA代表と同様に決定力のない日本において、彼は貴重な点取り屋。他の選手よりも枠にとばすシュート力があるのは、練習のたまものであることはもちろん、柔道で鍛えた身体も無縁ではない。
「いまの日本ではストライカーが育っていない。(体格のいい)相手のディフェンスにやられて、シュートレンジに入ってもバランスを崩すことが多い」。だから、友一はフィジカルを重視している。
Avanzareのもうひとりのエースで日本代表の落合によれば、前年の大会で優勝した後、チームはフィジカルトレーニングに重きを置くようになった。今大会、攻守に渡って激しいサッカーを繰り広げたAvanzare。それは、友一が課したトレーニングの成果だったに違いない。
チームには、若い選手も入った。今はAvanzareでサッカーをするのが楽しい。
この冬、アミノバイタルフィールドではブラインドサッカーのアジア選手権が行われる。友一は、アジアの強豪たちの姿に何を思うのだろう。
大会の結果は、以下のとおり
優勝 Avanzare (茨城)
準優勝 ラッキーストライカーズ福岡
3位 たまハッサーズ (東京)
4位 T.Wings(埼玉)
5位 大阪ダイバンズ
6位 京都プリティウェル
7位 Vivanzare(茨城)
8位 ウォーリアーズ(千葉)
9位 U.Wings
10位 山梨キッカーズ
11位 兵庫サムライスターズ
個人賞
<MVP>
田村 友一(Avanzare)
<FC東京賞>
落合 啓士(Avanzare)
(取材・文:瀬長あすか、撮影:谷口豪)