アジア選手権第3日、予選リーグの最終日。
ここまで1勝1敗1分けの日本は、決勝戦進出をかけて韓国と対決。この日一試合目のイラン戦で引き分け、後のない日本だったが、サポーターの声援を味方にし、2-1で勝利した。この勝利で2位以内が確定した日本は、2010年に英国ヘレフォードで開催される世界選手権への切符を掴んだ。
エースの覚醒がチームを波に乗せる
決めるべき人が決めるとチームは波に乗る。前半5分、黒田智成がゴールを決めた瞬間、ピッチの選手、ベンチは喜びを爆発させた。
「トモ(黒田)の時代が来るってずっと言っていました。ようやく開眼したね」(風祭監督)
黒田は、攻守の要でチームの大黒柱。
ストライカーとしての活躍が期待されたが、初日、2日目、そしてこの日の第1試合まで不発だった。
「こんなものかな……」と自信を失いかけていた矢先の一発だった。
後半1分には右サイドから「狙いどおり」という鮮やかなゴールで2得点目。
日本は、終了前に、韓国に1点奪われたものの、2-1で強敵・韓国を退けた。
悔しさを糧に厳しい練習を積んだ
前回大会では、大会を通して一得点も挙げることができなかった。
「攻撃力がないと勝てない」と痛感。
前回大会で韓国戦に敗れ、パラリンピックに出場できなかった悔しさを胸に、昨年夏から攻撃を中心とした練習を積んできた。フィジカルを含めて「吐くほど」の厳しいトレーニングを重ね、得点への意識を上げた。
鍛錬の成果は、宿敵・韓国との大一番で現れた。
仲間が信頼を寄せる存在
黒田は代表チームの精神的支柱だ。ブラインドサッカーが日本で普及されたころから代表の中心選手としてチームをけん引してきた。何度も国際舞台を経験している。彼を師と仰ぐ選手もいる。
そんな黒田も、大会中は緊張で眠れなかった。
「みんな緊張している。でもトモは大丈夫じゃないかな。トモはここぞというときに強いから信頼している」ともうひとりのストライカー佐々木が話す。
チーム全体の空気が張り詰めるなか、黒田は他者に緊張や不安を感じさせてはいなかった。
頼れる存在、黒田の活躍。それは日本代表チーム全体の覚醒を意味している。
韓国に勝利した日本は、予選リーグを2位通過。20日に行われる決勝にコマを進めるとともに、世界選手権への出場権を獲得した。
▼試合結果
日本2-1韓国
*得点
黒田智成:前半5分
黒田智成:後半1分
Kim Kyng Ho :後半22分
(取材・文:瀬長あすか、写真:谷口豪)