スタンディングバレーボール — 2011/8/18 木曜日 at 11:38:47

スタンディングバレーボール世界大会レポート【カンボジア在住ライター・山口優さん寄稿】

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決勝戦のドイツ対カンボジア。会場には5000人の観客が来場し、熱戦を見守った=プノンペンのナショナルオリンピックスタジアムインドアホール

7月23日から29日の7日間、カンボジアの首都プノンペンのナショナルオリンピックスタジアムインドアホールにて、WOVD(世界障害者バレーボール機構)ワールドカップバレーが開催された。

WOVDワールドカップバレーは、上肢や下肢に障害を持つバレーボール選手によるスタンディングバレーボールの世界大会。競技力の向上とバレーボールの更なる発展を目的に、2年に一度開催されている。

5回目(2003年は不開催)となる今大会は、WOVDに加盟している16の国(日本は未加盟)から、カンボジア、ドイツ、カザフスタン、ラオス、スロバキア、スリランカの6ヶ国が参加した。

1チーム6人制、1セット25点の5セットマッチ、コートのサイズ(長辺18m、短辺9m)やネットの高さ(2.43m)など、ルールはFIVB(国際バレーボール連盟)ワールドカップと全く同じである。

王者・ドイツが大会3連覇

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見事に3連覇を達成し、優勝カップを手にして喜びを爆発させるドイツチーム

今大会を制したのは、2連覇中のドイツ。高さを生かした変幻自在な攻撃から繰り出す強烈なアタックと球際の強さで他国を圧倒した。

ゲルマン魂は健在だが、主力選手が軒並み30歳を超えているのがやや気になる。予選リーグ突破確定後のスリランカ戦には若手選手で挑み、2-3で敗れた。世代交代が今後の課題になるだろう。

地元カンボジアが史上初の準優勝

負傷退場する選手が続出しながらも、地元の大声援を受けて試合ごとに成長を遂げたカンボジアが準優勝に輝いた。大会を通して活躍したのが、右利きのNget Samboと左利きのSang Veasnaという2枚アタッカー。速い攻撃から得点を量産し、快挙達成に貢献した。

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快進撃を続け、準優勝に輝いたカンボジアチーム

一躍時の人となったカンボジア代表のChhaya Hang監督は、決勝戦敗退直後、目を真っ赤にしてこう語った。

「このまま成長していければ、2年後こそ世界一になれると思っている」

大会ベストブロッカーに輝いたOu Phallaを始め、主力選手のほとんどが20代前半の若いチーム。2年後に、史上初の優勝を達成する可能性は高い。

初出場組の明暗と古豪の衰退

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初出場とは思えない堂々とした戦いぶりをみせたスリランカチーム

初出場となったアジア3カ国は、はっきりと明暗が分かれた。見事、3位入賞を果たしたのがスリランカ。前回準優勝のスロバキアと地元カンボジアを相手に開幕2連敗スタートとなったが、その後怒涛の3連勝で準決勝進出を決めた。

大会ベストディフェンダーにも選ばれたAmarasinghe Maggonage Buddhikaを中心に、堅守ぶりを発揮。高さは無いものの最後まで諦めないプレーには、カンボジアの観衆からも大きな拍手が送られた。

ラオスとカザフスタンは、他4カ国を相手に1セットも取れないまま大会を後にした。
今後の強化と成長に期待したい。

また、これまで優勝1回、準優勝2回のスロバキアは4位に終わった。ドイツと並ぶ高さのあるチームではあったが、カンボジアのような速さのあるチームに翻弄されるシーンが目立った。ドイツ以上に、早急なる世代交代が必要だろう。

●最終順位

1位 ドイツ
2位 カンボジア
3位 スリランカ
4位 スロバキア
5位 カザフスタン
6位 ラオス

(取材・文/山口優、撮影(試合)・石川正頼)
text by Suguru Yamaguchi
photo by Masayori Ishikawa