車いすテニス — 2011/9/10 土曜日 at 9:19:32

【全米オープン】国枝がシングルス4度目の優勝に王手、ダブルスは昨年優勝ペアに惜敗

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初戦に続いて準決勝もストレート勝ちし、決勝へ駒を進めた国枝慎吾/撮影:吉村もと

米国・ニューヨークで行われているテニスの全米オープンは大会12日目を迎え、車いすの部はシングルス準決勝とダブルスの初戦が行われた。男子シングルスの4度目、3連覇がかかる国枝慎吾(ユニクロ)は世界ランキング7位のロナルド・ヴィンク(オランダ)と対戦。6-2、6-0のストレートで勝利し、決勝進出を決めた。また、ステファン・ウェルチ(アメリカ)と組んだダブルスでは、フルセットの末に昨年優勝のオランダペアに敗れた。

相手に的を絞らせないテニスで決勝進出

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勝利が決まった瞬間、ガッツポーズを作る国枝。決勝は強豪・ウデと対戦する

国枝のシングルス準決勝の対戦相手、ヴィンクは腕の長さを活かした力強いフォアを得意とする選手。序盤はその持ち味を発揮され、またダブルフォルトなど自身のミスも重なって、第1ゲームをいきなりブレークされた。第3ゲームが終わったあとは、故障した国枝の車いすの修理のため、約5分間にわたって中断。ハプニングに直面し、気持ちの切り替えが心配されたが、国枝は終始冷静だった。

「相手がいいプレーをしていましたが、我慢して粘り強くついていけば道が開けると思っていました。彼はけっこう淡白な性格なので、そこをうまくつけたかな」

相手の心理を巧みに分析し、第6ゲーム以降はネット際に先に出るなど攻撃的なテニスにシフト。決め球のバックハンドのダウン・ザ・ラインも高い精度で決め、相手に的を絞らせない緩急をつけたテニスで一気に突き放し、第1セットをものにした。

第2セットもヴィンクは強打で応戦。白熱したラリーが続くが、試合をコントロールしていたのは国枝だった。集中力を切らさず、粘りのプレーで相手のミスを誘い、勝利を引き寄せた。

最後はガッツポーズを作った国枝。試合後は「攻めるという昨日の反省点をプレーに活かせた」と話し、笑顔を見せた。シングルスの決勝の相手は、準決勝のもう一試合で第2シードのマイケル・シェファーズ(オランダ)を破ったステファン・ウデ(フランス)に決まった。昨年11月の世界マスターズで国枝の連勝記録を108で止めたウデ。強豪同士の対決に注目が集まる。

ダブルスは急造ペアで臨むも無念の敗戦

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タフな試合となった男子ダブルスの国枝・ウェルチ組

ダブルスはシングルス試合終了から約2時間半後に始まった。国枝はウェルチ(アメリカ)と組んで出場。ウェルチは1996年アトランタパラリンピックのダブルスの金メダリストで、今回はワイルドカードで出場している。対戦相手は、昨年のディフェンディングチャンピオンで、今年のウィンブルドンも制している強豪、ヴィンク・シェファーズ組(オランダ)だ。

「ウェルチはバックハンドが得意な選手。でもフォアハンドではスライスに偏ってしまう傾向にあるので、その中で攻撃力を上げるために、自分は意識してフォアハンドを打っていた」という国枝。第1セットを落としたものの、第2セットはコースを突いたショットで相手を動かし、フォーメーションを崩させるなどしてポイントをリード。このセットを6-1で奪い返し、ファイナルセットに持ち込んだ。

だがその勢いも最後までは続かなかった。終始、息のあったプレーで確実にポイントを重ねる相手ペアに対して、チャンスでショットを決められずにリズムを掴みきれない国枝ペア。総合力に勝る相手ペアに押し切られ、試合終了。ダブルスの決勝進出はならなかった。

国枝がウェルチとペアを組むことは、大会直前に急遽決まったことだった。もともとは、ロビン・アマラーン(オランダ)と組む予定だったが、先週のセントルイスの大会で肘を痛めた国枝が、全米でのシングルスへの影響と、棄権をした場合のアマラーンのポイントなどを考慮してペア解消を申し出たのだ。実は国枝は、一昨年、昨年と全米ではアマラーンと組んでいたが、いずれも国枝の故障で棄権している経緯があった。セントルイスに渡る前に「3年連続で棄権したら、ロビンに申し訳が立たない」と話していた国枝。厳しい選択を迫られたが、結果的に今大会のダブルスも無念の結末となってしまった。

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クアードの2戦目で快勝し、1勝1敗としたデビッド・ワグナー

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女子シングルスはオランダ勢が強さを見せている

【9日の結果】
●男子シングルス
国枝慎吾2-0【6-2、6-0】Ronald Vink(オランダ)
Stephane Houdet(フランス)2-0【6-4、6-0】Maikel Scheffers(オランダ)

●男子ダブルス
Maikel Scheffers・Ronald Vink(オランダ)2-1【6-4、1−6、6-2】国枝慎吾・Stephen Welch(アメリカ)
Robin Ammerlaan(オランダ)・Stefan Olsson(スウェーデン)0-2【3-6、3−6】Stephane Houdet・Nicolas Peifer(フランス)

●女子シングルス
Esther Vergeer(オランダ)2-0【6-2、6-3】Annick Sevenans(ベルギー)
Aniek van Koot(オランダ)2-0【6-3、6-2】Jiske Griffioen(オランダ)

●女子ダブルス
Sharon Walraven・Esther Vergeer(オランダ)2-0【6-2、7−5】Daniela Di Toro(オーストラリア)・Emmy Kaiser(アメリカ)
Marjolein Buis(オランダ)・Annick Sevenas(ベルギー)0-2【4-6、6-7】Jiske Griffioen・Aniek Van Koot(オランダ)

●クアード(※出場は4名、3ラウンド制)ROUND2
David Wagner(アメリカ)2-0【6-0、6-2】Nicholas Taylor(アメリカ)
Peter Norfolk(イギリス)2-0【7-5、6-2】Noam Gershony(イスラエル)

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試合後、対戦相手と健闘をたたえ合うピーター・ノーフォーク

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女子ダブルスで惜しくも敗れたバイス・セベナス組

(取材・文/荒木美晴、撮影/吉村もと)