【東京2020】男子車いすバスケ、史上初の銀メダル獲得!

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テレビやSNSでも注目された車いすバスケ。男子日本代表は世界の頂に迫る戦いぶりを見せた=有明アリーナ(撮影/佐山篤)

〈東京パラリンピック〉車いすバスケットボール/男子決勝/日本60―64アメリカ(9月5日、有明アリーナ)

車いすバスケットボール男子日本代表は、史上初の決勝の舞台で、リオ大会金メダルのアメリカと対決。60―64で惜しくも敗れたが、銀メダリストとしてパラリンピックの歴史に名を刻んだ。

一時はリードするも、最後は試合巧者のアメリカに屈す

第1クオーターは、5大会連続出場の藤本怜央(SUS)の3ポイントシュートで先制。その後8点を先取し、日本リードのまま終わるかに見えた終盤、アメリカに3連続失点を喫し、18―18と同点に追いつかれる。続く第2クオーターもアメリカは勢いに乗り、キャプテンのスティーブ・セリオを中心とした高い攻撃力で逆転されて、27―32で前半を折り返す。

迎えた第3クオーターは開始5分、香西宏昭(プロ車いすバスケットボールプレーヤー)のシュートで追いつき、鳥海連志(WOWOW)が決めて逆転。すぐにアメリカに返されるが、磨いてきた粘り強いディフェンスでアメリカに自由な攻撃をさせず、46―45と日本が1点リードで第4クオーターへ。

ティルティングで倒れ込みながらもシュートを決める鳥海連志

残り7分、古澤拓也(WOWOW)のシュートがリングに弾かれ、リバウンドを鳥海が倒れ込みながら決めた時点で56―51。日本が5点リードでこのまま逃げ切るかと思われたが、ギアを上げたアメリカが一気に巻き返しを図り、その後日本が追いかける展開となって、金メダルまであと一歩のところで4点差に屈した。

思っていたよりも近かったアメリカの背中

日本が初めて手にしたメダルの色は、限りなく金に近い銀だった。元Jリーガーで自身も車いすバスケでパラリンピックに4大会連続出場の経験を持つ京谷和幸ヘッドコーチが、リオ大会のあと打ち立てたのは「ディフェンスで世界に勝つこと」。それを実践するには1.5倍の運動量が求められるが、厳しい練習に耐え、メダルを獲得した選手たちを「誇らしい12人」と称え、アメリカとの決勝は「最後に決めきる力の差が出た」と振り返りつつも、強化したディフェンスは「大会を通して今日が一番よかった」と評価した。

リオから5年。「苦しい日しかなかった」と語る鳥海は、バスケをやめようと思ったこともあったという。それを乗り越えた先に見えた景色は、世界を見渡せる高みだった。

結果が出ずもがき続けた日本チームを牽引してきたキャプテン・豊島英(WOWOW)は「思っていたよりもアメリカの背中が近かった」と語り、銀メダルを手にして「この5年ではなく、今まで積み上げてきた歴史」だとして、「メダルを持ちかえれてうれしく思う」と人知れず抱えてきた重圧から解放され、涙した。

この試合18得点の香西も試合後に涙。それは負けた悔しさとともに、豊島や藤本など代表を引退する選手たちとバスケができなくなることに思いを巡らせたからに他ならない。東京大会でメダルを獲得するため、「願掛けで大好きなラーメンを断ってきた」という香西。5年ぶりに食べるラーメンは、きっと身体の隅々にまで沁みる格別の味に違いない。

<男子最終順位>
1位 アメリカ
2位 日本
3位 イギリス
4位 スペイン
5位 オーストラリア
6位 トルコ
7位 ドイツ
8位 カナダ
9位 イラン
10位 韓国
11位 コロンビア
12位 アルジェリア

<女子最終順位>
1位 オランダ
2位 中国
3位 アメリカ
4位 ドイツ
5位 カナダ
6位 日本
7位 イギリス
8位 スペイン
9位 オーストラリア
10位 アルジェリア

(取材・文/山本千尋、撮影/佐山篤)