8月29日(日本時間30日)、五輪と同じ会場のオリンピックスタジアムで、第14回夏季パラリンピックが幕を開けた。パラリンピックのルーツは、1948年にロンドン郊外の病院で行われた車椅子の入院患者によるアーチェリーの大会とされる。“パラリンピック発祥の地”で開催される今大会は、20競技503種目に、史上最多の164の国・地域から過去最多となる4,200人以上が参加。日本選手団は134人(男子89人、女子45人)が17競技に出場する。
4年に一度の障害者スポーツの祭典の開幕を告げる一機の飛行機が、雨上がりのオリンピックパーク上空の夜空を飛ぶ。「車椅子の物理学者」で知られる、スティーヴン・ホーキング(StephenHawking)博士がステージに登場したあと、英国を代表する劇作家・シェークスピアを題材にしたパフォーマンスなどが行われた。
今年は“100年に一度”と言われるほど雨が多いロンドン。今日の開会式でも、『傘』をモチーフにしたショーが行われ、車椅子のダンサーや義足のアスリートらが登場した。臨席したエリザベス女王がパラリンピックの開会を宣言すると、会場に華やかな花火が打ち上げられた。
聖火リレーの最終ランナーは、第一回のローマ大会(1960年)で英国にはじめての金メダルをもたらした、マーガレット・モーガン(Margaret Maughan)さん。五輪で各国が持ち寄った“花びら”聖火台がパラリンピックでも使用され、モーガンさんが点火するとひとつの大きな“聖花”となった。
入場行進で、日本は全盲のスイマー・木村敬一選手(日本大学)が旗手を務め、同じ水泳の山田拓朗選手(筑波大学)がガイド役となり、二人で先頭を歩いた。続いて、ウィルチェアーラグビーの田村学選手(信越化学工業株式会社)や車椅子バスケットボールの京谷和幸選手(株式会社インテリジェンス)、ボッチャの秋元妙美選手(CILちょうふ)ら選手・役員あわせて183人が、ほぼ満員のスタジアムの雰囲気をかみしめるように、観客席に向かって手を振りながらにこやかな表情でスタジアムを行進した。
旗手を務めた木村選手は「パラリンピックは2回目だが、今回は旗手として、さらにパラリンピックの意味や大きさを理解した上で参加したので、会場から伝わる熱気や声援に大変興奮した。この気持ちをそのまま競技につなげていきたい」とコメントした。
●地元・英国の人々も「パラリンピックが楽しみ」
ストラットフォード駅付近のパブには、仕事を終えたボランティアや地元の人たちが集まり、テレビで流れる開会式の中継に見入っていた。エリザベス女王の開会宣言の後、花火が打ち上げられると歓声がわき上がり、興奮して店の外に出て会場を見つめる人もたくさんいた。
イングランド東部のノーリッジから来たという20代の女性は、「英国の選手については詳しく知らないけれど、パラリンピックが発祥の国に戻ってきて嬉しい。オリンピック期間中、英国にいなかったのでパラリンピックを楽しみにしています」と笑顔で話していた。