「第23回日本デフ陸上競技選手権大会」が9月22日から2日間にわたり、滋賀県彦根市の平和堂HATOスタジアムで開催された。昨年の東京2025デフリンピック競技大会のメダリストらトップ選手も参加し、白熱したレースを繰り広げた。
男子100m決勝では、東京デフリンピック銅メダルの佐々木琢磨(EY新日本)が10秒80で優勝。同200mも21秒86で制し、見事2冠を達成した。一方、100m、200mともに海外招待選手のメレンシアーノ・クリストファー(ドミニカ)が世界デフ記録を樹立。佐々木は悔しさを感じるとともに、大きな刺激を受けたようす。次戦は10月の「アジア太平洋デフ・マルチスポーツ選手権大会(マレーシア)」を予定しており、「自己ベスト更新とメダル獲得を目指す。クリストファーもエントリーするそうなので、ちょっとでも追いつけるように、毎日の生活をきちんと整えて過ごしていきたい」と力を込めた。
同200mのみに出場した山田真樹(ぴあ)は3着でゴール。「結果を受け入れるしかない」と振り絞った。東京デフリンピックでは大会の「顔」のひとりとして注目され、200mで銀メダル、400mで金メダルを獲得する活躍を見せた。一方で、アスリートのけじめとして「引退」も頭によぎり、大会後は余韻を味わいながら過ごす日々だったという。
そんななか、この日、目の前で世界記録が生まれた。「ゆっくり寝ていたら『起きろ!』とクリストファーに布団をはがされた感じ。痺れた」と山田。各国でも先輩たちの活躍を見た若い選手が台頭してきており、「もしかしたら日本でも山田真樹と一緒に走りたいという気持ちを持ってくれる後輩がいるかもしれない。次の3年後のデフリンピック、そして7年後にその新しい選手にバトンの引継ぎができるように頑張っていくべきではないかと思った」と前を向いた。
同400mハードルでは、石本龍一朗(岡山大)が自身が持つ日本デフ記録を0.45秒更新する52秒85で優勝した。4月に続く記録更新となり、好調の要因として石本はスプリント力や筋力、スタミナの向上を挙げたほか、「一番は、チームメートの存在。岡山大ではみんなが目標に向けて団結して練習しているので、自分もステップアップできている」と、チームへの想いを明かした。
同800m決勝では、東京デフリンピック銀メダルの樋口光盛(SMDE)が2分00秒12で優勝。また、同ハンマー投では、遠山莉生(東京パワーテクノロジー)が59m03の大会新をマークし、優勝を果たした。
女子では、岡田海緒(MURC)が800mと1500mの2種目を制した。800mは2分18秒67の大会新記録を樹立。東京デフリンピックでは800mで6位、1500mで8位に入った岡田は、1年が経過した現在について、「いろいろな大会会場で『デフリンピック観たよ』と声をかけられたり、サインエールをしてくれる一般の大会も増えるなど、変化を感じている。ただ、理解・啓発という面ではまだまだなところがある。私たちも良いパフォーマンスを示すことで、課題解決につなげていきたい」と振り返った。
女子走幅跳では、上森日南子(太平電業)が5m23の大会新記録をマーク。生井澤彩瑛(仙台大)は同100m、200m、400mを制し、3冠を達成した。
(取材・文・写真/荒木美晴)
MA SPORTS 代表者、ライター