今年で24回目を迎える「日本障害者バドミントン選手権大会」が12月13日から2日間の日程で、名古屋市の稲永スポーツセンターで開催された。大会スローガンは、「放てスマッシュ その軌道に夢のせて!」。国内最高峰の大会で、全国から85名が参加した。車椅子、立位下肢、立位混合、知的障害の4つのカテゴリーでクラス分けして行われ、それぞれのコートで熱戦が繰り広げられた(シニアダブルスはオープン種目として実施)。
男子単・車椅子クラスは長島が通算11度目の優勝
実力者ぞろいの男子車椅子クラス。シングルス決勝では、昨年の覇者である長島理(名古屋スマッシュ)と一昨年のチャンピオンである山見誠治(TEAM SHUTTLE-ONE)の対戦に、熱い視線が注がれた。試合は序盤から両者譲らぬ白熱した展開に。ゲームカウント1-1として、迎えた第3ゲーム。ともに我慢の時間帯が続くが、長島が前後にゆさぶりをかける多彩なショットでじわじわとリードを広げ、最後は粘る山見を振り切った。長島は2連覇達成で通算11度目の優勝。山見と組んだダブルスも制しており、単複優勝を飾った。
会場を沸かせたふたりのファイナリスト、長島と山見。そんな彼らのような動きをしたい、と語ったのは、海外でも活躍した車椅子バスケットボールプレーヤー安直樹だ。今大会は、東京の王子かぼちゃクラブのメンバーとして出場した。シングルスでは白星を挙げられなかったものの、村山浩(千葉飛翔ウェーブ)と組んだダブルスでは3位に入った。この夏、ひとまずバスケから離れる選択をした。現在は、「バスケと同じくらい上を目指せるスポーツを模索中」とのこと。バドミントンを始めてまだ1ヶ月半だが、「楽しい。そして、ハマってます」と話し、先輩たちのプレーを目に焼き付けていた。
パラリンピック新種目! 2020年東京に向けたそれぞれの想い
今年10月、国際パラリンピック委員会(IPC)は、バドミントンを2020年東京パラリンピックで初めて採用することを決めた。これまでのところ、世界選手権とアジアパラ競技大会が2大大会となっており、選手は世界最高峰のパラリンピックの出場とメダル獲得という新たなモチベーションを手に入れることになる。
今大会、男子立位混合クラスで単複優勝を果たした正垣源(神戸風見鶏BC)は、「競技者として、目指すものができたのは大きい。それだけではなく、東京までの6年間、人生も豊かになると思う」と話してくれた。
また、女子立位混合クラスで同じく単複ともに制した大学4年生の豊田まみ子(TEAM SHUTTLE-ONE)も、東京パラの出場を最大の目標に据えているひとり。「まずはそれまでの世界大会にも出られるように努力し、一つひとつ課題をクリアして成長して、東京に挑戦したい」と未来を見つめている。
パラバドミントンは開催国での新種目だけに、国内でも注目度はどんどん上がっていくだろう。選手のやる気につながるのはもちろん、競技の認知度向上という面では、絶好のアピールの機会になるはずだ。
一方で、課題もある。競技人口は10年ほど前と比べると減少傾向にあり、現在は横ばいの状況だという。いかに新たな人材を確保・育成して、すそ野を広げるかが、競技発展のカギになりそうだ。
(取材・文/荒木美晴)
■各クラス優勝者は以下のとおり■
【男子】
<立位混合>
シングルス 正垣源(神戸風見鶏BC)
ダブルス 正垣源(神戸風見鶏BC)・小原宏平(札幌カッキンショッツ)
<立位下肢3>
シングルス 伊藤朝洸(仙台ホデナズ)
ダブルス 坂本勝之・三浦義樹(仙台ホデナズ)
<立位下肢2>
シングルス 末永敏明(TSAバドミントンクラブ)
ダブルス 末永敏明(TSAバドミントンクラブ)・藤原大輔(筑波大学)
<立位下肢1>
シングルス 古藤史人(札幌カッキンショッツ)
ダブルス 菅原秋男(TSAバドミントンクラブ)・古藤史人(札幌カッキンショッツ)
<車椅子統合>
シングルス 長島理(名古屋スマッシュ)
ダブルス 長島理(名古屋スマッシュ)・山見誠治(TEAM SHUTTLE-ONE)
<知的障害>
シングルス 高橋涼(仙台ホデナズ)
ダブルス 佐藤和義(宮城県個人)・川嵜裕太(福岡フレンズ)
【女子】
<立位混合>
シングルス 豊田まみ子(TEAM SHUTTLE-ONE)
ダブルス 豊田まみ子(TEAM SHUTTLE-ONE)・杉野明子(千葉飛翔ウェーブ)
<立位下肢統合>
シングルス 山口裕子(王子かぼちゃクラブ)
ダブルス 山口裕子(王子かぼちゃクラブ)・伊藤則子(名古屋スマッシュ)
<車椅子3>
シングルス 小倉理恵(埼玉県個人)
<車椅子2>
シングルス 島田緑(サンアビリティーズ城陽)
<車椅子混合>
ダブルス 小林悦子(TEAM SHUTTLE-ONE)・島田緑(サンアビリティーズ城陽)
<知的障害>
シングルス 大村悠佳(大阪シャトルコック)
ダブルス 門司明日香(福岡フレンズ)・大村悠佳(大阪シャトルコック)
<シニアダブルス>
坂本勝之(仙台ホデナズ)・山内加代(一般)