アジアパラ競技大会のケヤン体育館では、バドミントンの決勝トーナメントが行われている。パラバドミントンは、車椅子と立位のカテゴリーがあり、それぞれ障害の程度に合わせてクラス分けがされている。ルールはおおむね一般のバドミントンと同じだが、車椅子クラスのシングルスは半面で行われるなど、独自の競技規則がある。
今年10月、国際パラリンピック委員会(IPC)は、バドミントンを2020年東京パラリンピックで初めて採用することを決めた。選手や関係者にとっては大きな目標を得ることになり、今後のパラバドミントン界全体の盛り上がりが期待される。
バドミントンの人気が高いアジア勢が世界を席巻しており、現在のところ、このアジアパラ競技大会が世界で最もレベルの高い大会とされている。今大会、日本は昨年11月の世界選手権のシングルスで優勝した女子立位の豊田まみ子(筑紫女学園大)や、昨年のアジアユースパラに出場した藤野遼(福岡大付属若葉高)ら、男女あわせて20人の選手が参加。そのメダル獲得の行方に注目が集まった。
【外部リンク⇒】シャトルに夢を乗せて。アジアパラから始まる22歳の挑戦
http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/2014/10/22/22/
車椅子クラスの長島が銅メダルを獲得!
22日には、決勝トーナメントの準決勝などが行われ、車椅子(WH1)男子シングルスで長島理(LIXIL)が銅メダルを獲得した。
このクラスはとくに韓国勢の層が厚く、強敵ぞろい。長島も、この日の対戦相手である韓国のHOI Jung-Manには、過去3、4度対戦して一度も勝ったことがない。
試合は長島の先制で始まったが、Jung-Manのラインぎりぎりを狙うショットに手こずり、ペースが次第に崩れていった。第1ゲームを15-21で失い、逆襲を狙った第2ゲームも、相手にしぶとく拾われてリードを許し、14-21で敗れた。3位決定戦は行われないため、銅メダルとなった。
「ショットの正確性と前後の動きは圧倒的に向こうが上なので、こっちがミスしているようではその差を埋められない。そこが課題」と試合を振り返った長島。Jung-Manとは同じ34歳で、2006年から互いを刺激しあってきた仲だ。「今はまだ(実力が)離されているけど、彼が東京パラリンピックを目指すなら、そこまで追いつきたい。(東京パラという)大きな目標ができたので、時間をかけてがんばっていきたいですね」と前を向いた。
また、立位(SL3,4/SU5)ミックスダブルスで伊藤則子(中日新聞社)・正垣源(理化学研究所)組が、立位(SL3,4/SU5)女子ダブルスで伊藤則子・杉野明子(ヤフー)組も3位になり、銅メダルを手にした。
東京パラに向けた課題は、人材確保と育成
パラリンピックでバドミントンが実施種目として採用されることは、選手や関係者にとって大きな目標だった。日本障害者バドミントン協会顧問で、日本代表の坂本勝之監督は、「長年の夢が叶った」と喜びを表現した。その一方で、日本のパラバドミントン人口は横ばいで、平均年齢も上がっており、「人材の確保と育成は早急に取り組まなければいけない課題」と気を引き締める。
「バドミントンは、一般の人と障害を持つ人が一緒にチーム作りをして、練習や試合ができるスポーツ」(坂本監督)。長島も「車椅子で参加しやすい競技なので、周りを巻き込んでやっていきたい」と話す。
東京パラリンピックまで、あと6年。競技全体の底上げに向けたこれからの取り組みが注目される。
(取材・文/荒木美晴、撮影/吉村もと)