ブラインドサッカー — 2019/7/7 日曜日 at 23:13:51

埼玉T.Wingsが初V! MVPは6試合29得点の菊島宙!

by
7得点を挙げてチームの勝利に貢献した菊島を胴上げする埼玉T.Wingの仲間たち=アミノバイタルフィールド(撮影/植原義晴)

ブラインドサッカーのクラブ日本一を決める「第18回アクサ ブレイブカップブラインドサッカー日本選手権FINALラウンド」が7日、調布市のアミノバイタルフィールドで開催された。

決勝は、2年ぶり2度目の挑戦となる埼玉T.Wingsが、創設4年目にして初進出のfree bird mejirodaiを7-1で下し、初優勝を飾った。

先制したのはfree bird mejirodai。前半3分、日本代表強化指定選手に選ばれている園部優月がゴールスローから一気に切り込み、相手DFを軽やかにかわしてシュートを決めた。ところが、ここから埼玉T.Wingsが反撃する。

素早いドリブルからシュートを決めた菊島

前半8分と12分に女子日本代表でエースの菊島宙が2連続ゴールを決め、逆転に成功。後半、相手の菊島に対するプレッシャーはより厳しくなるが、菊島は「相手チームは全盲の選手ばかりで自分より耳がいいので普通では抜けない」と冷静に判断。混戦のなかでボールをいったん止めて音を消してから、再びドリブル突破をはかるなど、クレバーな動きを見せ、さらに5得点を追加。7-1と突き放した。

素早く正確なドリブルとボールへの嗅覚、相手ゴール前に攻め込むパワーが持ち味の菊島は、大会トータルで最多の29得点をマーク。大会MVPに輝き、「ずっと優勝を目指してきたので嬉しいです」と笑顔を見せた。

一方のfree bird mejirodaiは試合には敗れたものの、前半は組織的守備が機能し失点を最小限に抑えた。筑波大付属視覚特別支援学校の在校生と卒業生を中心に構成されたチームで、若手選手の活躍が目立った。

free bird mejirodaiは敗れたが、園部が先制点を挙げるなど、若手の攻撃力が光った

チームが初めて日本選手権に出場したのが2017年。山本夏幹監督によると、それからわずか2年で決勝の舞台を踏んだ背景には、大学等の協力を得て、走行距離や心拍数を図る科学的サポートを受けるようになったことで選手が身体をコントロールでき始めたのが大きい、とのこと。「僕たちにはさらにレベルを上げる力が残っていると思うので、こうして支えてくださる方々に『勝ち』で恩返ししていきたい」と語った。

また、決勝に先立ち行われた3位決定戦は、buen cambio yokohamaと兵庫サムライスターズが対戦。前半残り1分半で兵庫サムライスターズの行廣雄太がカウンターから相手ゴール前に切り込み、先制点を挙げる。後半5分と8分にはbuen cambio yokohamaの落合啓士の連続ゴールで逆転を許すが、兵庫サムライスターズは行廣が2得点を追加し、3-2で競り勝った。

3位決定戦でハットトリックを決めた兵庫サムライスターズの行廣

ハットトリックを決めた行廣は、「いつもなら逆転されると失速してしまうけれど、今日は『勝てる』と全員の心がひとつになった。達成感を感じている」と話す。また桝岡良啓監督は、「これまで5位の壁を越えられず、ベスト4に入ったのは初めて。その勢いで3位を獲れたということでチームの新しい歴史を作れたし、大きな自信になった」と充実した表情を見せた。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)