アメリカ・ニューヨークで行われているテニスの全米オープン・車いすの部が、現地時間の8日に始まった。男子シングルスの第1シードの国枝慎吾(ユニクロ)は、ニコラス・ペイファー(フランス)を6-2、6-1のストレートで破って勝利。序盤こそ動きに硬さが見えたものの、第2セット以降はサービスエースを決めるなどしてペースを掴み、準決勝進出を決めた。
肘の回復は「思った以上にうまくいっている」
早朝まで降り続いた雨が上がり、青空が広がった大会11日目。車いすテニスの部の試合が今日から始まり、7番コートの第3試合に登場した国枝が順当に勝ちあがった。
対戦相手のペイファーは20歳と若く、昨年のファイナリスト。このとき、残念ながら決勝を棄権したため国枝の不戦勝となったのだが、現世界ランキングは4位と若手ナンバーワンの実績を誇っている。
一方、国枝は先週、アメリカ・セントルイスで開催されたスーパーシリーズの大会で肘の違和感を覚えて、決勝戦を棄権。1週間と経たずに今大会に臨んでおりその調子が心配されたが、現地で集中的にケアを施し、「肘に痛みはなく、思っていた以上に回復している」とのこと。「恐怖感はまだあるけれど、(その気持ちは)1日ずつ減らして、最終日には完全に頭から肘のことは消え去ると思う」と話し、順調な回復をアピールした。
試合の序盤は、国枝が第1ゲームでペーファーのサービスをブレークした後はスピードに乗り切れず、逆にペイファーがショットを散らして積極的なテニスを展開。最終的には6-2と差がついたが、スコア以上にペイファーのリズムのよさが光った。
第2セットは、動きが戻ってきた国枝がポイントをリードする展開に。とくに中盤以降は持ち味の俊敏なチェアワークを活かした粘りのプレーで相手のミスを誘い、確実に差を広げていった。
初戦を勝利で終えた国枝はホッとした表情を見せ、「サービスゲームをスムーズにとれたのが、リターンゲームにつながった」と試合を分析。一方で「今日はディフェンシブなテニスだったので、もっと自分から打っていかないといけない。次はもう少し攻撃的にいきたい」と前を向いた。
実は、帯同を見送る予定だった丸山弘道コーチが急遽合流し、二人三脚で臨むことになった今大会。「何としても優勝で終わりたい」と話す国枝にとって、これ以上心強いサポートはない。心身の充実を図り、4度目の頂点を目指す。
シェファーズらも順当に勝利、クアードはワグナーに黒星
また、今シーズン好調の世界ランキング2位のマイケル・シェファーズ(オランダ)は、ロビン・アマラーン(オランダ)のコースを突いたショットに苦しんだが、フルセットの末に勝利。ワイルドカードのステファン・ウェルチ(アメリカ)をストレートで破ったステファン・ウデ(フランス)、ステファン・オルソン(スウェーデン)との接戦を制したロナルド・ヴィンク(オランダ)も準決勝進出を決めている。
女子の第1シードのエスター・バーガー(オランダ)も、同じオランダ人選手に危なげなく勝って初戦を突破。また、4名が出場し総当りの3ラウンド制を戦うクアードクラスは初日から大混戦。優勝を狙うピーター・ノーフォーク(イギリス)は、電動車いすを自在に操りプレーするニコラス・テイラー(アメリカ)に苦しみながらも勝利したが、昨年優勝のデビッド・ワグナー(アメリカ)がノーム・ガーシェニー(イスラエル)に3-6、1-6で敗れる波乱があった。
【8日の結果】
●男子シングルス
国枝慎吾2-0【6-2、6-1】Nicolas Peifer(フランス)
Robin Ammerlaan(オランダ)1-2【5-7、6-3、2-6】Maikel Scheffers(オランダ)
Stephane Houdet(フランス)2-0【6-1、6-1】Stephe Welch(アメリカ)
Stefan Olsson(スウェーデン)0-2【5-7、4-6】 Ronald Vink(オランダ)
●女子シングルス
Esther Vergeer(オランダ)2-0【6-1、6-0】Marjolein Buis(オランダ)
Emmy Kaiser(アメリカ)0-2【2-6、2-6】Jiske Griffioen(オランダ)
Daniela Di Toro(オーストラリア)0-2【3-6、3-6】Annick Sevenans(ベルギー)
Aniek van Koot(オランダ)2-0【7-5、6-1】Sharon Walraven(オランダ)
●クアード(※出場は4名、3ラウンド制)ROUND1
Peter Norfolk(イギリス)2-0【6-2、7-5】Nicholas Taylor(アメリカ)
David Wagner(アメリカ)0-2【3-6、1-6】Noam Gershony(イスラエル)
(取材・文/荒木美晴、撮影/吉村もと)