「皇后杯 第31回日本女子車いすバスケットボール選手権大会」が6日から2日間にわたり、グリーンアリーナ神戸で行われた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2年半ぶりの開催となった今大会。6チームが参加し、3チームずつに分かれて総当たり戦の予選リーグを実施。その結果、全勝のWing(関東ブロック)とカクテル(近畿ブロック)が決勝で激突し、カクテルが史上初の7連覇、通算11度目の優勝を果たした。
決勝 Wing 37-58 カクテル
2年半ぶりの皇后杯で、カクテルが女王チームらしい強さを見せつけた。6月のあじさい杯ではWingに敗れたが、決勝では試合開始直後からボールをキープすると4連続ゴールでスタートダッシュに成功。パスを正確につなぎ、インサイドからもアウトサイドからも攻め続け、第3クォーターは試合時間残り3分半まで相手の得点を許さないなど、主導権を握った。
カクテルは吉田絵里架らベテランと、網本麻里、北田千尋ら東京2020パラリンピック日本代表組に、高校1年の西村葵や中学2年の小島瑠莉ら若手選手が加わり、幅広い世代とキャリアの選手が集まった。次なるチーム目標に「10連覇」を掲げるカクテルは、さらなる進化を目指していく。
なお、大会MVPはカクテルの柳本あまねが初受賞。「2019年ごろからガードをやり始めて、時間をかけて練習してきた。上達したところを見せたかったし、今回はMVPが欲しいと思っていたので、嬉しい」と話し、充実した表情を見せていた。
3位決定戦 スクラッチ 59-39 九州ドルフィン
3位決定戦は、SCRATCH(東北ブロック)が九州ドルフィン(九州ブロック)を59-39で下した。序盤は一進一退の攻防が続くが、SCRATCHは次第にリズムを取り戻して16点のリードを保って前半を折り返すと、後半も連続得点で点差を広げて勝ち切った。
東京2020パラリンピック日本代表の土田真由美や萩野真世ら、経験豊富な選手が試合を組み立てるなか、新人選手の郡司渚名も奮起。6月のあじさい杯で九州ドルフィンと対戦した際は、高さのある江口侑里に動きを封じられたが、この日はゴール下で強化してきたティルティングに果敢にチャレンジし、チャンスへとつなげた。
昨年12月の競技体験を経て、今年3月の新人発掘事業でSCRATCHの橘香織ヘッドコーチに出会い、5月にチームに加入したばかり。これまでは音楽、とくにドラムに打ち込んできたという二分脊椎の郡司。「スポーツに興味がなかったけれど、今はコートで自由に走れるのがすごく楽しい。車いすバスケにハマっている」と話し、「今日はやりたいことができて、そして勝てたので良かった」と笑顔を見せた。
5・6位決定戦 ELFIN 20-43 パッション
5・6位決定戦は、パッションが相手の動きを封じ、最終クォーターの失点をワンゴールに抑えるなど試合をコントロールした。パッションは、ヘッドコーチ兼キャプテンを務める只信実鈴ら、健常者の選手も多く在籍するチーム。只信は「普段から車いすに乗っている選手と比べると、チェアスキルや細かい技術はまだまだ足りない」ため、日頃からチェアスキルを磨く練習を重ねているといい、この日も終始、キレのある動きでチームをまとめていた。
車いすバスケットボールのクラブチームは、健常者の登録が可能。只信は「ひとつのチームでプレーできるのは率直に嬉しい。障害者と健常者が共存できるスポーツとして、もっと発展してほしいと思う」と語った。
(取材・文・撮影/荒木美晴)