女子車いすバスケットボールのクラブ日本一を決める「皇后杯 第29回日本女子車いすバスケットボール選手権大会」が11月10日、グリーンアリーナ神戸で開幕した。今大会は、日本車いすバスケットボール連盟が皇后杯を下賜され、初めて優勝チームに授与される記念すべき大会だ。
2014年から4連覇中で、女王として君臨するのが近畿ブロック代表のカクテルだ。今大会も第1シードだが、今シーズンからスペインでプレーするエースの網本麻里(4.5)が不在で、エントリーは6人。しかも、初日は吉岡季海(4.5)を欠き、ギリギリの5人で戦った。車いすバスケットボールは選手一人ひとりに障がいの程度に応じて持ち点が定められており、試合中のコート上の5人の持ち点が14点以内とルールで決まっているが、この日のカクテルは「合計12点」。キャプテンの北田千尋(4.5)は「5連覇とか、決勝とか、それどころじゃなかった」と正直な胸の内を明かすが、信条のプレスディフェンスを貫き、1回戦を勝ち上がったBrilliant Catsを73-36で破って決勝進出を決めた。
「これで5連覇できたらすごく価値があると思っている。明日も自分たちのバスケを変えず、頑張りたい」と北田は力強く話す。
そのカクテルと決勝で戦うのは、昨年同様、東北ブロック代表のSCRATCHだ。この日はパッション、ELFINを下して決勝に駒を進めた。今年から、日本代表でも活躍する土田真由美(4.0)がチームに加入し、攻撃力が増した。カクテルの北田は「シューターが増え、破壊力が高まっている」と警戒する。
SCRATCHの藤井新悟HCも「カクテルの走力は、人数が少なくても、断然トップ。明日は強いチームに対して、自分たちのバスケをするだけ」と気合いを入れる。チームとしての練習機会は決して多くなく、平均すると月に1回程度だという。だが、藤井HCは「その分、代表と同じ強度をイメージし、質の高い練習を積んできた。男子の(同じ東北の)宮城MAXよりハードにやってきた」と言葉に力を込める。
キャプテンの萩野真世(1.5)も、「1年かけて連係プレーを確認し、ローポインターもリンクに向かってきた。決勝では、スピードとシュートの精度を上げて、しっかり勝ち切りたい」と話し、7年ぶりの頂点に自信をのぞかせていた。
11日は10時40分から3位決定戦、14時30分から決勝が行われる。
(取材・文/荒木美晴、写真/八木敏久)