陸上 — 2021/3/20 土曜日 at 22:18:19

東京パラ代表内定の大矢と兎澤がアジア新で優勝!

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男子100m(T52)で17秒19のアジア新記録を樹立する好パフォーマンスを見せた大矢勇気=駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場(撮影/植原義晴)

「第32回日本パラ陸上競技選手権大会」が3月20日、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で開幕した。

すでに東京パラの代表に内定している大矢勇気(ニッセイ・ニュークリエーション)は男子100m(T52)に出場し、17秒19で自身が持つアジア記録を0.05秒更新して優勝した。スタートダッシュからの先行逃げ切り型の大矢は、この日も序盤からリードを広げ、追いかける伊藤竜也(新日本工業)を突き放した。「練習より少し遅いタイムで悔しい」としつつも、「今の自分には伸びしろしかない。パラに向けては7割くらいまで来ているので、さらにひとつずつ積み重ねていきたい」と、言葉に力を込めた。

女子100m(T63)では、兎澤朋美(日体大)が16秒22をマークし、こちらも自身が持つアジア記録を塗り替えた。2017年に日体大進学後に本格的に陸上を始めると、翌年に走幅跳でアジア新記録を樹立するなど開花し、一気にトップ選手へと駆け上った。さらに翌19年の世界選手権の走幅跳で3位に入り、東京パラ代表に内定した。今月、大学を卒業し、4月からは富士通陸上部で競技する予定で、さらなる飛躍が期待される。両足義足の湯口英理菜(日体大)は女子100m(T61)に出場し、18秒95のアジア新記録で優勝した。

18年の冬季平昌パラリンピックのアルペンスキーメダリストで、車いす陸上で夏の東京パラ出場を目指す村岡桃佳(トヨタ自動車)は、女子100mと400m(T54)を制した。今月は9日からアルペンスキーのアジアカップ(長野県)に出場。その1週間後に今大会を迎えるというタイトなスケジュールだったが、「気持ちの切り替えは問題ない」と話し、前を向いていた。

隣のレーンの階戸と激しく競い合う南スーダンのクティヤン(右)

また、東京2020大会のために2019年11月からホストタウンの群馬県前橋市に滞在している南スーダンのクティヤン・マイケル・マチーク・ティンも特例で出場が認められ、男子100(T47)に出場。階戸健太(AC KITA)や日本記録保持者の多川知希(AC KITA)と競り合い、11秒42で優勝した。

注目の男子100m(T64)は、前回優勝の大島健吾(名古屋学院大)が11秒70で連覇を達成。怪我のため棄権した井谷俊介(SMBC日興)が持つアジア記録の更新を狙ったがわずかに届かず、悔しがった。これまで義足の地面の接地位置が後ろ側に沈んでいたが、新調して力を一直線に出せるように改良した。冬場の体幹トレーニングで走りは安定してきたといい、「新しい義足の良さを生かせる感覚をつかんでいきたい」と話し、高みを目指して突き進む。

東京パラ出場を争う世界ランキングで5位と出場内定が有力な石田駆(愛知学院大)は男子400m(T46)に出場し、50秒32の大会新記録で優勝した。昨年は怪我が重なり、得意の400mは16カ月ぶりのレースだといい、狙っていた49秒台は出せなかったものの「冬場のトレーニング成果は発揮できた」と振り返った。今後は試合のペースを増やし、今夏の大舞台に向けてさらなる記録更新を目指していく。

今大会はWPA(世界パラ陸上競技連盟)公認大会で、東京2020パラリンピック出場の選考対象となる。今大会で好記録を出すことで東京パラ出場に近づくとあって、約240人がエントリーしている。大会は21日まで行われる。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)