パラバドミントン — 2024/9/2 月曜日 at 8:33:53

【パリ2024】村山・梶原組が日本人ペア対決を制して銅メダル獲得

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男子ダブルス(WH1-WH2)の3位決定戦は日本人ペア対決となった=ポルト・ド・ラ・シャペルアリーナ(撮影/植原義晴)

パリ2024パラリンピックは1日、パラバドミントンの男子ダブルス(WH1-WH2)の3位決定戦が行われ、村山浩(SMBCグリーンサービス)・梶原大暉(ダイハツ工業)組が長島理(LIXIL)・松本卓巳(創成建設)組に19-21、21-12、21-15で競り勝ち、2大会連続で銅メダルを獲得した。両ペアは決勝での対戦を誓っていたが、村山・梶原組は中国に、長島・松本組は韓国に準決勝で敗れ、叶わなかった。「この素晴らしい環境のなかで日本の2ペアで戦えたことを誇りに思う」と村山。その言葉に深くうなずいていた梶原は、「金メダルが獲れず悔しい。ロスで中国ペアを倒せるよう、何倍も強くなっていきたい」と加えた。

一方、松本と長島はパラリンピック出場が決まってから組んだ“急造ペア”で、合宿などでも村山・梶原組に水を開けられていたという。だが、この3位決定戦では松本の正確なショットとカバーリングの広さでリズムを掴み、初めてゲームを奪取。その後は追いかける展開となったが、ベテランの長島が初出場の松本を鼓舞しながら最後まで戦い抜いた。

女子ダブルス(WH1-WH2)決勝は、東京大会を制した里見紗李奈・山崎悠麻(ともにNTT都市開発)組が尹夢璐・劉禹彤組(中国)に17-21、19-21で敗れ、2連覇はならなかった。相手は世界王者で里見・山崎の4連敗中。劉の多彩なショットと抜群の球回しで主導権を握られたが、日本ペアも攻撃的かつ粘りのプレーで1点を積み重ねた。ただ、結果はストレートで敗戦。ふたりは「東京大会以降、差がついてしまった。悔しい」と振り絞りつつも、「挑戦者のほうが私たちには合っているかも。追いかけるライバルがいて、恵まれているなと思う」と語った。

■シングルスは里見、梶原がライバル下して決勝進出!

大会2連覇に向け、大きく前進した里見

シングルスでは、女子WH1準決勝で東京パラ金メダリストの里見が尹に21-17、22-20で競り勝ち、決勝に進出。2連覇に王手をかけた。里見にとって尹は最大のライバルだ。今大会は予選リーグで一度、尹に敗れており、この準決勝でリベンジを果たした。1本のミスが命取りになるようなヒリヒリとした展開で進んだこの試合。第2ゲームは苦しい場面で里見のカット気味のドロップが決まり、リズムを引き寄せると、終盤に5連続得点で3点差をつけた。尹も攻撃的なプレーで粘りを見せ、先にゲームポイントを握られるが、里見が最後まで精度の高いショットを繰り出し、勝ち切った。

東京大会でも予選リーグで敗れた尹に準決勝でリベンジを果たして、頂点へと駆けあがった里見。金メダリストになってもたゆまぬ努力を続け、パリでも誇り高く戦い、次への道を切り拓いた。2日に行われる決勝では、東京大会と同じスジラット・ポッカム(タイ)と対戦する。同WH2の山崎は準決勝で劉にストレートで敗れ、3位決定戦に進む。

男子WH2準決勝は、東京大会を制した世界ランキング1位の梶原がライバルの金正俊(韓国)を21-17、21-9で下し、決勝に進出。女子の里見と同様に、パラリンピック2連覇に王手をかけた。同SL3準決勝は、藤原大輔(ダイハツ工業)が世界ランキング1位のクマル・ニテシュ(インド)にストレートで敗れ、最終日の3位決定戦にまわる。

■ケガ乗り越え初出場の豊田はベスト8も「すごく幸せ」

初出場のパラリンピックはベスト8の成績をおさめた豊田

女子SU5のシングルス準々決勝では、豊田まみ子(ヨネックス)がインドの選手にストレートで敗れた。2015年の世界選手権で初出場ながら優勝を果たしたのが、大学3年生のとき。それ以降、日本のパラバドミントン界の顔としてトップシーンで戦ってきた。アキレス腱の断裂など大きな怪我の影響などで、東京パラリンピックは出場を逃し、引退も頭をよぎったが、「いつか報われると信じて続けてきた」ことでパリ大会への切符を掴んだ。日本から応援に来てくれた家族には「苦しむ姿ではなく、楽しんでプレーしている姿を見せたかった」と豊田。その言葉のとおり、パリでは最後まで生き生きとシャトルを追い続けた。会場からは大きな声援が送られ、「すごく幸せなことですね」と、目に涙を浮かべながら、最後は笑顔を見せていた。

同SL4の準決勝では、藤野遼(GA technologies)が東京大会の金メダリスト、程和芳(中国)に9-21、13-21で敗れた。藤野が国際大会デビューをした2013年のアジアユースで初めて対戦したのが程だった。それ以降は互いにしのぎを削り、ライバルとして、また大切な友人として同じ時間を過ごしてきた。藤野は試合を振り返り、「一秒でも長く彼女とコートにいたかった。彼女は本当に強かったけれど、悔いのないように思い切ったプレーを心掛けて、何本かはいいラリーができた」と絞り出し、涙を流した。

男子WH1のシングルス準々決勝は、村山が韓国の選手に26-28、19-21で敗れた。第1ゲームの序盤から互いに譲らない拮抗した展開に。村山は相手のフォア奥に丁寧に攻め続けミスを誘い、5度にわたる相手のゲームポイントをしのぐが、押し切られた。第2ゲームもリードを許すたびに連続得点で追い上げ、粘りを見せる村山。しかし、最後は相手のスマッシュの返球をネットにかけ、試合終了。死力を尽くした大熱戦を見守った観客からは両者に大きな声援と拍手が送られると村山も顔を上げ、ライバルの勝利を称えた。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)