クロスカントリー — 2023/3/20 月曜日 at 20:20:07

川除、新田が表彰台、ウクライナ勢も存在感

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19日のスプリント1㎞クラシカル表彰台で笑顔を見せる新田佳浩、優勝したバル・パヴロ(ウクライナ)、3位のシン・ウィヒョン(韓国)(写真左から)=白旗山競技場

「CO・OP 2023FISパラ・ノルディックスキーアジアカップ札幌大会 ~ウクライナ特別招待・親善大会~」が、18日から北海道札幌市の白旗山競技場で行われている。今大会は、日本、韓国、モンゴル、カザフスタンの4カ国に加え、日本障害者スキー連盟が寄付金を活用して招待したウクライナが参加。各国の選手らは白熱したレースを繰り広げ、また交流も深め合っている。

初日の18日に行われた5㎞クラシカルは、立位、視覚、座位の3クラスが一緒に走るコンバインドで実施され、男子は立位の川除大輝(日本大/日立ソリューソンズJSC)が優勝を果たし、2位に新田佳浩(日立ソリューソンズ)が入った。女子は、出来島桃子(新発田市役所)が5位、岩本美歌(青森大学/北海道エネルギーパラスキーチーム)が6位に入賞した。

川除は「雪が解けてきて、ポールを持たずに走る自分のスタイルでは、平地が多いラストはハードだった。そのなかで最後のグラウンドで新田選手を引き離すことができた。(北京パラリンピックで金メダルを獲得した20キロクラシカルなど)長距離に加え、今季はスプリントでも力を出せるようになった」と振り返った。

スプリント1㎞クラシカルはグラウンド勝負の混戦となり、会場は大いに盛り上がった

また、19日のスプリント1㎞クラシカルは、男女、すべてのカテゴリーを統合したオールコンバインドで実施された。予選で上位12人が準決勝に進出し、決勝は上位6人で争う形式。その決勝は最後のグラウンド勝負となり、座位のバル・パヴロ(ウクライナ)がスピードを維持して優勝を果たした。2位以降はデッドヒートとなり、猛追する新田が川除を逆転してゴール。3位にはシン・ウィヒョン(韓国)が入り、川除は4位だった。女子選手は決勝に残れなかったものの、立位のリヤシェンコ・リュドミラ(ウクライナ)が7位に入る健闘を見せた。

活動を制限されているウクライナの選手が躍動

5㎞クラシカルの女子は、そのリヤシェンコ・リュドミラが優勝し、2位にコナシュク・ボヒュダナ、3位にブイ・イリナとウクライナの選手が表彰台を独占した。また、スプリント1㎞クラシカルを制したバル・パヴロは5㎞クラシカルでも3位に入るなど、存在感を見せている。初日のレース後に取材に応じた4選手は、「日本に招待してもらったこと、この大会に参加させてもらったことを心から感謝したい」と口をそろえた。

ロシアの侵攻を受けたウクライナの選手たちは現在、ポーランドとスロバキア国境に近い西部のスポーツ施設が活動拠点になっているという。リハビリ施設にもなっており、アスリートだけでなく、戦争で怪我した人や、障害を負った兵士もそこでリハビリを行っているそうだ。

生活も競技活動も制限され、厳しい環境下で練習を続けるウクライナの選手たち。北京パラリンピックで金メダルを獲得したグレゴリー・ボウチンスキーは、「いまも最前線で自分の命をかけて国を守っている兵士がいる。それと比べたら、我々がスキーでモチベーションを保つことはまったく難しくない」と語り、「早くこの戦争をとめたい。『戦うなら、スポーツで戦いましょう』と言いたい」と訴えた。

普段からボウチンスキーと連絡を取り合う仲でもある佐藤圭一は、同時期開催のオーストラリアでのトライアスロンレースではなく、今大会の出場を選んだといい、「ウクライナの選手を通して、スポーツできることが当たり前でないことを知っている。今大会は、とにかく彼らに楽しんでもらいたいし、一緒に平和をアピールしたいと思っている」と話した。

大会最終日の21日は、10㎞フリーが行われる。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)