スタッド・ローラン・ギャロスで行われた車いすテニス女子ダブルス決勝は、上地結衣(三井住友銀行)/田中愛美(長谷工コーポレーション)組が東京大会金メダルペアのディーデ・デ フロート/アニク・ファンクート組(オランダ)と対戦。大接戦の末に4-6、7-6(3)、10-8で上地・田中組が逆転勝利し、日本車いすテニス女子として初のパラリンピック金メダルを獲得した。
車いすテニス界は各クラスでオランダ勢が席巻する。その背景には、早い時期から国を挙げた選手の発掘・育成システムが確立されていることがある。とくに女子はシングルス、ダブルスともにパラリンピックでは負けなしだ。対戦相手のデ フロート/ファンクートペアも東京大会で金メダルを獲得している。そんな”最強”ペア、そしてオランダの牙城を日本がついに崩した。
第1セットは日本ペアが先にブレークに成功するが、相手は次第にリズムを掴み、日本ペアの間を抜く強烈なショットなどで主導権を握った。第2セットは3-3で迎えた第7ゲームでロングラリーが続くなか日本ペアが粘りを見せ、相手の4度のゲームポイントをしのいでブレークに成功。その後、ゲームを落としタイブレークに突入すると、上地・田中ペアは丁寧にポイントを重ね、取り切った。雌雄を決する10ポイントのスーパータイブレークに入り、やはりロングラリーが続いても、日本ペアは落ち着いてプレー。最後は田中が上げたボールを叩きにいったデ フロートのショットがアウトになり、3時間にわたる試合が決着した。
上地は「田中選手にボールが集まってしまう中で、少ない回数で自分がいかにポイントをかき乱せるか、相手のポジションをかき乱せるかっていうところをいつも意識している。今日はそのセンサーというか、判断力っていうのがすごく高かった。本当に田中選手、よく頑張ってくれたなと思う」とパートナーをねぎらい、日本の女子として初の金メダル獲得については、「メダルを獲れたことはもちろん嬉しいけれど、ああいった場面で、しかもオランダで一番強いディーダとアニクというペアに勝てた、その価値にすごく意味があるなあと思う」と語った。また、田中は「本当にただ一本一本に集中していた。試合中は上地さんが鼓舞してくれて、安心してプレーができた」と振り返り、笑顔を見せていた。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)