パラパワーリフティング — 2019/4/15 月曜日 at 15:37:53

東京パラへ前進、世界選手権代表メンバーが決定!

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男子59㎏級を制した光瀬智洋。すべての試技を成功させ、喜びを爆発させた=サンアビリティーズ城陽

パラ・パワーリフティングの世界選手権(7月、カザフスタン)の代表選考を兼ねた「第2回チャレンジカップ京都」が13日から2日間にわたって、京都府城陽市のサンアビリティーズ城陽で開催された。

世界選手権は2020東京パラリンピックに出場するために出場必須の大会。原則として、この世界選手権の代表に選ばれなければ、その時点で東京パラへの道は閉ざされることになる。その出場権獲得のラストチャンスとなるのが今大会。選手たちは熱い想いを胸に、試技に臨んだ。

【混戦の男子】

各階級の代表となれるのは、上位2名まで。混戦の男子59㎏級は、光瀬智洋がライバルたちとの駆け引きを制し、127㎏をマークして初の世界選手権行きの切符を手にした。2月の全日本で54㎏級に出場した際は、胸の止めが定まらず、失格を経験した。「その悔しさと、世界選手権に出たいという気持ちが今日の試技につながった」と光瀬。安堵の表情を見せつつ、「海外でも通用するテクニックを身につけたい」と、世界を見据えて気を引き締めていた。

「今回の一発勝負にかけた」と、男子65㎏級の佐野。力強い試技で日本記録を塗り替えた

男子65㎏級の優勝は佐野義貴(アクテリオンファーマシューティカルズジャパン)。昨年6月から痛めていた右肘を11月に再び痛め、全日本を回避していた佐野。「この大会にかけていた」と言うとおり、集中力が光る試技で見事に138.5㎏に成功。約3年半ぶりに日本記録も更新した。戸田雄也(北海道庁)は、主戦場の男子59㎏級ですでに標準記録を突破しており、今大会はこの男子65㎏級にエントリー。ここでも標準記録をクリアし、佐野とともに世界選手権代表に選ばれた。

トレーニングの一環としてベンチプレスを取り入れているアルペンスキー日本代表の森井大輝(トヨタ自動車)も、昨年に続きエントリー。シーズンを終えた直後で調整期間が短かったこともあり、記録は120㎏に留まったが、異なる競技への挑戦はアルペン競技にも好影響を与えているといい、「これからも両立を図りたい」と晴れ晴れとした表情で会場をあとにした。

男子97㎏級で標準記録を突破している馬島誠(日本オラクル)は今大会は107㎏級に出場。減量調整がうまくいかず、急きょ当日の階級変更となったが、自己ベストの165㎏を挙げて2階級の出場権を獲得。世界選手権は本来の男子97㎏級で出場する予定で、「まだ世界のレベルには足りていないが、出られない選手のためにもチャンスを活かしたい」と大舞台に向けて気合いを入れていた。

試技前のルーティンで、気合いを入れる男子107㎏級の中辻克仁

また、その107㎏級は“200キロリフター”中辻克仁(日鉄環境プラントソリューションズ)が力強い試技で200.5㎏に成功した。「200キロ」の壁を2月の全日本でついに破った中辻。それからわずか2カ月で、さらに記録を更新した背景には、ジョン・エイモスコーチの存在がある。エイモスコーチが組むメニューに取り組み始めてから、停滞気味だった記録が伸び始めた。エイモスコーチの選手に対するアプローチはさまざまだが、中辻の場合は試技の重量はエイモスコーチが決め、自身はその重量をあえて耳に入れずにベンチ台に乗るスタイル。経験豊富な中辻は、「私は目の前の重量を挙げるのみ」と全幅の信頼を寄せる。現在の世界ランクは7位。世界選手権でのさらなる記録更新に期待したい。また、107㎏超級の松崎泰治は153㎏でジュニアの日本新記録をマークした。

男子49㎏級の三浦浩(東京ビッグサイト)、男子80㎏級の宇城元(順天堂大)ら、パラリンピアンも抜群の安定感を見せた。男子54㎏級の西崎哲男(乃村工藝社)は第2試技で自身が持つ日本記録を1㎏更新する138㎏に成功。第3試技でさらに140㎏をマークすると、特別試技で142㎏に成功した。男子88㎏級のジャカルタアジアパラ競技大会銅メダリストの大堂秀樹(SMBC日興証券)は、197㎏の日本新記録を樹立。今季世界ランク3位相当の好記録で、世界選手権に向けて弾みをつけた。

【女子も3階級で日本新】

女子は41㎏級の成毛美和(APRESIA Systems)が第2試技で日本記録となる52.5㎏を挙げて標準記録を突破。さらにそこから重量をあげ、特別試技で55㎏に成功した。2月の全日本後にエイモスコーチのメニューに取り組み始めた。今春、転職して競技環境が整ったことも心と試技の安定につながっているといい、「これからの自分の力が楽しみ」と笑顔を見せていた。女子73㎏級の坂元智香(メディケアアライアンスあおぞら病院)は72㎏を、女子67㎏級のジュニアの森﨑可林は56㎏を挙げて、それぞれ日本記録を塗り替えた。

【世界選手権出場者】
大会後には7月の世界選手権の代表選手が発表された。各階級の出場者は以下のとおり。
<男子>
49㎏級 三浦浩、加藤尊士
54㎏級 西崎哲男、市川満典
59㎏級 光瀬智洋、奥山一輝
65㎏級 佐野義貴、戸田雄也
72㎏級 樋口健太郎、斉藤伸弘
80㎏級 宇城元、佐藤芳隆
88㎏級 大堂秀樹、石原正治
97㎏級 馬島誠、佐藤和人
107㎏級 中辻克仁
107㎏超級 松崎泰治

日本記録更新とともに世界選手権の派遣標準記録を突破し、笑顔を見せる成毛美和

<女子>
41㎏級 成毛美和
45㎏級 小林浩美
50㎏級 中嶋明子
55㎏級 マクドナルド山本恵理
67㎏級 森﨑可林
73㎏級 坂元智香

【東京2020パラリンピックへの道】

東京パラに出場するためには、IPCが指定する大会に出場していることが前提。IPC世界ランキングとは別に設けられた、「東京パラランキング」の結果が選考に使用される。対象の大会は、2017年の世界選手権メキシコ大会から始まり、2018年のアジアオセアニアオープン選手権(北九州)または地域選手権、今年7月の世界選手権カザフスタン大会などで、2020年4月のワールドカップドバイ大会までとなっている。

これら条件を満たした選手のうち、東京パラランキング男子は8位以内、女子は6位以内がダイレクトインで東京パラの出場が決定。同階級に同国の選手が複数出場することはできないため、8位以内に同じ国の選手がいる場合はより上位の選手が選考される。そのため、繰り上がりで9位以下の選手が選考される可能性もある。

東京パラでは各階級とも男子は10人、女子は8人が出場して順位を争う。男女それぞれ残り2人は、バイパルタイトによって各国から推薦のあった選手の中からIPCが選考する。国別の出場枠はない。

(取材・文・撮影/荒木美晴)