7月12日に開幕するパラ・パワーリフティングの「2019ヌルスルタン世界選手権(カザフスタン/12日はジュニア、13日からシニア)」に出場する日本代表選手の直前強化合宿が日本財団パラアリーナで行われ、その様子が3日、報道陣に公開された。
今回の世界選手権は、東京2020パラリンピック選考に出場必須の大会。今年4月に日本パラ・パワーリフティング連盟のヘッドコーチに就任した世界的指導者のジョン・エイモス氏が見守るなか、選手たちは最終調整に余念がなかった。
男子97㎏級の馬島誠(日本オラクル)は160㎏の日本記録保持者。世界選手権では自己新の165㎏、さらに170㎏を目標に掲げる。といっても、毎日やみくもに高重量を挙げる練習をすればいいというものではないという。この競技においては、適切なトレーニング強度で十分な筋肉の回復期間を設けることが重要となることから、エイモスコーチの練習メニューも目標重量より低く設定されるなど、「量より質」を徹底している。
「練習で挙げていないものが本番で挙がるのか? と思われるかもしれないし、身体的には十分こなせる練習量だから、自分もそういう不安はある。でも、ジョンのメニューに取り組み始めてから、記録は確実に伸びているし、うまくいっているんです。信じてやるのみです」と馬島は言い切り、全幅の信頼を寄せる。
馬島は冬季競技の出身。パラアイスホッケーでは日本代表として2010年バンクーバーパラリンピックに出場し、銀メダルを獲得しているメダリストだ。競技への恩返しの気持ちを含め、現役引退後もクラブチーム・長野サンダーバーズの代表を務めている。
そんな馬島が競技転向して4年が過ぎた。「パワーリフティングの“強さ”や“すごさ”ではなく、“美しさ”に惹かれた」と馬島。「重いものを挙げるというシンプルな競技だけど、自分の限界を突破するというところに魅力を感じている」と語る。
昨秋には転職。所属先には別競技のパラアスリートが入社しており、「全員と会ったわけではないけれど、みんな2020年を目指しており、大いに刺激を受けています」と話す。
男子97㎏級の世界記録は「242㎏」とケタ違い。今季は世界上位7人が200㎏以上に成功している。そうした猛者たちも出場する今回の世界選手権で、馬島はどこまでランキングを上げることができるか。果てなき限界への挑戦に注目したい。
(取材・文・撮影/荒木美晴)