パワーリフティング — 2016/6/28 火曜日 at 18:40:18

「1キロでも重く」リオ代表・西崎が日本新!

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陸上から転向して3年の西崎が自己ベストを1㎏上回る136㎏を挙げて優勝=小倉北体育館
陸上から転向して3年の西崎が自己ベストを1㎏上回る136㎏を挙げて優勝=小倉北体育館

下肢障がいの選手たちによる「2016年パラ・パワーリフティングジャパンカップ」が26日、福岡県北九州市の小倉北体育館で行われ、リオパラリンピック日本代表の大堂秀樹(コカ・コーライーストジャパン)、西崎哲男(乃村工藝社)が出場した。

試技前に集中する大堂
試技前に集中する大堂

大堂は肩を痛めていた影響で無理はせず、記録は180㎏に留まったが、スムーズで美しいフォームは健在。3度目のパラリンピックに向けて、調子を上げていく。好調の西崎は、第2試技で自己ベストを1㎏上回る136㎏を挙げ、日本記録を更新。3回目は138㎏に挑戦して失敗したが、「リオでは今より1㎏でもいい記録を出し、入賞を目指したい」と語り、本番に向けて気持ちを切り替えた。

パラリンピックでも人気が高いパワーリフティング

障がい者のパワーリフティングは、ベンチプレスに寝た状態で挙げたバーベルの重量を競い合う競技。男女とも体重別で実施される。障がいの種類や程度は関係なく、「上げれば勝ち」。バーベルをラックから外した状態で胸までおろして静止させ、再びバーベルを平行に押し上げる。一見するとシンプルだが、バーベルの「上げ下げ」や「止め」といった動作には厳密さが求められ、少しのブレも許されない。その緊張感の中で発揮される底知れぬパワーと精神力こそ見どころであり、パラリンピックではとても人気のある競技のひとつになっている。

男子65㎏級の佐野は自己ベストを3㎏更新する147㎏を挙げた
男子65㎏級の佐野は自己ベストを3㎏更新する147㎏を挙げた

体重の2倍以上の重さを持ち上げる筋肉をじっくりと作っていく。40代でも記録が伸びるのが特徴だ。西崎は39歳、大堂は41歳でリオに挑む。

今大会においては、男子72㎏級の佐野義貴(48歳・アクテリオンファーマシューティカルズジャパン)が第3試技で日本記録となる147㎏を挙げて優勝。また、80㎏級の斉藤伸弘(49歳・ワトム)が自己ベストを2㎏上回る148㎏を挙げ、107㎏級の中辻克仁(47歳・個人)は192㎏の日本新記録をマークした。65㎏級では、日本記録保持者である56歳の城隆志(オムロン太陽)、同い年の村井都稚夫(個人)も記録に挑戦している。

一方で、16歳の松崎泰治(107㎏級・個人)や19歳の奥山一輝(59㎏級・順天堂大)らジュニアの選手も参加しており、力自慢の先輩たちの後を追っている。

東京パラリンピック出場を目指す選手が増加

馬島は97㎏級で東京パラリンピック出場を目指す
馬島は97㎏級で東京パラリンピック出場を目指す

2020年東京パラリンピック開催決定を機に、パワーリフティングを始める選手も多い。西崎もその一人で、陸上から3年前に転向した。

また、10年冬季バンクーバーパラリンピックのアイススレッジホッケー日本代表で銀メダリストの馬島誠(97㎏級・個人)、同競技の2015-16シーズン日本代表の塩谷吉寛(72㎏級・個人)、女子アイススレッジホッケープレーヤーの山本恵理(55㎏級・日本財団パラリンピックサポートセンター)らが4年後を目指す。

また、北九州市は2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて各国と相互交流を図ることを目的とした「ホストタウン交流事業」においてタイがパートナーであることから、今大会はタイから3選手が出場した。2018年9月8日からは、北九州芸術劇場を会場に「IPCパワーリフティング・アジアオープン選手権大会」が開催される予定。IPCのパワーリフティングの国際大会が日本で開催されるのは初となる。

(取材・文/荒木美晴)