卓球 — 2025/9/12 金曜日 at 23:03:58

パラ卓球国際大会で七野、三浦らが優勝!

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盤石の強さでトーナメントを勝ち上がった七野=ひがしんアリーナ

国際卓球連盟(ITTF)主催のパラ卓球の国際大会「ITTF World Para Future Tokyo 2025」が10日から3日間にわたり、東京都墨田区のひがしんアリーナで開催された。AIN(個人の中立選手)と16の国・地域から134人がエントリー。各クラスに分かれて男女シングルスとダブルス、混合ダブルスで世界トップレベルの熱戦を繰り広げた。

【男子】統合クラスで強さを発揮した七野

男子シングルスの車いすクラス4-5は、七野一輝(オカムラ)が決勝でアスタン・アディオス(インドネシア)を3-0で下し、優勝を果たした。七野はグループリーグ全勝の勢いを維持し、決勝トーナメントでも頂点までのぼり詰めた。

今年度からのルール改正により、車いすクラス4と5がひとつのクラスに統合された。より障がいが重いクラス4は相手の力を利用したテクニカルなプレーをする選手が多く、クラス5の選手は腕のリーチがあり、パワーで押し切ることができるという特徴があり、戦い方が異なる。七野は今季、フィジカルトレーニングに取り組みながら積極的に国際大会にエントリーして実戦経験を積み、競技用車いすとラケットも新しくして、自身のプレースタイル確立を目指してきた。その中で迎えた今大会は序盤から優勢に試合を運び、終わってみれば全5試合で落としたゲームはわずかに「1」と、強さと存在感を発揮。今季7大会目にして初の優勝を飾り、「試合内容も良く、最後まで勝ち切れた。地元開催の大会で結果を残せてよかった」と振り返り、充実した表情を見せていた。

パラ卓球歴は2年ながら、上位に食い込む力を着実に実力を身に着けてきた四海

車いすクラス1は4人の総当たり戦が行われ、四海吏登(アンビションDXホールディングス)が1勝2敗として3位に入った。元プロウェイクボーダーで2021年6月にトランポリンを使った練習中に首から落ちて頚髄損傷となり、リハビリ中に知ったパラ卓球に惹かれ、2023年から競技をスタート。腹筋や背筋の感覚がなく、握力はゼロのため、ラケットと手をバンドで固定するなどの工夫を凝らしてプレーする。ウェイクボードで培った動体視力と空間認識能力に優れ、空中にあるボールがどこに落ちるかという瞬時の判断力が武器になる。目標はパラリンピックでの金メダル獲得。「ロス、その次のブリズベンも狙っていきたい」と力強く語った。

車いすクラス2は宇野正則(CTS)と松尾充浩(社ベリサーブ)が、車いすクラス3は北川雄一朗(相生市役所)がそれぞれ銅メダルを獲得した。

また、男子シングルスの立位クラス7は、八木克勝(電通デジタル)がファン・インチュン(韓国)をストレートで破り、優勝を果たした。サーブとブロックの技術に長ける相手に対し、持ち味のフットワークを活かしてフォアに回り込んで攻撃し続け、主導権を握った八木。「ミスしてもいいから、と強気で勝負に出たことが上手くいった。日本のお客さんの前で良い内容で勝てて、ほっとした」と振り返った。

立位クラス6の千原拓郎(個人)、立位クラス8の阿部隼万(キンライサー)と今泉大地(ラポール卓友会)、立位クラス9の岩渕幸洋(ベリサーブ)、立位クラス10の垣田斉明(サムティホールディングス)と松山順一(愛知ファイヤーズ)が銅メダルを獲得した。

【女子】高校生の三浦が存在感、友野も優勝

女子シングルスとダブルスで優勝、混合ダブルスで準優勝と結果を残した三浦

女子シングルス立位クラス9-10は、今年1月の健常の全日本大会にも出場した三浦稟々(クラーク記念国際高)が存在感を発揮。グループリーグを2位通過した三浦は準決勝で第1シードのインドの選手を破って決勝に進出。その決勝では、グループリーグで1-3で敗れたラヴィ・ベイビー・サハナ(インド)をフルゲームの末に下し、見事リベンジを果たした。

立位クラス8は、友野有理(タマディック)が決勝で藏下朝子(大分上野丘高)に3-0で勝利し、頂点に立った。パリ2024パラリンピックで5位だった友野。現在は世界ランキング2位につけているが、「実力があるのに大会に出てこない選手もいるし、他の人もこれからもっと上げてくると思うので、慌てずにやるだけ」と話し、前を向く。クラス8は卓球台から大きく下がってプレーする選手もおり、その対策としてパリ大会以降はロビングを強化してきたという友野。「大きな目標は、次のロス大会でメダルを獲得すること。そのために、今は目の前の一戦一戦に集中して臨んでいきたい」と、言葉に力を込めた。立位クラス7は角田セツ(藤沢レディース)が3位に入った。

車いすクラス4-5は、宮﨑恵菜(Mihotaku)が準決勝に進出。その準決勝では、パリ2024パラリンピック銅メダリストのムン・ソンへ(韓国)と対戦し、0-2から巻き返してフルゲームの戦いに持ち込んだが、惜しくも届かなかった。車いすクラス2-3は原田亜香里(東京身体障害者卓球連盟)と池山優花(シンプレクス・ホールディングス)が準決勝に進出し、3位となった。

【知的】国際大会初出場の馬渡がパラ金の和田を破る

女子シングルスのクラス11(知的障害)は日本から5人、韓国から2人がエントリー。決勝ではパリ2024パラリンピック金メダリストの和田なつき(内田洋行)と、国際大会初出場の23歳・馬渡伊吹(八戸卓球アカデミー)が対戦。第1ゲームは和田が奪うが、第2ゲーム以降は馬渡が連取し、3-1で馬渡が勝利した。試合後、馬渡とともに取材に応じた沼田勝コーチは、「彼女はサービスが上手く、3球目の攻撃が強いのが特徴。周囲の喧騒を気にせずに、自分がやることを淡々とやれる点が強み」と語り、「初めての国際大会で、本人もどんな感じなのか分からないなか優勝まで行けて、すごく頑張ったと思う」と、激闘を称えた。

男子のクラス11(知的障害)は、加藤耕也(あいおいニッセイ同和損保)が決勝に駒を進め、世界ランキング2位で第1シードのキム・ギテ(韓国)と対戦。2ゲームを連取されたあと、粘りのプレーで第3ゲームを奪うが届かず、1-3で敗れた。

【ダブルス】車いす男子は北川・中村組が優勝!

男子ダブルス車いす8で優勝を果たした北川(左)と中村

男子ダブルス車いす8の決勝は、七野/齊藤元希(プランテック)組と北川雄一朗(相生市役所)/中村亮太(日本オラクル)組の日本人ペア対決が実現。第1ゲームは北川・中村組が1-2から10連続得点で奪い、第2ゲームは七野・齊藤組に逆転を許すもポイントを取返してゲームカウントでリード。第3ゲームは9-9と接戦となるが、最後は北川・中村組がラリーを制してストレートで勝利。見事な優勝を飾った。

立位14-18は、決勝で岩渕幸洋(ベリサーブ)/阿部隼万(キンライサー)組が中国ペアに11-8、12-10、6-11、11-6で競り勝った。

女子ダブルス車いす10決勝は、宮﨑恵菜(Mihotaku)/ユン・ジユ(韓国)組が制した。また、立位14-20決勝は、藏下朝子(大分上野丘高)/三浦組が友野/リュー・シュー(中国)組をストレートで破って優勝を果たした。

混合ダブルス立位17-20は、垣田斉明(サムティホールディングス)/三浦組が準決勝でパリ2024大会代表の岩渕/友野組をフルゲームの末に破り、決勝に進出。その決勝では中国ペアに敗れ、銀メダルだった。

(取材・文・写真/荒木美晴、ダブルス写真/植原義晴)