障害者卓球における日本最高峰の大会である「第32回ジャパン・オープン肢体不自由者卓球選手権大会」が大阪市舞洲障害者スポーツセンターで開幕した。10日は個人戦が行われ、男子車椅子の部は岡紀彦が優勝。第8回大会から続く連勝記録を「25」に伸ばし、新たな金字塔を打ち立てた。女子車椅子の部は別所キミエ、男子立位の部は垣田斉明、女子立位の部は工藤恭子がそれぞれ制した。
試合後は、「初優勝したときと同じくらい嬉しい」
コートの上では滅多に感情を表に出さない岡が、最後のポイントが入った瞬間、ガッツポーズを作った。第2シードの宇津木孝章を破って勝ち上がってきた吉田信一をストレートで下し、前人未到の「V25」を達成。2002年に障害者卓球界初のプロ選手になってから掲げてきた目標のひとつ、「日本チャンピオンの座を死守」を今年も成し遂げた。
岡は大会の一週間前に原因不明の膝の痛みに襲われ、“棄権”の二文字が頭をよぎったという。サイドに球を振られると痛みで集中力が途切れるため、今大会は先にコースを支配することを心掛けた。準々決勝ではショットに勢いを欠き、慎重かつ粘り強いプレーを見せる中出将男に苦戦したものの、続く準決勝と決勝では相手のバックハンドに球を集めるなどして動きを封じ、勝負勘を取り戻した。
現在の世界ランキングは17位(※)。ロンドンパラリンピック出場の当確ラインである10位以内に届かず、正式発表はまだではあるが、4大会連続のパラリンピック出場は厳しい状況だ。
気になる今後について、試合後に岡はこうコメントした。「(ロンドンに向け転戦していた)国際大会は去年の後半になって良くなってきた。(プロ活動を支える)スポンサーも続けると言ってくれているし、世界のトップ10をめざして、現役を続けていきたい」
別所が藤原とのライバル対決を制す
女子車椅子の部の決勝は、別所キミエが昨年チャンピオンの藤原佐登子を破って頂点に立った。この数年は、交互に優勝を飾るライバル同士。互いに手の内を知り尽くす相手だけに、ストレートとはいえ、最後まで接戦となった。
優勝した別所は、「体勢が崩れないように気を付け、攻撃に緩急をつけることを心掛けた。ネットの際を狙ったショットが決まったのが良かったですね」と試合を振り返る。
ロンドンを見据えて海外転戦した今シーズンは、昨年6月のUS・オープンと11月の台湾・オープンで優勝するなど好調だ。現在の世界ランキングは6位(※)となっており、ロンドンパラリンピックの出場は、ほぼ確定とみられている。
北京大会では5位。そして、64歳で迎えるロンドンでは悲願のメダル獲得を狙う。「すべてのプレーの完成度を上げないと世界では勝てない」と話し、本番までにさらなる強化を図り、自分を追い込むつもりだ。
(※)2012年3月10日現在のランキング
(取材・文/荒木美晴)
◆個人戦各クラス優勝者◆
男子車椅子の部 岡紀彦
女子車椅子の部 別所キミエ
男子立位の部 垣田斉明
女子立位の部 工藤恭子
◆団体戦優勝チーム◆
車椅子(混成)の部 東京A(東京都)
男子立位の部 レスポアール(愛知県)
女子立位の部 九州障害者卓球連盟A(福岡・熊本)