「楽天オープン2019」の車いすの部は6日、男子シングルスの決勝が行われ、国枝慎吾(ユニクロ)がステファン・オルソン(スウェーデン)に6-0、6-2のストレートで下し、第1回大会のチャンピオンに輝いた。国枝はオルソンと組んだダブルスも制しており、単複二冠を達成した。
世界ランク2位の国枝と、同6位のオルソンのトップ選手による対決。朝から降り続く雨の影響で試合は2時間遅れでスタートした。
第1セット、国枝は自身のサービスゲームをキープすると、第2ゲームをいきなりブレーク。さらにサーブアンドボレーを仕掛けるなどしてリズムを掴み、リードを広げた。オルソンの深く、コーナーを突く強打も、国枝は抜群のラケットコントロールで返し、第2セットも優位に展開。最後まで集中力を維持し、オルソンを圧倒した。
オルソンは第1セット第5ゲームの0-15の場面で、プレー中に車いすの左側車輪のリムが破損するアクシデントに見舞われ、修理のために試合が中断。スペアを持参していなかったものの、タイヤサイズが同じ日常車の片輪と交換して対処し、最後までプレーを続行した。この日は序盤からサーブが乱れ、波に乗り切れなかったオルソンだったが、試合後は観客から拍手が送られ、笑顔で会場をあとにした。
試合後の記者会見で、国枝はオルソンのアクシデントにふれながらも、「常に相手にプレッシャーをかけることができていた」と自身のプレーを評価。車いすの部が初めて楽天オープンで開催され、大勢の観客が観戦したことについては、「大きな意味がある。多くの人に車いすテニスのハイレベルなプレーを観てもらいたいという気持ちだったし、それが達成できた満足感がある」と振り返った。
また、本戦で優勝を果たしたノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、4日の記者会見で今年から車いすテニスが同時開催となったことについて感想を聞かれ、「素晴らしいこと。彼らは真のヒーローだ。車いすのプレーヤーは自分たちの障害をアドバンテージに変えて、他の人たちを勇気づけている。私も競技用車いすに乗ったことがあるけれどとても難しく、漕ぐ手を火傷しそうになった。彼らのことをより一層リスペクトするようになったし、車いすテニス界が発展することを望んでいる」と語っていた。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)