大会終盤を迎え、ますます盛り上がる全豪オープンテニス。大会2週目の29日からは、車いすテニスの部がスタートする。日本からは男子世界ランク1位の国枝慎吾(ユニクロ)、女子世界ランク2位の上地結衣(三井住友銀行)が出場する。開幕直前の両選手の様子を交え、見どころを紹介する。
男子、女子、クアードの3カテゴリーを実施
2020シーズン最初のグランドスラムとなる全豪オープンテニス。車いすの部は男子、女子、クアード(上肢にも障害があるクラス)の3つのカテゴリーに分けられ、それぞれシングルスとダブルスが実施される。出場できるのは、男子と女子は世界ランキング上位7人とワイルドカード1枠の「8人」、クアードは世界ランキング上位3人とワイルドカード1枠の「4人」と限られた選手のみ。日本からは、前途の通り、男子の国枝と女子の上地がエントリーしている。クアード世界ランク5位で、昨年は全仏オープンとウィンブルドンを経験した菅野浩二(リクルートオフィスサービス)は、今大会は惜しくも出場はならなかった。
世界ランク1位に返り咲いた国枝「自信を持って臨みたい」
男子の国枝は、全豪オープンのシングルスでは2007年から2011年、2013年から2015年まで連続で大会を制し、2018年には9度目の優勝を果たしている。本人も「相性が良いサーフェス」と話しており、ダブルスでも8度頂点に立っている。
2016年の2度目の右ひじ手術以降は、じっくり時間をかけて、肘に負担がかからない打ち方を追求している国枝。強化の成果は結果として現れ、昨年はキャリア最多の53勝をマークし、9大会を制している。
その好調さは今年に入ってからも維持。スーパーシリーズの「ツイーズヘッズ車いすテニス選手権(オーストラリア)」では、決勝で22歳のアルフィー・ヒューウェット(イギリス)を6-4、6-0のストレートで撃破。その結果、約半年ぶりに世界ランキング1位に返り咲いた。ただ、「ランキングは気にしていない。今の男子は誰が勝ってもおかしくないから」と話すように、続くメルボルンオープン(同)では、準決勝でヨアキム・ジェラード(ベルギー)に敗れている。
男子の上位選手は実力伯仲で、まさに戦国時代の様相を呈している。35歳の国枝がそのなかでさらに成長する努力を怠らず、トップレベルを維持し続けていることが、ヒューウェットら若手選手の大きな刺激になっていることは間違いない。
「ライバルたちもすごく力をつけているけど、自分のテニスの内容もすごく良くなってきている」と言い切る国枝。「自信に変えて全豪に臨みたい」と、その言葉に実感がこもる。
今年2連勝の上地「全豪でも力を出し切りたい」
女子では世界ランク2位の上地が3大会ぶりの王座奪還を目指す。前哨戦となるオーストラリアでの2試合で優勝して現地入りした上地。「暑さとサーフェスに慣れておきたい」と、移動翌日の28日は2時間近く、千川理光コーチと練習に取り組んだ。
そんな上地の前にたちはだかるのが、世界ランク1位の23歳、ディーダ・デ グロート(オランダ)だ。全豪オープンは2連覇中で、昨年は全仏と全米も制し、ダブルスは4大会すべてで頂点に立つ年間グランドスラムを達成する強さを見せる。今大会は順調にいけば、上地はこのデ グロートと決勝で対戦することになる。
両者の対戦成績は、上地の14勝16敗。直近5大会では上地が敗れているが、緻密な戦略と精度の高いショットに磨きをかけており、現地の練習でも鋭い動きを見せていた。「今取り組んでいることを出し切ることが一番の目標。その結果として優勝で終われたらいい」と話す上地。今年の女王対決には、さらに注目が集まりそうだ。
なお、国枝、上地両選手は2018年のアジアパラ競技大会シングルスで優勝しており、すでに東京2020パラリンピックの出場権を獲得している。同じハードコートの東京パラの前哨戦ともいえるこの全豪オープンで、ふたりはどんな戦いをみせてくれるのか、楽しみだ。
※この記事は『パラスポ+』からの転載です
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)