フランスのローランギャロスで開催されている全仏オープンテニスは6日、車いすの部の男女シングルスの決勝が行われた。男子の国枝慎吾(ユニクロ)が第2シードのStephane HOUDET(フランス)に6-4、6-1で、女子の上地結衣(エイベックス・グループ・ホールディングス)がAniek VAN KOOT(オランダ)に7-6(7)、6-4でそれぞれ勝ち、優勝を果たした。また、上地はJordanne WHILEY(イギリス)と組んだ女子ダブルスの決勝も制し、単複二冠の快挙を成し遂げた。
ライバル倒し、国枝が4年ぶりのクレー王者に
国枝の決勝の相手は、第2シードで地元フランスのHOUDET。クレーコートを得意とし、2年連続決勝で国枝を破っているディフェンディングチャンピオンだ。第1セット、HOUDETは国枝の最初のサービスゲームでリターンエースを繰り出し、いきなりブレークに成功した。
だが、国枝もすぐにブレークバック。これまではクレーコート上での練習時間の少なさがネックだったが、今回は前日の準決勝で2時間半に渡る激闘を制し、「今日はクレーに順応できていた」。また、「HOUDETのヘビーなスピンにも、クレー用のテニスにも対応できた」と話すように、赤土のコートを縦横無尽に舞い、HOUDETを追い込んだ。
圧巻だったのは第2セットだ。第3ゲームをブレークされた以外は、完全にゲームをコントロール。要所でサービスエースを連続で決めると、相手のベースラインぎりぎりのコースに強烈なショットを打ち込む。とくに終盤の国枝は、観客をも圧倒する気迫に満ちたテニスを展開した。HOUDETも深い返球で粘りを見せるが、最後はそのショットがアウトになり、国枝の優勝が決まった。
「ウオーッ!」と2度、雄叫びを上げる国枝。見事というほかない“完勝”で、HOUDETにリベンジした。
「久しぶりに泣きそうになった。ロンドンパラリンピック以来ですね。それだけ、このクレーにかける思いが強かった」と喜びをかみしめた。
ブレないメンタルの強さを発揮! 上地がグランドスラム初制覇
その国枝の優勝をロッカールームのテレビで見ていたという上地。「自分も国枝さんに続きたい」と気持ちを奮い立たせ、決勝のコートに向かった。
相手のVAN KOOTは2012年ロンドンパラリンピックの銀メダリスト。安定したストロークが持ち味の強敵だ。第1セット序盤は上地がリードするも、第7ゲームでサーブが決まらずにリズムを崩して逆転を許す。だが、そこから互いをブレークし合う我慢の展開にも、上地は焦らなかった。「相手もミスが多いので、タイブレークに持ち込めば勝つ自信があった」と後に振り返ったように、粘りのプレーでタイブレークを制した。
その勢いのまま、第2セットも優勢に進める上地に対して、VAN KOOTは感情的になる場面も。最後は上地の切れのあるサーブがVAN KOOTのリターンミスを誘い、試合を決めた。喜びの涙をこぼした新チャンピオンに、観客からは温かい拍手が送られた。試合後のインタビューでは声を詰まらせながらも、「嬉しいです」と喜びをかみしめた。
上地が初めての単複二冠!
上地はイギリスのWHILEYと組んだダブルスでも決勝に進出。シングルスの後に行われた試合では、ロンドンパラリンピック銀メダルのVAN KOOT・Jiske GRIFFIOEN(ともにオランダ)組に7-6(3)、3-6、1-0(8)で勝利。実力も実績もある格上のペアに競り勝ち、見事に単複二冠を達成した。
【外部リンク→】全仏優勝の上地結衣。途絶えかけたテニス人生
http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/otherballgame/2014/06/07/post_294/
※女子シングルス決勝の詳細レポートと、上地選手のロンドン以降の決意と成長について書きました
(取材・文/荒木美晴、撮影/吉村もと)