「第33回飯塚国際車いすテニス大会(ジャパンオープン)」は20日、クアード(3肢以上に障がいがあるクラス)の決勝が行われ、ディラン・アルコット(オーストラリア)がデビッド・ワグナー(アメリカ)に6-4、3-6、6-3で勝利。大会3連覇を達成した。
世界ランク1位のアルコットと同2位のワグナーの対決は、これで31戦目。互いに手の内を知り尽くした試合はフルセットにもつれ込んだ。球筋を読み、丁寧なラケットワークで正確なショットを繰り出すワグナー。対するアルコットは、左右に伸ばせば1m95㎝ある長い手から繰り出す威力あるショットでコースを突く。序盤はリズムを崩したアルコットだが、次第に集中力を高め、第3セットは逆転でものにした。「ワグナーはとても素晴らしい選手。接戦で勝ててよかった」と笑顔を見せた。
アルコットは2016年の全豪オープンからシングルスでは負けなしで、今日の勝利で43連勝とした。実はアルコットは、北京とロンドンパラリンピックでは車椅子バスケットボールのオーストラリア代表として金メダルと銀メダルをひとつずつ獲得している。そこで培ったチェアワークは車いすテニスでも活かされ、昨年のリオパラリンピックではクアードで単複とも金メダルを手にしている。2020年東京パラリンピックの出場にも意欲を見せる26歳。さらなる活躍に注目が集まる。
同じく決勝が行われた男子ダブルスは、ステファン・ウデ/ニコラス・ぺイファー組(フランス)が、ゴードン・リード/アルフィー・ヒューイット組(イギリス)を7-6、6-3で下し優勝した。また、クアードのダブルスはディラン・アルコット/ヒース・ダビッドソン組(オーストラリア)が制した。
女子の上地結衣(エイベックス)はシングルス準決勝でサコーン・カンタシット(タイ)を6-2、6-3で下し、決勝進出を決めた。2010年の初対戦から2連敗中だった2014年の仁川アジアパラ競技大会では準決勝でカンタシットに敗れ、この大会の優勝者に与えられるリオパラリンピック出場権を逃した。その”アジアの壁”に雪辱を果たしたのが、昨年の世界国別選手権で、カンタシットから初勝利を挙げている。今回はそれ以来の対戦となり、警戒心から「試合に入る前から、何も始まっていないのに少し焦ってしまった」と上地。それでもしっかりと2セットで試合を決めたのは、さすがあらゆる困難を乗り越えてきた世界ランキング2位の実力といえるだろう。
決勝では、成長著しい20歳のディード・デ・グルート(オランダ)と対戦する。「(左利きだった)今日の相手とは違う戦い方になる。どれだけ自分がコントロールできるかにかかっていると思う」。また上地は、マリヨレン・バウス(オランダ)と組んだダブルスも優勝しており、単複2冠をめざす。
(取材・文・撮影/荒木美晴)