パラアイスホッケー — 2021/4/11 日曜日 at 22:39:56

「北京で世界中を感動させる」日本代表候補が決意新たに始動

by
3日間の充実した強化合宿を終え、集合写真におさまる選手たち。ここから北京パラに向けてギアを上げていく=FLAT HACHINOHE

日本パラアイスホッケー協会は9日から3日間にわたり、今季の第1次強化合宿を青森県八戸市のFLAT HACHINOHEで実施した。協会の強化指定選手と次世代育成選手の27人、日本スポーツ協会によるアスリート発掘事業「ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト(J-STARプロジェクト)」4期生2人の計29人が参加。氷上練習に加え、陸上トレーニングもメニューに組み込み、汗を流した。

北京パラリンピック出場を目指す日本代表候補が、充実した内容で新シーズンのスタートを切った。昨季は新型コロナウイルスの影響で強化合宿の参加を見送らざるを得なかった選手もいたが、今回の合宿は若手からベテランまでフルメンバーがそろった。複数のセットを組んで練習ドリルに集中的に臨めることもあり、リンクは終始、活気に満ちていた。

注目したのは、力を入れていたゲーム形式の練習だ。ゾーンを使ったリンク半面ほどの狭いスペースで行うミニゲームは、展開がはやく攻撃チャンスが増えるが、同時に体勢を整える時間も短くなるためピンチの場面も増す。そこでどう踏ん張るか、繰り返し取り組むことで状況判断力を養った。また、リンク全面を使った真剣勝負の紅白戦にも時間をかけ、戦術理解と試合勘を磨いた。

信田憲司監督は、「最近は“勝利に対してのこだわり”を持つことを求めています。危機感を持って“勝つためにはどうするのか”を意識し、ゲーム形式の練習時間を必ず設けています。海外の選手は試合時間が残り5分で4点差で負けていても、そこから1点でも2点でも取って勝つチャンスを自分たちでつかみに来る。ビハインドの状況から巻き返すために何をするか、勝っているチーム、負けているチームはそれぞれ何をしなきゃいけないのか、そういう話を選手にしていますし、結構響いていると感じています」と話す。

新人選手も強化の成果でスピード感が増している。正橋(左)と森が激しくぶつかり合いながらパックを追う

今回、参加したメンバーの年齢は、14~56歳と幅広い。年齢やキャリアに関係なく、プレーが止まるたびに選手間で積極的にコミュニケーションを図っていたのが印象的だ。また、コーチ陣からのアドバイスを待つ受け身の姿勢ではなく、選手発信のコメントも増えだしたという。急成長中の新津和良(長野サンダーバーズ)や次世代育成の中村俊介(東京アイスバーンズ)ら、クラブチームの練習以外の時間にアイスリンクを借りて個人練習に取り組むなどしてレベルアップを図る選手も多く、互いに刺激を与えあっている状況だ。

競技を始めて1年半の正橋幸夫(東海アイスアークス)は、「同じような時期に始めた仲間たちも、2週間見ないうちに成長していると感じることがある。負けたくないです」と話し、前を向く。

今季もキャプテンを務める児玉直(東京アイスバーンズ)は、「日本チームとしてはボトムアップと、ベテラン勢がさらに伸びることの両方が求められているところ。平昌パラの時は第1セットのアイスタイムがすごく長かったけれど、今は交代できる要員がいるのはかなり大きい変化。チーム内の競争に期待したい」と話してくれた。

戦術や動きの理解を再度確認するため、信田監督がプレーを止めて指導する

チームビジョンは「北京で世界中を感動させる」。信田監督は「氷上でも、私生活でも、『こいつら、すごいな』『応援したいな』と思ってもらえるようなチームづくりを目指しています。今はベテランと若手がうまく混ざり合い、すごくいいチームになりつつある。世界選手権、最終予選に向けてさらに強化を重ね、勝負していきたい」と、言葉に力を込める。

選手・スタッフが一体となって高みを目指す、信田ジャパンの勝負の一年に注目したい。

なお、協会によると今季は北京パラリンピックまでに16回の強化合宿を実施する予定。また、今夏には昨年1月のイタリア遠征以来となる海外勢との交流戦を予定しているという。その先に見据えるのは、北京パラ出場への第一関門となる世界選手権Bプール(今秋開催予定・開催地未定)での勝利だ。Bプールは日本、中国を含む5または6チームが出場し、上位3チームが最終予選に駒を進める。その最終予選では、世界選手権Aプールの下位チームと戦い、2位以上になれば確実に北京パラリンピック出場権を獲得できる(開催国の中国の順位等によって、枠の数が変動する可能性がある)。

(取材・文・撮影/荒木美晴)