5月22日から京都府城陽市のサンアビリティーズ城陽でパラパワーリフティングの合宿が行われている。今回は、パラパワーリフティングの世界的指導者であるジョン・エイモス氏(イギリス)を招き、座学と実践指導を実施。23日にはその様子が報道陣に公開された。エイモス氏によるトレーニングコースは年に4回開催予定で、今回は2回目(大分・京都開催)となる。
エイモス氏は元選手で、現役引退後はイギリスのパラパワーリフティングナショナルチームのコーチとして選手を育成。その豊富な知識と手腕で2000年シドニーパラリンピックではイギリス初の金メダリストを輩出した。2007年に国際パラリンピック委員会(IPC)の世界最優秀コーチ賞を受賞するなど、「指導のプロフェッショナル」として活躍中で、世界各地でコーチングセミナーなどを開き、競技力向上に尽力している。
23日の座学では、栄養士による栄養指導のほか、練習時や試合に対するメンタルの上げ方などをテーマに、身体と心を一体化させる重要性についてエイモス氏が説き、選手らはメモを取るなど熱心に聞き入っていた。また、エイモス氏は選手一人ひとりのトレーニングメニューを作成しており、実践ではその進捗状況などを確認。選手と積極的に言葉を交わしていた。
パワーリフティングは個人競技であり、実はチームスポーツである、とよく言われる。F1のように、サポートする仲間の存在があって初めて試合に臨めるからだ。とくにパラパワーリフティングは片脚切断や機能障がいなど、障がいに応じてフォームが異なるため、より選手の感覚を理解したうえでのチームづくりが必要になるという。そういう意味でも、「今回の合宿はコーチのためでもある」とエイモス氏は語る。
「私が指導をするうえで最も大切にしているのは、選手に強制しないこと。私の意見で押すより、引っ張りあげることに注意しています。それで選手が選択していけばいい」とエイモス氏。
競技を始めて1年の女子55㎏級の山本恵理(日本財団パラリンピックサポートセンター)は、「まだ競技歴が浅いこともあり、“こうしよう”とつい頭で考えてしまう。ジョンにはそれが分かっていて、“心と身体が一致していないよ”と言われました。選手の内面も本当によく見てくれていると思います」と話す。
男子97㎏級の馬島誠(EY税理士法人)は、「これまで毎日ジムで練習をしていましたが、エイモスコーチがメニューを組んでくれて、7月のジャパンカップに向け今のトレーニング量は週に3回です。身体的には十分こなせるメニューですが、逆に気持ちの部分で鍛えられると感じます」。リオパラリンピック男子54㎏級日本代表の西崎哲男(乃村工藝社)も「トレーニングは量より質ということ。練習量が減ると不安も感じるけれど、ケガをしない練習の大切さを学んだし、彼は選手の力を引き上げてくれると思う」とコメントする。
日本パラ・パワーリフティング連盟の吉田進理事長は、「エイモス氏は自身も選手でしたし、パラパワーリフティングに精通しているので、話に説得力があります。これからも長く指導してもらえるよう、体制を整えていきたい」と話している。
(取材・文・撮影/荒木美晴)