ロンドン2012 — 2012/9/11 火曜日 at 20:51:39

【番外編】 パラリンピックを沸かせたスプリンターたち

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2012年のスポーツ界の顔となった南アフリカのブレードランナー、オスカー・ピストリウス選手(撮影/吉村もと)

■リチャード・ホワイトヘッド(イギリス)

はじめに紹介する選手はイギリスのリチャード・ホワイトヘッド、36歳。

色んなスポーツで才能を発揮するホワイトヘッド選手(イギリス)

9月1日の陸上男子200メートルと7日の100メートル(T42クラス)に出場した。彼は陸上の他に、水泳、アイススレッジホッケー、クリケットの選手でもあり、万能型の選手としてイギリス人にも人気が高い。それを裏付けるように、パラリンピック前には新聞の一面を使ってボディペイントを施したターミネーターのような姿も掲載された。シカゴマラソンでは2:42:51と両足切断者として世界初の3時間を切った最速の記録保持者だ。

背の高い彼は、その長い足を活かした後半からの追い上げが得意。役者ぞろいの男子100メートルでは、オスカー・ピストリウスらと走った。結果は振るわなかったものの、50メートル以降の加速は見事なものだった。

得意の200メートルは世界記録を更新。試合後のコメントでは、「僕にとって2度目の世界記録更新だけど、前回は2000人の観客の前だった。今日は80000人だからね」と興奮気味に話した。

誰よりも先にゴールラインを越えた彼は、カメラの前でボディビルダーのように筋肉を誇示するポーズをとった。

「僕はチームGBにメッセージを送りたかった。全ての観客は僕達の見方だよってことと、僕がどんな選手でどんなパラリンピック選手かを見てほしかった。チームGB――、全イギリス国民と僕の友達や家族に向けてメッセージを送りたかったんだよ」

■ジェイソン・スミス(アイルランド)

100メートル T13(視覚障害)で、地球上で最も早い男と称されるジェイソン・スミス、25歳。100メートルで10秒46、200メートルで21秒05と断トツの1位で自身の持つ世界記録を塗り替えた。

スミスにつられるのか、他の選手も100メートルでは4人、200メートルでは5人、それぞれのシーズンベストやパラリンピックレコードなどを更新した。

満場を沸かせたスミスは、しかし試合後のコメントでオスカー・ピストリウスの待遇について、「オスカーだけがパラリンピックの顔ではない」と不満をあらわにした。

「たしかに彼は素晴らしい選手だ。そして僕らはパラリンピックとオリンピックの間の溝を小さくし、橋渡ししようとしている。でもそれは一人でできることじゃない。たくさんの選手の力によって流れがかわっていく。オスカーほどの有名人の存在はたしかにパラリンピックを広めるのにとても貢献していると思う。でも、彼にしか焦点があたらないのは(オスカーの言葉を使って)、公平じゃない」

年が近く、しかもパラリンピックの全障害クラスの中で最速記録をもつスミスは、やはりパラリンピックとオリンピックの両方同年出場を目指している。その選考基準にも不満をあらわした。

「僕は11年5月に行われたフロリダの大会で100メートルを10秒22で走った。ちゃんと記録も残っている。でもその大会がパラリンピック委員会の公認大会じゃないってだけで、その数字はパラリンピックの公式記録として取り扱ってもらえないんだ。紙の上で行われているわけじゃない。色々な競技できっと同じような“非公式の”世界記録はたくさんあるはずだ。そんなのおかしいよね」

残念ながら今年はオリンピックに参加できなかったが、4年後のリオを目指している。

天候が良くなく、予算も、満足のいく競技施設も少ないアイルランドを離れ、現在はアメリカで練習中だ。今年12月には結婚を控えており、様々な変化が次の4年間に彼に訪れることだろう。

■オスカー・ピストリウス(南アフリカ)

なにかと話題のそのピストリウスは、9月8日22時に陸上競技最後の開催種目であった男子400メートルで、2位以下を大きく引き離してぶっちぎりの1位となり、パラリンピックの最後を華々しく飾り、満場の観客を喜ばせた。

400mではさすがの走りを見せたオスカー・ピストリウス選手(南アフリカ)

1日に行われた100メートルの後のコメントで相当たたかれた(※)のか、200メートル以降の競技ではつとめて「いい子」になったピストリウスは、「このレースは僕にとって今シーズン最後の種目で、同時にこのロンドンパラリンピック2012の最後の陸上競技でもある。走る前はとても疲れていたし、ナーバスにだったけど、観客が僕を力づけてくれたから走りきれたんだ。すごいレースだったから、みんなにありがとうって言いたい。今週は、今月は、今シーズンは色々なチャレンジができた。コーチにもお礼を言いたい」

さらに、こう続ける。
「最後を金メダルで飾れてすごく誇らしい気分だ。この夏は夢がかなった。これ以上、なにを望んだらいいのかわからないくらいだ。ロンドンの夏、オリンピックとパラリンピックは僕の人生での最大で最高の時だったよ」と語った。そして、表彰式後には「400メートルで勝ててすごく嬉しい。これで僕が本当は400メートルの選手だって証明できたもんね」と生来の負けず嫌いを垣間見せた。

(※)関連記事→http://masports.jp/summer/athletics/2319

(取材・文/加々美美彩)