陸上 — 2023/4/29 土曜日 at 20:58:38

男子T13の福永が400mでアジア新、走幅跳で日本新記録を樹立!

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身長182センチの恵まれた体躯を活かして力強い走りを見せる福永=神戸総合運動公園ユニバー記念競技場(撮影/植原義晴)

「WPA公認第34回日本パラ陸上競技選手権大会」が29日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で開幕した。7月にパリで開催される世界選手権の日本代表選手選考を兼ねており、WPA(ワールドパラアスレティクス)が設定する参加標準記録、またJPA(日本パラ陸上競技連盟)が定める派遣標準記録を突破する最後のチャンスとなっている。

視覚障害(T13)の男子400mは、日本記録保持者の福永凌太(中京大クラブ)が2位の選手を大きく引き離し、48秒34のアジア新記録で優勝。「スピードがついてきたので、これまでと違って200mを2本走るイメージで臨んだ。新しいレース展開でベストが出せたのは良かった」と話した。また、福永は男子走幅跳でも5本目で6m90をマークし、こちらも自身が持つ日本記録を更新した。福永は両種目ともすでに世界選手権の派遣標準記録は突破しており、「出るからにはメダルを獲りにいく。400mでは来年のパラリンピック本番で世界記録を狙いたい」と力強く語った。

F46クラスの女子砲丸投はパリパラリンピックでの採用が決定している。投世界記録保持者である齋藤は、一躍金メダル候補に

上肢障害(F46)の女子砲丸投では、齋藤由希子(SMBC日興証券)が11m52をマークし、優勝した。昨年3月に女児を出産し、競技復帰してから今回で4大会目。現在は減少した体力や筋力を戻している段階ながら、順調に記録を伸ばしている。とはいえ、改善すべき点があるといい、「下半身のパワーがまだ戻り切っていない。うまく上半身につなげていけるよう強化が必要」と、言葉に力を込める。

この種目は東京2020パラリンピックでは実施されなかったが、パリ大会では採用される。世界記録保持者(12m47)である齋藤は、「東京パラではやり投げしかなくて、種目を変えて取り組んできたが結果を残せなかった。パリで採用されたのは率直に嬉しいし、東京パラに出られなかった分、より想いが強くなっている。ただ、過去の自分に勝たないとパリでの金メダルは厳しい状況にあるので、今は自分の記録更新を狙っていく」と話し、前を向いた。

大腿義足(T63)の男子100mは、22歳の新星・近藤元(摂南大)が13秒56で走り、この種目のアジア記録保持者である山本篤(新日本住設)を破って優勝した。近藤は、「篤さんが前半から行くのが分かっていたので、一生懸命腕を振った。いつもチャンピオンの篤さんに勝てて、素直に嬉しく思う」と笑顔を見せた。一方、山本は腰を痛めており、全力で走れたのは1週間ほど前だったといい、「現状ではタイムはどうしようもない。でも、近藤君は強くなってきているし、若いしやる気もあるのでこれからまだまだ伸びると思う」と、新しいライバルの力走を称えた。30日には走幅跳での直接対決が控える。近藤は、「幅でも篤さんに勝って1位になります」と心を燃やした。

視覚障害(T12)の男子走幅跳は、1本目から好調さを発揮していた石山大輝(順天堂大)が3回目の跳躍で7m11の大ジャンプを見せたが、追い風参考(+3.4)に。最後の6回目に再び、目標だった「7m」に届く7m07を跳び、自己ベストを更新した。「追い風参考だった7m11を、しっかり公認記録で出せるようにすることが次の課題」と振り返った。

脳原性まひ・車いす(T34)の女子400mは、19歳のホープ・小野寺萌恵(あすなろ屋羽場店)がアジア記録更新に相当する1分7秒10で制した。国際クラス分けが未確定のためアジア記録には公認されなかったが、確かな存在感を示していた。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)