陸上 — 2015/7/20 月曜日 at 11:25:25

進化する52歳・永尾が圧巻の走りで3冠達成! 日本パラ陸上競技選手権大会が閉幕

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T54クラスの100m、200m、400mの日本記録保持者・永尾嘉章が躍動=ヤンマースタジアム長居/撮影:吉村もと)
T54の100m、200m、400mの日本記録保持者・永尾嘉章が躍動=ヤンマースタジアム長居/撮影:吉村もと

「IPC公認 日本パラ陸上競技選手権大会」が7月18〜19日の2日間の日程で、大阪市のヤンマースタジアム長居(長居陸上競技場)で開催された。10月22日にカタール・ドーハで開幕する世界選手権の選考大会。台風11号の影響で湿度が高く、時おり強風が吹きつける不安定な気象条件だったが、2日間で9のアジア新記録、39の日本新記録が誕生した。

レジェンドが車いす短距離界をけん引

圧倒的な存在感を見せつけたのが、車いすレース短距離界の第一人者・永尾嘉章(T54/ANAORI A.C)だ。エントリーした100m、200m、400mの3種目すべてで優勝した。400mでは長距離を得意とする樋口政幸(バリストライド)との接戦を演じ、最後のストレート勝負で決着をつけた。200m予選では、自身が樹立していた日本記録を更新する25秒81で1位通過すると、決勝ではさらに0.1秒上回る、高いパフォーマンスを発揮。レースを見守る他の選手からも歓声が上がった。それでも、52歳のベテランは「コーナーで少しバタついた。それがなければもう少し(記録は)いったかな」と満足しない。

今シーズンは6月のスイス遠征中に、100mの日本記録を15年ぶりに、また400mの日本記録を11年ぶりに塗り替えた。好調の背景には、経験に基づいて緻密に練られた質を重視したトレーニングプランがある。また、レーサーのセッティングも変更。ハンドリムの直径を1センチ小さくし、スタート時のスピードを落とさずにトップギアにつなげる走りを模索した。フィジカルと道具の性能をマッチングさせ、20代、30代、40代よりも良い状態に仕上げてくるのは、ベテランのなせる技だ。

山本は走幅跳と200mでアジア新記録樹立
山本は走り幅跳びと200mでアジア新記録樹立

T54は世界的にも選手層が厚いクラス。「10月に世界選手権もあるし、その先にはリオもあるから、そこを考えるなら今のタイムで満足しているわけにはいかない」。車いす陸上界のパイオニアは、その飽くなき探求心で進化を続け、世界に切り込む。

山本篤がアジア新で2冠達成!

義足の鉄人・山本篤(T42/スズキ浜松AC)は、走幅跳と200mでアジア新記録を樹立。4月のロンドンマラソン兼2015IPCマラソン世界選手権で3位に入った視覚障害クラスの堀越信司(T12/NTT西日本)も1500mでアジア記録を更新する走りを見せた。女子走幅跳では、中西麻耶(大分県身障陸連)が5m24の大会新をマーク。また、2週間前に関東身体障害者陸上選手権の砲丸投げで世界記録を打ち立てた加藤由希子(F46/仙台大学)は記録更新はならずも、投てき3種目(円盤投げ、砲丸投げ、やり投げ)を制した。

男子4×100mリレー(T42-T47)では、JapanA(多川知希(AC・KITA)、佐藤圭太(中京大クラブ)、鈴木徹(プーマジャパン)、芦田創(早稲田大学))が44秒33の日本新記録を樹立した。昨年のアジアパラでは金メダルを獲得しているこの種目。このメンバーでリレーに臨んだ大会は今回が初めてだったが、鈴木は「思ったよりも感触が良かった。走力のあるメンバーなので、バトンパスを強化すれば43秒台も見えてくるとわかった」と手ごたえを口にした。

日本新記録を更新した男子4×100mR、JapanAチーム(左から多川、佐藤、鈴木、芦田)
日本記録更新! 男子4×100mリレーのJapanAチーム(左から多川、佐藤、鈴木、芦田)

(取材・文/荒木美晴、写真/吉村もと)